伝説になるかもしれない話   作:三郎丸

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今まで別々に居た奴等が
集合すると何かわくわくしますよね。

裏話なんですが、スレ民達の原作知識は個人差があります。主に単行本勢や本誌勢で分かれてます。また完全に追いきれてない人もいます。ちなみに最新情報は2021年11月初旬で止まってる。



12.境界線(挿絵有り)

【前回までのあらすじ】

なんと分家は夏油(幽霊)にスレの事をぶっちゃけると言う暴挙に出る。なんやかんやあった末、信用信頼がない口約束の同盟関係を締結することに相成った。そこから少し時が経った頃スレは遂に1000を迎え呪物化。ついでに1000間近に分家が爆弾発言を投げたせいでスレ民達が騒ぐ中、コテハン集会の時間がきたる…。

 

 

 

 

 

 

10/3(水)18:10 浅草橋 食べ処小鳥箱

 

 

 

 

夜間(よるま)で予約していた者ですが…」

「はい、夜間様ですね。お席は此方になります」

 

 

4人の男女が食べ処"小鳥箱"へ入っていく。勿論その4人とは本日集会予定のコテハン達だ。どうやら夜間と言う眼鏡を掛けた中老の人物が店を予約していたようで奥の個室へと案内される。店内は仕事帰りのサラリーマンや酒を飲みに来た人達で賑わっていた。

 

奥の部屋へ全員が入ると途端に彼等の纏う空気が変わる。彼等は何処か緊張しているのかそれとも現状の進展に沸いているのか何とも言い難い顔付きをしていた。その最中ポツリと4人中たった1人の女性が話し出す。

 

 

「スレ主さん仕事でまだ来れてないけど、自己紹介始めときますか?」

「あと30分ほどで来るらしいですが、その間無言と言うのも何ですから少しだけ自己紹介しておきましょう」

 

 

女性に賛同したのは中老の夜間だ。彼等の意見に残りの2人も賛同する。そこから何品か料理を注文し、お通しであるポテトサラダとドリンクがやってきたところで自己紹介タイムへ突入していく。ちなみに全員、ドリンクがノンアルコールである。居酒屋ではあるが真面目な話をしに来たので酒を誰も頼まなかった。

 

 

「じゃ、トップバッター行きます」

 

 

そう買って出たのは先程の女性。彼女の席にはトマトジュースが置かれている。

 

 

「コテハン龍こと東西水稀(とうざいみずき)。動物関係の仕事へ就いてます。名前は何でも結構!龍とか龍さんで呼んでもらっても大丈夫です。敬語も特に要らないのでフラットに行きましょ」

 

 

彼女こそクソスレ目撃から早々に術式が暴発し、一時的に龍人へ変化する等と意味不明な現象に合っていた龍だ。彼女の此処3日間は家の壁破壊を隠蔽するためにホームセンターへ行く事から始まり職場で何時角が生えないかビビりながら過ごすと言う日程である。まるで人間界に潜む人外のような不思議な生活を送っていた。

 

次に手を挙げたのは龍の隣に居た人物。彼の席には無難なオレンジジュースが置かれている。

 

 

「僕はコンビニ店員です。横にいるのは姉で僕が弟。本名は東西水渚(とうざいみずな)と言います。呼び方は自分も何でも良いですし同じく敬語無くて大丈夫です」

 

 

彼は本日虎へ変化すると言うとんでもねぇ術式が判明したり、高専へ出向いて窓に就任したり、虎杖と友人になったりと大忙しなコンビニ店員だ。高専から帰ってきた彼は姉を仕事場まで迎えに行き、一緒に浅草橋の待ち合わせ場所へと赴いた。どうやら姉にも虎杖と自分から友人になったとは話していないらしい。それだけ色々と想うところがあったのだろうか。

 

三番手はコンビニ店員の真向かいにいる中老の夜間だ。彼の席には龍同様トマトジュースが置かれている。コテハン内ではトマトジュースが人気らしい。

 

 

「私は夜間紅雀(よるまこうじゃく)と申します。コテハンは吸血鬼現状を纏めるおじさんで通ってますね。普段は大学教授として働いてます。呼び名は何でも構いません。敬語については各々自由にしてくれると助かります」

 

 

今まで表舞台に出てこなかった謎の存在吸血鬼現状を纏めるおじさん。彼の正体はなんと中老の大学教授と言うかなりの身分な人だった。周囲の3人が内心どよめく。吸血鬼の風貌は何処と無くかの有名なY談の方に似ているような気がする。しかし彼は立派な社会人をしている吸血鬼現状を纏めるおじさんなのでY談等一切しない。もしもそんなことをすれば教授として様々なものを失うことになるだろう。ちなみに彼は以前から患っていた胃潰瘍が治ったらしい。その事も知りたくてこの場へ訪れている。

 

吸血鬼の自己紹介が終わると3人の目線が4人目へ向かう。その4人目の席にはジャスミン茶が置かれていた。彼はカラオケ店で甘いものに飽きていたようだ。

 

 

「どうも、分家です。本名は五条(さとり)。何とでも呼んで構わない。敬語はそもそも俺がこの中で一番年下だし使わなくて結構。本日はよろしく。背後にスタンドが居るが、見えてないだろうから基本的に気にしなくて良い」

 

 

4人目は本日コンビニ店員以上に色々あった分家だ。彼はコンビニ店員の意味不明な術式を目撃した後、高専内で夏油(幽霊)と遭遇。そのまま憑き纏われ真希パンダらに投げ飛ばされる間ずっと煽られていた。そして高専から出ても憑いてきたのでカラオケ店で話し合いをし、一応同盟と言う形でスタンド使いになっている。また本来ならば今日の出費は大変痛いが夜中にスマブラをしていた親戚を説得(脅し)して遠征費用を貰ってきているので何とかなった中学三年生だ。

 

此処にいるメンバーは分家のスタンドの存在についてスレその2で話されているので、ある程度把握しているもののやはり動揺している。3人とも分家の背後を見るが特に何も見えないし何も感じない。やはり分家しか見えないのだろうか。普通ならそんな幽霊の存在を信じないと思うがスレ民やコテハンにとって分家は既に仲間。仲間の言ってることは信じる。それに分家の今までの行動からして嘘をつくメリットが何もない。よって彼等は分家の背後にほぼ確実と言って良い程夏油がいるだろうなと思っている。

 

 

スレ主を除いた全員の自己紹介が終わりかと思われたがまだ此処には1人存在する。そう、リモート参戦のフレンズだ。

 

テーブルの壁際に置かれた吸血鬼の最新鋭パソコンからリモートの画面が見える。辺りは暗闇に包まれランプと焚き火の灯りだけがフレンズを照らしていた。そして目には見えないが何かが暗闇の中に居ると感じ取れる。おそらくそれがフレンズの言う山じいと言う存在なのだろう。と言うか頻繁に画面内でポルターガイストが起こっている。それに何も言わずフレンズは現地で作ったであろうミネストローネを一口飲むと話し出した。

 

 

『あっあー、聞こえてるかな。ん?これがさっき言ってたリモートって奴だよ。遠くの人と顔を合わせて話せるんだ。あー、たぶんそんな感じのやつかもしれない』

 

 

フレンズは山じいと話しているらしいが傍らから見ればただのホラーである。何も知らない人が見ればフレンズは夜の野営中に1人で虚空に向かって話しているやべぇ奴だ。コテハン組はフレンズさんやっべーと思いつつフレンズさんはそう言う生き物なんだろうなと不思議と納得する。そしてコテハン組はフレンズのインパクトによって夏油の存在感へ意識が薄れた。

 

一方分家の背後に壁へ背を預けて傍観していた夏油はその様子にドン引きしていた。スレ内でそう言う存在がいるとは知っていたがそこまで信じていなかった為だ。いざガチのフレンズが登場したことによって動揺を隠せていない。でも分家以外には彼が見えないのでそのドン引き具合を知るものはいない。

 

 

『後でミネストローネをパスタにするから残しておいて…えーと、こんばんは。フレンズと言うコテハンの者です。本名は勅使河原晴彦(てしがはらはるひこ)って言います。でもフレンズの方が言いやすいと思うのでそっちでどうぞ。俺も敬語は特に大丈夫です。あと今のところ呪霊や人の気配がないみたいなので引き続きこのまま参加します』

 

 

以上、スレ主以外の濃い面子の自己紹介終了。本題に入るのは取り敢えずスレ主が到着してから始めるとして、各自注文した料理を摘まむことにした。もつ煮やまぐろブツ、ポテトサラダとモグモグと食べていく。吸血鬼お勧めの名は伊達ではなく本当に美味しいようだ。あの目が死んでいた分家に光が宿っている。

本日の店を指定した吸血鬼はたまにこの店へ行って酒を嗜んでいるとの事だ。確かにこの摘まみがあれば酒が進むだろうなと龍はトマトジュースを飲み進めた。

 

皆が摘まみを食べている最中、パソコンの画面上ではポルターガイストクッキングが行われており、冗談みたいな光景が広がっている。その光景に分家はこれが新たな呪霊との関り合いかと感心(?)を抱いていたり、龍虎姉弟はYouTubeの面白動画を眺めるように見守っていたりした。吸血鬼は久々の小鳥箱の料理に舌鼓を打っている。コテハン組はコンビニ店員と分家以外初対面だけどもめちゃくちゃ自由に過ごしていた。

 

 

『私は何を見ているんだ…』

 

 

ただ1人夏油だけが謎の疎外感を感じている。呪術師とも非術師とも言い難い第三の存在。それを夏油はどのように受け入れれば良いのか分からずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、スレ主は漸く食べ処"小鳥箱"へたどり着いていた。秋なのに少し汗をかいている。仕事のちょっとした残業で予定時刻から遅れてしまった事に焦り、走ってきたようだ。

 

そしてそのまま一息ついた所で小鳥箱の暖簾を潜る。直ぐに店員がやってきて待ち合わせをしていた予約席の場所を言えば「どうぞ此方です」と案内された。

 

スレ主は始めてきた居酒屋の店内を見渡しながら、これから出会うコテハン組に対して内心緊張で心臓がドクドクと脈打っている。スレ主こそが事の発端であり、この物語を始めた人物だ。故にどう言った表情で彼等に会えば良いのか未だ分からずにいた。

 

 

そんな冷や汗ダラダラのスレ主はふと席への道を案内されている道中、一人の女性とすれ違った。あっ綺麗な人だなとスレ主は一瞬思ったが数秒後慌ててその後ろ姿を凝視する。だってその姿にとても見覚えがあったからだ。スレ主はその人物を知っている。

 

その人物は白衣を身に纏い、黒茶色の髪で目元には疲れているのか隈が出来ていた。何より特徴的な右目下の泣きぼくろ。気怠げなその女性はスレ主の記憶が正しければ"家入硝子"その人である。

 

 

「お客様どうなされましたか?」

「…アッ、何でもないデス」

 

 

家入硝子との遭遇でスレ主は五秒ほどフリーズした。心の中はもうそれはそれは大パニックだ。何で店が奇跡的なマッチングしているのか意味が分からない。コテハン組に対しての緊張感でどうにかなりそうだったスレ主はこの遭遇によって何かが吹っ切れた。もしくは最後の止めを刺されたとも言う。

 

 

 

 

 

なるようになれ精神、心の平静を失ったスレ主は案内された座席へ意気揚々と向かう。一周回った状態のスレ主はクソデカボイスで元気よくコテハン組に挨拶をする。

 

 

「みんな~!!お待たせ!!!遅れてごめんね!!!!」

 

 

開かれた障子の先に広がっていたのはつまみと共にコテハン組がフレンズさん主催のリモートお料理教室講座で盛り上がっている光景だった。丁度家庭で役立つお料理雑学を披露している場面らしい。しかしスレ主が入ると共に場は一気に静まる。スレ主は完全にテンション間違えたとまた冷や汗を垂らした。第一印象、終わったかもしれない。

 

 

「スレ主さんですね、待ってましたよ」

 

 

静まり返った室内で龍がスレ主に話し掛ける。ささっどうぞとそのまま龍の隣へ座らせた。スレ主はごくりとぶり返した緊張で喉を鳴らしながらそっとコテハン組を見渡す。

 

現在此処にいるメンバーは呪術師見習いの中学生、教授、コンビニ店員な大学生、動物系の仕事をしている人、イカれた料理人、平安生まれの呪霊…あと幽霊がいる。そして転生者達の記憶を思い出させ、彼等を繋いだサラリーマンであるスレ主。今後、渋谷事変攻略主要メンバーであるもの達が出会った瞬間である。此処から彼等は死地へ赴き、命を懸けて家族や仲間が生きている自身の日常を守るべくして往く。

 

そう、命を懸けて…。

 

 

 

それはそうとスレ主が来たからにはコテハン組による作戦会議が始まる。先に顔合わせを終えていたコテハン組が各々スレ主に自己紹介をしていく。スレ主は各自の意外な経歴に驚きながら皆が優しそうなので一安心した。緊張したり安心したり忙しい奴だ。

 

 

「みんな自己紹介ありがとう。俺は田代将司(たしろしょうじ)、東京でサラリーマンをしている者だ。気軽にスレ主とかで呼んで。今回は集まってくれて本当にありがとう」

 

 

スレ主の言葉と共に姿勢を正すコテハン一向。分家以外には見えていないがその様子を幽霊夏油は興味深そうに眺めている。普通であれば"未来を知っている"や"転生した"などあり得ない事を信用し、此処まで人が動くのだろうか。夏油は彼等に少なからず心惹かれる何かを見出だし始めていた。

 

 

「改めて見るとスレ主に吸血鬼、コンビニ店員や龍さんと各々ヤバい術式持ってんな」

「そう言う分家さんもヤバい目持ってるじゃないすか。私も大概"龍"とか言うわけわからんもん持ってるから言えた義理ないけど」

 

 

分家の目にはコテハン組に刻まれた錚々たる術式が見えている。それぞれがもし呪術界隈に見付かれば大騒ぎになるだろう。きっと御三家や上層部が黙ってない。各陣営に引き入れようとするか、それとも危険分子として閉じ込めるか殺すかするかもしれないと分家は思った。コンビニ店員の術式が魂に刻まれていて却って良かった。肉体に刻まれていたら五条悟に見付かってしまい、そこから行動が制限されていたことだろう。分家は各自の術式について詳細を話そうとしたがスレ主から待ったがかかる。

 

 

「作戦会議の前に少し待って。さっき部屋の外で俺の見間違いじゃなければ高専関係者らしき人物を見掛けたんだ」

「高専関係者?どんな人だったんです…?まさか主要人物とかじゃないですよね。流石にそんな人が居れば僕ら困りますよ」

 

 

コンビニ店員がそう疑問に思ったことをスレ主に話す。スレ主はコンビニ店員の言葉に露骨な反応を示した。効果音を付けるならばギクリと言う音が相応しいだろうか。

 

 

「え、嘘ですよね。主要人物じゃないですよね?」

「あー、あはは」

「…スレ主、マジで誰と会ったんだ?」

 

 

コンビニ店員に続き分家もおいおいと言った風にスレ主を見る。そしてその様子を本日の店を選び予約した吸血鬼がやらかしてしまったのかと絶望顔でどんよりしていた。龍さんとフレンズは大変やなと何故か他人事を貫いている。更にそれらを俯瞰して幽霊夏油が面白そうに事の成り行きを見守っていた。個室はちょっとしたカオス。

 

 

「…家入硝子」

「マジ?」

「ウン、まじ」

 

 

めちゃくちゃ小声で呟くように発言された名前に個室内が一気にざわついた。全員の視線が何処と無く吸血鬼を貫く。吸血鬼は無言で首を振りながらわざとじゃないとアピールをしている。本当に吸血鬼はわざとではない。ただの奇跡的なブッキングをしただけだ。分家とスレ主はそのまま会話を続ける。

 

 

「マジなのか確認させにいく」

「うん?誰に?」

「この背後にいるスタンドに」

『え"』

 

 

役に立つのか謎だった幽霊夏油の活用方法。誰の目にも見えないと言うメリット。射程距離が短いがこの居酒屋程度なら行けるだろうと言う分家の試み。突然の指名に傍観を決め込んでいた夏油は地味に驚いていた。此処まで幽霊と言うこともあり誰にもそこまでのリアクションを取られなかったから尚更びっくり。

 

 

「分家さんの言ってたスタンドか!確かにスタンドなら恐らくごじょ…目隠しの人にも見えないっぽいもんね。分家さんそれ名案!」

「スレ主の許可が出たし、偵察行ってこい」

『私は承諾してないんだけど』

「別にスパイしに行ってこいって訳じゃない。単純に誰がいるのかの確認だ。俺達よりもあんたの方が高専の顔触れをよく知ってんだろ」

 

 

分家と夏油が話している傍ら龍とコンビニ店員は吸血鬼を励ましていた。パソコンの中ではフレンズが「誰にでも失敗あるよ」と山じいが仕出かした黒こげの焼き芋写真を見せ付けている。その背後ではフライパンが宙に浮く等のポルターガイストが発生していた。山じいが何らかの抗議をしているのだろう。

 

 

『仕方がないな』

「そうだ、仕方がないからさっさと行って確認してきてくれ」

『君、もっと私を労う気持ちが無いのか』

「ない」

『あっそう』

「分家さんとスタンドとの会話何かすげぇ~!」

『スタンドって言うの止めてくれる?』

 

 

スレ主はジョジョを見ていたのでスタンド(と言う名の幽霊)との会話に目をキラキラさせている。もちろん夏油の世代にもジョジョはあった。かつて少年だった夏油の青春の傍らにジョジョは確かに存在感を醸し出していたようだ。でもスタンド呼びは解せないらしい。

 

そんなことより偵察。分家とは一応同盟関係を結んだので渋々個室から出ていく。正直に言えば夏油が居ない間に、コテハン組が何か怪しい事でも話し合わないのか疑っている側面がある。そう言うこともあって渋っていた。だが、そうすると何時までも話が進まないので本当に仕方がなくこうして偵察をしに行っている。

 

 

3つ個室を挟んだ場所に彼等はいた。それはかつての学びを共にした仲間達。メンバーは後輩にあたる伊地知潔高、同級生の家入硝子、そして親友の五条悟。外でこうして飲み会をしている彼等の姿を見ることになるとは思わなかった。夏油が揃った事で構図的には高専同窓会が出来上がっている。でも夏油の姿は彼等には映らない。夏油は既に彼等の中で死んでいる。

 

 

「チーズに酒盗をのせてね、おっかけて酒。やってみろ」

「あ、美味しい。アンチョビで飲んでるみたい」

「えー、チーズに塩辛いものを載っけるその感覚僕わかんないな」

 

 

彼等は居酒屋らしくどうでも良い話で酒とつまみを嗜んでいた。当然のごとく五条は酒ではなくメロンソーダ。そう言えばカラオケ店で分家もメロンソーダ飲んでたなと夏油も釣られてどうでも良い事を考え込んだ。

 

 

『君達は変わらないね』

 

 

届かない独り言を呟く。彼等は彼等で変わっているものがあることは知っている。でもそう言う事ではない。芯の部分だ。数多の死を乗り越えて尚、彼等はこの世界を見捨てていない。夏油はこの世界を諦めた。今ある世界を放棄し、自分達(呪術師)が上手く生きれるような世界にしようと選択したのだ。

 

夏油はこれ以上居ても意味がないと彼等に背を向ける。偵察と言う役目は果たした。戻ってコテハン組の行く末を見守ろう。ふと夏油の口から言葉が漏れる。

 

 

『私が未だに此処へいる意味は何だろうね。硝子や悟ならなんと答えるかな』

「そんなの知らないよ」

 

 

五条の返事が返ってきて慌てて振り返る。視線は合わない。どうやら彼等の会話の流れで偶然噛み合ったらしい。

 

 

『悟、私は私の道へ往くよ』

 

 

彼等の道はとうに違えた。もう言葉を交わすことも同じ世界を見ることもない。それを残念に思うのは傲慢な考えだろうか。きっと夏油は彼等と…。いや、その言葉は言えない。夏油は憂いを纏いコテハン組の元へ去っていく。

 

 

「ねぇ硝子、伊地知」

「なんだ五条」

「なんですか?」

「…いや、気のせいだったかも」

 

 

 

 

 

 

 

帰還した夏油の報告によりコテハン組のいる個室はマジでどうしようと言う雰囲気いっぱいになっていた。

 

 

「まず当主にスレ主や吸血鬼が見られたら一発アウトだと思う」

「分家さんそれマジ?俺の掲示板ヤバいの?」

「うん、術式が一般のそれと違う」

「僕と姉はどうだろうか」

「龍さんとコンビニ店員は呪力が可笑しい」

「全員アウトじゃないですか…」

 

 

下手に個室から出られなくなり、五条悟が帰るまで動けない状態に陥った。更に言えば此処で術式発動の確認をしようものなら六眼センサーに引っ掛かる可能性がある。五条悟と言う存在が味方ならこれ以上ない程頼もしいのだろうが敵とも味方とも言えない今の状態だと頗る厄介だ。そしてその状況へ導いてしまった吸血鬼おじさんは懺悔の気持ちを吐いた。

 

 

「皆さん、此処の会計は私が責任持って奢ります。誠に申し訳ありませんでした」

「…ドンマイ!」

 

 

スレ主の苦し紛れの励ましがただただ心に響いて痛かった10月3日(水)午後19時半。未だに作戦会議は始まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、作戦会議出来ると良いね。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

「皆さんごきげんよう、

私は吸血鬼現状を纏めるおじさん」

「吸血鬼現状を纏めるおじさん!?」

「では今回の登場人物を纏めていこう!」

 

○今回の登場人物

 

・龍虎姉弟─本名:東西水稀(とうざいみずき)東西水渚(とうざいみずな)

龍とコンビニ店員は自宅が一緒なので基本的にセット。龍は元からネジ飛んでるしコンビニ店員は覚悟完了したので最早一般人卒業してる。

 

 

・吸血鬼現状を纏めるおじさん─本名:夜間紅雀(よるまこうじゃく)

長いので略して吸血鬼と呼ばれるようになる。おじさんとしての余裕なのかやべぇ光景を見ても普通に飯食ってた。この度お勧めした店に家入五条伊地知が居たのでめちゃくちゃ申し訳なくなる。

 

 

・フレンズ&山じい─本名:勅使河原晴彦(てしがはらはるひこ)

鯉ノ口渓谷からリモート参戦。野営ポルターガイストクッキングを披露した。分家や龍虎姉弟にウケた様子。夏油にドン引きされてるが、本人達はミネストローネパスタが上手く出来て喜んでる。

 

 

・分家─本名:五条(さとり)

ジャスミン茶より紅茶の方が好き。此処まで色々ありすぎて悟りを開いてる。コテハン組を見ても仏のように心穏やか。龍だけは術式の方の"龍"と混合してしまうため、さん付けしている。中学生だけど精神年齢は大人。

 

 

・夏油傑(幽霊の姿)

イカれた光景とイカれた面子にやべぇとこ来ちゃったと今更ながら自覚した。分家の方を見たら仏の顔をしていたのでこれがずっと続くのかと悟る。あり得ない事を本気で信じて動こうとしている人々を見て心惹かれる何かを見出だす。嘗ての仲間達が飲み会してる姿に想う所ありまくり。

 

 

・スレ主─田代将司(たしろしょうじ)

家入を見て『え(;゚Д゚)どひゃー(^o^)』となった人。その後コテハン組の面子を見て迷子の表情をした。感性が一番まとも説がある。

【挿絵表示】

※家入と遭遇シーン

 

 

・飲み会してる3人

仕事帰りに飲み会している。彼等の3個隣の個室でナニコレ珍百景が繰り広げられていることを知らない。知ったら高専へ連行不可避。

 

 

 

 




小鳥箱でのシーンは呪術廻戦小説第2弾の第3話『浅草橋哀歌』で出てきます。外伝ではありますが、実質原作場面に遭遇。以前から出していた"浅草橋の居酒屋"と言う単語で気付いた人が居たら超能力の類いなので自身を誇って下さい。

あと1話くらいで一章が終わります。

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