1匹狼の幻想郷帰還   作:回忌

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元凶というのは直ぐに見つかるもので、無名の丘に居た

春過ぎに鈴蘭が咲き誇る名所であるが、人は殆ど来ない

季節が春なのもあり、真ん中の桜が蕾を開いていた

 

その木の下で、彼女は背中を木に預けていた

 

舞は、その全く動かない死体のような彼女に近づく

 

 

「不思議です」

 

不意に、声がした

それは死体のような彼女から聞こえてきた

顔を上げ、空を見る

 

その顔は恨みが1つも無いような、悲しい顔だった

 

「娘が死んだのに、感情が揺るがない」

 

機械のように言う

怒りの色が無く、悲しみの色も無く

そんなこと、どうでもいいような色が彼女の声にあった

 

「あんなに愛していたのに、なにも、思えない」

 

その目から涙が流れることはない

心は軽く、まるで何にもなかったかのようだ、とも言う

 

「これが、博麗になるということ、だったのですね」

 

幻想郷の守護人になるということ

つまりそれは他人に心を寄せる事が殆ど出来なくなってしまうこと

博麗の大切な人が死んで、怨みで行動されても困る

 

故に、紫は靈夢の境界を操った

 

心の境界を

 

親しい人が死んでも

そして、敵になろうとも、責務を果たせる心に

 

これは恐らく、いつまでも博麗にされていく事だろう

 

全ては、幻想郷の為に

 

「貴方も、似ています」

 

靈夢が、言う

 

「私はただ、利用されている、貴方も、幻想郷の為に」

 

「分かってるわ、私が、幻想郷の為に」

 

私は彼の報復心を湧きたてるだけの妻

彼は恐らく、行動しないだろう

 

でも、直ぐに来る

 

私は、彼に愛されている

それは言葉が無くても分かることで、それが嬉しい

 

だからこそ、悲しいのだ

 

「さぁ」

 

彼女は桜から離れ、刀を抜く

その刃から見える模様は未だに怨みがあるかのように蠢いている

 

だが、彼女にそんな怨念は無い

 

彼女はからっぽなのだ

 

なんにもない、零、Nothing、ゼロ――

 

「終わらせましょう」

 

「行くぞ!」

 

 

彼女との出会いが何時だったか、正確に覚えている

太古の昔、まだ月人が地上で生活していた頃

いまやその文明は月に行った、その前の時代

 

 

僕が、まだ子供だった頃の時代

 

「お父さん、稽古終わりました」

 

「良し、今日はもう自由にしていいぞ」

 

鼻下に白い髭が生えた父が僕の頭を撫でる

それが無性に嬉しくて、目を瞑る

 

「さ、行ってらっしゃい、私は仕事があるからな」

 

「頑張って下さい、お父さん」

 

僕はそう言うと、外に出る

父から貰い受けた一振の刀を腰にたずさえ

 

この休日、自分がこんな思いをするとは、思わなかった

 

 

その日もいつもと同じように団子屋に向かう事にしていた

友達が、こうしてよってくるのもいつもの事

 

「や、斬鬼」

 

「あ、少年」

 

やってきたのは双剣を腰にたずさえた男の子

彼は僕の隣の家に居る子だ

僕の家は住宅街のひとつにあって、大きな家だ

彼の家はそこまでだけど、そこらの家よりは普通に大きい

 

「いつもの団子屋?」

 

「うん、稽古でお腹減ったから」

 

そう言って、僕は団子屋に歩いていく

途中の道は暇なので、僕は彼とたわいも無い会話をする

 

「最近、有名な女の子が居るらしいよ」

 

「誰?僕は知らないな」

 

「知らない筈は無いよ、舞姫って知らない?」

 

「舞姫…」

 

少し、記憶の探る

舞姫という単語に関しての記憶は奥底にあり、思い出すのは面倒だった

記憶にある限りでは舞のような戦闘をする女の子らしい

その踊りは誰であろうと魅了される為、舞姫と言われるらしい

 

でも、僕は情報を引き出したいからわざと知らないふりをした

 

「興味無いからよく覚えてないな、誰だっけ?」

 

「将来有望で、生まれて100年なのに求婚が絶えないらしいよ」

 

「顔が良いのか?」

 

「うん、美しくて、可愛くて、尚且つ性格も良い

 しかも成績優秀の戦闘技術も天才に届く」

 

なんという優良物件

それは求婚が耐えないはずだ

全てが完璧とか、本当に羨ましい

 

でも――

 

「僕には関係ない、お嫁さんなんて要らないもんね」

 

「斬鬼って、いつそうだよな」

 

少年は笑った

そうして、話し合っているといつもの団子屋が見えてきた

僕達はあの美味しい三色団子やみたらし団子を求めて、早歩きをする

 

「あ」

 

少年が何かに気付いた、それを指差す

僕は何だとその指先を辿る

 

「どうしたの――」

 

僕の視線の先には、女の子が居た

 

銀髪で、赤目で、清楚な、大人しいそうな、女の子

でも、そんな見た目の話なんてどうでも良かった

彼女は僕の倫理観をぶち壊す雰囲気を持っていた

 

心の中で何かが蠢いた

 

よく分からない、今まで感じたこともないナニか

 

いつの間にか僕は、彼女から目が離せなくなった

 

彼女は長椅子に座って、団子を食べていた

 

食べていた、ただそれだけなのに、美しい

その動作一つ一つが自然で、水のように緩やかで

 

気づけば、僕は彼女の近くに行き、声を掛けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで、蚊が泣いたかのような、小さな声だったけど

 

 

 

 

 

 

 

「あの、お隣、いいですか…?」

 

 

彼女は目を細くして、笑顔で言った

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