あ、そうそう少し話を追加したんで前の話に戻った方が分かり安いと思います
ー!原作キャラ&斬鬼死亡注意!ー
「…よくやったわ、紅白椛」
マヨヒガ
そこの主の部屋にて1人の妖怪が跪いていた
伝えたのは任務が完了した事のみ
それを端的に報告し、返事を待っていたのだ
ただ彼女は下を向いている為さの表情は見えなかった
紫は人払いをして、この場を設けた
その中には己の式も勿論居た
彼女を変に刺激したくない、というのが一番だ
己の父を自分の手で殺したとなると、その心はどす黒い物である筈
下手を打てばこの場で己が殺される確率が高い
殺されなくても腕や足の一本は覚悟しなければならない
恐らく呪いで、一生生えなくなる
「顔は上げなくて良いわ…心中察せるから」
「…」
彼女が少し揺れた
紫はそれを頷いたとして、話を続ける
「これで幻想郷は平和になった
人々も消滅することも無い
…本当によくやったわ、貴女は」
「…身に余る」
ぽつりと彼女は呟いた
それが最低限出る言葉だったのだろう
本来ならば言葉も放ちたくないハズ
この場に居るのも苦痛である筈なのだ
事実を知ってしまった、と思う
彼の口から真実は話されたと思う
話されてなくてもいつしか分かることであろう
彼のことについては娘がよく知っている
この目の前の、彼の愛した娘が
多分紫よりも彼についてよく知っている妖怪であるはず
知っている、ということに関しては舞の方がよく知っている筈だが
「八雲からの任務を達成した者には褒美が与えられる」
重苦しい空気を軽くするため、報酬の話に移る
先程から息が苦しくなるほど空気が酷かった
部屋が完全に締め切られているというのもあるが、目の前の人物の圧だ
彼女からの、紅白椛からの圧が
「何か、言ってみなさい、できる範囲なら許すわ」
「…私は犬走では無く、紅白と、言われる事に」
それは彼の遺言を無視するに近い物だった
彼は紅白の名前を忘れていいと、言っていた
スキマで見た時、彼はそう言っていたのだ
だが、彼女は紅白と呼ばれる様にしてくれと言った
それはつまり、彼の娘であり続けると言うこと
彼女は彼の跡継ぎであると証明すること
彼女はまた口を開いた
「それからもうひとつ…」
「何――」
何かを言った
それは、顔を上げ、言った
黒曜石の様な黒い瞳が、紫の紫の瞳を射抜く
紫は一瞬動けなくなった
「 私の為にその力を寄越しなさい 」
縁は、壁に押し付けられていた
胸の凄まじい痛みと共に
見ればそこには彼女の大剣が突き刺さっていた
一瞬で胸に大剣を刺し、壁に突き刺したのだ
「ぐ、ぎゃ、あああああああああああ!?!?」
「ふふふふ、その叫び声…聞きたかったァ…」
彼女はハイライトの消えた瞳で、口を歪ませながら笑う
その片手は腰にある、
紫は痛みに悶えながら椛を睨む
叫び声は外に聞こえない
なぜなら人払いに加え、防音の結界札も貼ってしまったからだ
「何を…して…!」
「私の望は一つ、皆の自由を手に入れる事」
彼女は笑いながら己のオモイを言う
「お父さんは不自由だったの
共存っていう鎖に縛り付けられて、自由が無かったの
途中でお前にあんな任務を押し付けられたのも、原因かも
お父さんは不自由だから、外に行ったんだ
こんな所にいてもいつか消滅するだけだもんね
外の世界でも自分を見せつければ生きていけるんだ
だって、お父さんはそれで外を生きてきたんでしょ?
忘れられかけた頃に現れ、記憶を刻む」
だったら、と彼女は言う
とびっきりの笑顔で紫に顔を向ける
子供が自分の最大のサプライズを打ち明けるように
最高の笑顔で
「だったら皆見せつければいいじゃない!
そうした手っ取り早く人間と共存出来て、お父さんの願いも叶う
ねぇ、いいと思わない?
妖怪の賢者さーん?」
彼女はニッコリと紫に笑いかける
紫は大剣の峰を掴みながら吐き捨てるように言う
「良い訳無いじゃ無いッ…彼の願いはそんなチンケな物じゃ…」
「本当、分かってないなー、ざーんねん」
本当に残念そうにそう言うと、手のひらを上に、雨を確認するような動作をする
彼女はとても歪んだ笑顔をしていた
「これ、何か分かる?分かるよねぇ?散々見てきたんだから」
「それは…!」
彼女の手のひらにある物
確かに、彼女なら持つことが出来る
何故なら
その手にあるのは…
それは波動のゆらめきだった
任務で殺された、白狼の扱う能力の物であるはずの物
それが椛の手のひらにある
この事実が示すのはひとつしか無かった
「彼の能力を、継いだの…!?」
「だいせいかーい、景品として貴女の能力も頂きまーす♡」
彼女はおもむろに紫の腹に手を突っ込んだ
簡単に肌を貫通し、体の中に異物が存在する
「ぐぬ、ぐぐぐ…!?ウググ!?」
「貴女は部下の方が強い弱っちい妖怪になっちゃうんだ、はははー」
椛はあらかた力をを取り込むと、腕を引き抜く
紫の口から血が吐き出される
彼女は大剣を抜いた
紫がぼろ雑巾の様に畳の上に倒れる
畳の上に血が広がり、どんどん染み込んでいく
「ふふふ、私待っててお父さん」
彼女は笑いながら扉を開け、外に出る
「 私が貴方の夢を叶えさせるから 」
○
それから、幻想郷は戦乱の時代になった
妖怪の山にある神社は制圧された
現紅白家当主によって神風部隊が再結成された
射命丸文、天魔、風見幽香、星熊勇儀、伊吹萃香
古明地こいし、古明地さとり、八意永琳
実力者が入隊していった
かつての神風部隊隊員も居た
何故文やさとり、永琳が入隊したのか定かでは無い
彼女達の大切な物が人質にされていたのか
もはや終わった事でもあるのだ
新生神風部隊は幻想郷を簡単に制圧していった
現幻想郷に不満がある者は簡単に寝返った
それは人間であっても変わらないことであった
死した紅白斬鬼を信奉する者は簡単に寝返った
それは全て内側に向けられた刃だった
能力の大半を奪われた八雲に出来ることはなかった
里の守護者やその不死の友人ですら降伏し部隊に入った
最後に残っていたのは魔法使いと博麗の巫女だけだった
彼女達は最後に戦った
被害は酷いものであった
決着は博麗巫女が裏切った事により集結した
彼女はただ利用されるだけの人生は嫌であったのである
邪魔者が居なくなった部隊は外に進行した
突然現れた妖怪に帝国は為す術なく圧倒された
ただでさえ戦争でカツカツのところだったのだ
滅亡、という所で支配権を譲るという選択肢が与えられた
家畜のように扱わず、共存するという選択肢が
もはや脅しのそれを政府は受け入れた
小さな島国を占領した部隊は世界を侵略した
いかなる兵器も、ものも、使えなかった
ただ、降伏あるのみ
皮肉なことに、共存の望は叶えられた
少なくとも、俺はそう嗤うだろう
こんなのが成功だと?と俺は言うだろう
それに娘は気付かない
彼女は俺の思いをまた違う解釈をしたから
世界は平和に、つかの間の平和を味わった
それから、射命丸と犬走の間に亀裂が走った
最初から仲が良くなかった彼女達は些細なことから喧嘩を始めた
だが、それはいつしか世界を巻き込む闘争となった
犬走は射命丸のある研究に激怒し、完全に彼女の元を離れた
文も椛とはそんな関係にはなりたくなかったのだ
だから彼女は亀裂を埋めるように研究を続けた
椛は部隊の半数を連れ、局地にて基地を作り上げた
秩序から外れた組織が、生まれた瞬間である
やがて椛は文の作戦により囚われの身となる
それを許さない部隊の者が彼女を助けることなる
そして、部隊の図らいにより2人は出会う
英雄の墓で対面する2人
実に500の時を超え、
そこで、彼女達は手を取り合うのか
これから、彼女達の娘息子が時代を進めるだろう
この争いの絶えない時代を
「すまんな、紫
お前は用済みだったかもしれない」
俺は酷い怪我を負った彼女の頭を膝に起きながら言う
包帯を身体中に巻いた彼女は薄く笑う
「良いの、これくらい、仕方の無い事だから」
確かに、仕方の無いことか
目の前で笑顔で友を殴り飛ばす娘を見る
だが、その娘の瞳に俺達の姿は写って居なかった
あるのは、没年と名前が書かれた墓だけであった