1匹狼の幻想郷帰還   作:回忌

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GOODEND デブリーフィング

父を殺した

その事実は深く心に根付いてしまった

トラウマが生まれ、ある時に父の幻影が現れる

 

『それで良かったのか?』

 

当主の部屋でデスクワークをしている時、床を踏む音がする

時たまとかそういう頻度では無い、頻繁だ、大量だ

父の姿が大量に現れるという訳では無い

 

様々な姿で

 

いつもの姿で

 

血塗れの身体と隻腕とえぐれた右目の姿で

 

椅子に座り、コップから何かを啜っている姿で

 

縁側に出ると柱にすがり、葉巻を吸っている姿で

 

それが幻覚と直ぐに分かる

なぜなら父はこの手で殺したから

左手の体を突き抜けた感覚はいつまでも味わう事になる

その指にこびり付いたヌメヌメとした血は拭い去ることは出来ない

 

ただ、決心した

私は彼の娘として生きていく

彼は犬走を名乗り、自由に生きていいと言った

 

だが、私には出来ない

 

私は道草を食っていい

その自由を使って、この悲劇を閉じる

このような親殺しはもう誰にもさせてはならない

 

こんな、空っぽになる気持ちなんて

 

八雲に報告した後何も聞かずここに来た

私は彼の能力を継ぎ、2つの能力持ちとなったのだ

ワープホールは慣れ親しんだ、懐かしい物となった

 

気持ちが整理しきれた訳じゃない

 

こうして狂ったように書類を始末していた

後ろに母は居らず、誰もこの部屋に居ない

 

ただ私の女中となった、あの人が時たま飲み物を置きに来てくれる

 

今日も、変わらぬ一日となるだろう

 

 

「なので、宴会を開いて欲しいんですよ」

 

「そんなに酷いの?」

 

「そうですよ!入ったのにも気付かないのですから!」

 

その頃博麗神社には1人の天狗かある事を要求していた

要求といえど、それは宴会をしてほしいと言うものである

一応友の1人である椛を放っておくことは出来ない

 

それに、彼の娘でもあるのだ

恩があるし、それを返さないわけにはいかない

 

その姿は見た事があるし

親子似るとは言うが、変な所が似たものだ

というか、悪い所が

 

「…いいわ、彼女の為にやってあげるわよ」

 

「ありがとうございます!いやー、これで彼女も立ち治れば…」

 

「…準備するわ、少しだけ」

 

霊夢はそう言うと、本殿の奥に入る

射命丸は何かと思ったが多分宴会の準備だと思い、それ程気にしなかった

それより、これを記事にして幻想郷中にばら撒かなければ

 

皆、宴会が好きだ

 

この幻想郷では、宴会が1番なのだ

 

 

「紫、出てきなさい」

 

「あら、何かしら」

 

「ひとつ聞きたいことがあるの」

 

「何?"答えられる範囲でなら"教えてあげるわ」

 

「簡単な話、どうして幻想郷は消滅していないのよ」

 

「どういうことかしら」

 

「博麗大結界はまだまだ現役、でも有り得ない事でしょ?」

 

「そうかもしれないわね」

 

「つまり、コレはそういう事でしょう?」

 

「そうとも言うわね」

 

「そう、失せなさい」

 

「酷いわね」

 

 

「ですから、私には仕事が」

 

「いいのよ、休憩くらい」

 

「終わっていません」

 

「椛…いい加減に…」

 

紅白家当主の部屋

そこには2人の影が言い争っていた

それは文と椛だ、言い争う、というより文がガンガン言っている

彼女はクマのついた目で文を見ながらポツポツと言葉を返す

とはいえオウム返しもあったりする

頭が回っていないのが明白である

机の上に外郎やプリンなどの菓子が置かれている

だが、一口も食われていない

 

いつ、食事をしたのか

「見て分かりますよ、その痩せた体…何も食べてないでしょう」

 

「だからなんだと、私は仕事を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        「いい加減にしろ!」

 

 

文の堪忍袋の緒が切れた

椛の肩を掴み、思い切り壁に叩きつける

彼女の肺から息が全て出る音がした

 

「あんたはそれでいいの?そんなみすぼらしい姿になってまで!」

 

文は見ていられなかった

記事にした後で、強制的に連れてくれば良いと思った

 

だが、この姿は

 

この姿で、強制的に連れて行っても

 

「斬鬼が見たらどう思う?あいつは絶対に怒るわ」

 

「…」

 

初めて、椛は文を視認した

少しの悲しみが混じった、目で

 

文は少し、たじろいだが気付かれ無いように振る舞う

 

なぜなら、その瞳には怒りしか無かったからだ

悲しみはそれを補助する陰陽に過ぎない

底なしの怒りが文を射抜いていたのだ

 

「私はあいつに頼まれた

 けどそれだけじゃない、友として言ってるだよ!」

 

「…貴女に何が分かる」

 

椛が口を開いた

それは無機質とも怒りとも捉えられる声色だった

目がゴロリ、と文の手を見る

 

「その手は血に汚れていない

 いつも左手が血に濡れている

 いつも父の声が聞こえる

 いつも、いつもいつも…」

 

口が最小限に動く

しかし声は、その声ははっきりと耳に入ってくる

 

「報復」

 

文はピクリと体を動かす

 

「いつも、八雲への報復を考えていた

 父を殺すという任務を与えた八雲への報復」

 

「報復は何も生まない、報復は報復を呼ぶ

 そこに待っているのは破滅だけ」

 

「…だって」

 

目の端から、透明の液体が零れる

椛は文の肩を掴んだ

 

「ぐす…そうでも…しないと、今にも消滅しそうなんです」

 

今の彼女を支えているのは父を奪われた憎しみ

それと父を殺したという深い悲しみだった

父を殺したのは自分で、それが悲しかった

矛盾した感情が心を支配し、渦巻く

 

妖怪は精神が基本だ

 

酷く精神を病んだ妖怪は自然消滅してしまうことがあるらしい

体が灰となり、崩れ落ちていくのだ

たとえ最強の妖怪とてそれは変わらない

 

斬鬼の娘であろうとも、それは同じだった

 

故にそれをわすれようとした

机に向き、大量の書類を処分していた

それでも父は忘れられず、逆に悪化している

 

「私は…わだじは…任務を貫いだ…それなのに…こんなことって…」

 

「…辛かったでしょう…貴女の気持ちは辛い物だって、分かるわ」

 

「…貴女に失う物があったとでも」

 

椛がそう問いかけると、彼女はあるわ、と言う

少し寂しそうな顔で

 

「私は昔、心を寄せていた男が居たの…知らないでしょう

 私は皆に内緒で付き合ってたの」

 

「…」

 

文に想い人が居た

それはあまり思いつかない事だった

このへらへらとした奴と付き合うなんて

 

「甘い幸せ程無くなるのが早い物は無いって実感したわ、あの時

 目の前で想い人が殺される、それを見た時ね」

 

「…」

 

それはある意味椛と同じだった

親と子、彼女と彼氏

死ぬ者と生き抜く者

 

「貴女は…もう少し前向きに生きた方が良いと思うわ」

 

「そうしたら、私は良いと思う」

 

「だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宴会、行きましょ?」

 

 

「つって宴会でだんまりなのも困るぜ」

 

斬鬼が座っていた場所に椛が座り、ちびちびと酒を飲んでいた

天狗が酒に強いとよく言われるが伝承のソレとは思えない姿である

 

時折焼き鳥に手を伸ばし、口に運ぶ

 

「…全く」

 

霊夢はため息をついた

全てから浮きあらゆる痛みを受け流す彼女には分からない

例え友であろうとも殺せる心を持つ彼女には分かるまい

 

だが、そんな彼女でも気配り位はできる

 

今、彼女対して最高な物を

 

「…ようやく来たわね」

 

全く、といぅため息は椛に向けてのものでは無かった

それは今まさしく階段を登っている人物であり

椛の聴覚はそれを既に掴み取っていた

 

その歩調

 

その鼓動

 

その顔

 

その体

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お父さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅白斬鬼は、にっと口角を上げる

 

 

 

 

 

「俺があんなので死ぬと思ったか?

   全く、冗談よしてくれよ、なぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

これにて、一匹狼の帰還は完全に終了した

かつての伝説は能力を失い大半を娘に継いだ

かの妖怪はもはや能力の無い、隠居隻眼天狗

 

しかし、その男はこれからも生き続けるだろう

 

彼にはまだ使命がある

 

娘の生き様を見るという、使命が

 

それが終わる時が、彼の終わりであろう

 

 

 

一匹狼の幻想郷帰還  ―END―




なんか蕁麻疹出てきたけど元気です
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