「そういう事があったのね」
「いい子さ、問題は起こさないだろう」
場所は斬鬼宅、斬鬼は紫にそう言った
あの封印はフランに溶け込んだ為、剥がれる事はない
固体では無く波動なので、貼るという概念は無いのだが…
「久しぶりに実体化してしまったよ、舞が」
「貴方も無茶をするものね」
人魂は一回転する
「あぁ…昨日は何故だか疲れたな…」
「当たり前じゃないかしら?」
「確かに…な」
戦うのはいつぶりだか、覚えていない
外の世界ではずっと歩いていたりで戦いは無かった
そうおもえば…
「そう思えば、リハビリに丁度良かったな」
「貴方も大概ね」
呆れた様子で紫はそう言った
斬鬼はコキりと首を回す
「あの後は何をしたのかしら?」
「何も?ご馳走してくれたり寝床を用意してくれたりな」
「派手な事は無かった、という事かしら」
「そうだな」
あの後は派手な事は無かった
寝床を用意してくれたり、とかそういう事だけだった
狂気はもう出てくる事は無いだろう…予想外が無ければ
「で、今日だったか…宴会は」
「そうよ、今日の夜」
「uh-huh、用意する物は…酒か」
「止めて頂戴」
紫はすかさずストップを入れた
好物である酒を止められた斬鬼は露骨に嫌そうな顔をする
「何故」
「誰も止められなくなるわ」
「お前さんがいるだろう」
「幽々子もいるのよ?食費をどうしてくれるのよ」
「…わかったわかった」
斬鬼は諦めた様だ
コイツが酒を飲むと頭痛がするのは何時だったろうか
紫は少し顬を抑えた
「大量の食事が一瞬にして消えたのは今でも覚えているわ…」
「ストッパーを外す方が悪い」
斬鬼は手を振るとさっと立ち上がる
「ここに居てもヒマなだけだ、何か面白い事は…」
「…あっそうですわ」
「うん?」
紫が何かを思いついたらしい
「久しぶりにマヨヒガに来てみれば如何?」
「どれだけ変わったか、見物だね」
「最近は藍が新しい式を作ったの」
「はーん…アイツが」
「それがねぇ…ちょっと重いのよ」
「どれくらい?」
「その式に触ったら全力の威嚇」
「…大体分かった」
藍はその子のどこに惹かれたのだろうか
斬鬼は舞にどのように惚れたか覚えている
恥ずかしい事に一目惚れと言う奴だった
「今から行けるのか?」
「特に用事もないですし、行けますわ」
紫が手をさっと振る
「スキマか」
空間が裂け、目のような形の切れ目か生成される
その中から大量の目がこちらを睨んでいた
「それじゃ、失礼して…」
斬鬼はその中に身を飛び込ませる
浮遊感に身を任せる
「あれか」
ポワンとスキマが開き、そこから光が差している
斬鬼はそこに飛び込んだ
〇
すぐさま見えてきた地面に着地する
顔を上げると、そこはマヨヒガだった
「昔から変わってないもんだな」
いつ此処が建てられたか知ったもんじゃないが、来た時から変わっていない
強いて言うなら花やらが追加されているくらいか
「誰だ」
「うん?」
振り返ると、重そうな服とナイトキャップを被った女がいた
いつだか昔の法師が着るような服を着ていた
それよりも気になるのが腰の辺りで揺れる九つの尻尾
つまり…九尾
「薄情だな、人の事をすぐに忘れるのか…お前は」
「私はお前等知らない、見たことも無いな」
はぁ、と斬鬼は溜息をついた
そして逆にニヤリと笑った
「何が可笑しい」
「いや?「天狗なんて偉いそうにしてる雑魚ですよーwww」って言ってボコボコにされたのは何処のドイツだったかなナ?」
「うぐっ!?」
「その後何回も仕返しをしようとするも敗北、主に札を剥がれそうになる」
「かハッ!?」
「思い出したか?」
「紅白…斬鬼いいぃい…!」
鬼の様な形相でこちらを睨む藍
何故だろうか、物凄く面白い
「おぉ、怖い怖い」
「殺してヤル!コロシテヤルゥ!」
「お…おい?人語が崩れてきてるぞ?」
「全く…放置してみればこれね」
スキマから紫が降り立つ
その姿を見て藍はハッとなり、佇まいの直した
「し、失礼しました…」
「貴方達はどうしてこんなに仲が悪いのかしら」
「妖怪の性だろ」
「コイツが悪い、私は悪くありません」
「はっ、人の事を直ぐ忘れる奴がよく言うよ」
「何か言ったか?」
「お?冷えてるかー?(煽)」
バチバチと火花は弾ける
紫が制止するがそれは止まらず、むしろ強くなっている
そして斬鬼の手が腰の刀に触れたその時…
「藍様!?何をなされているのですか!?」
「橙!?…これは…その」
小さな子供が此方はに駆け寄ってくる
腰辺りから2つの尻尾が生えている
「藍がな、俺が嫌いだから殺そうと…」
「おい!?斬鬼っ」
「藍様?」
「えーと…いや…あのー…」
じーっと橙と呼ばれた少女は藍を見る
その目は責める目以外、何物でもなかった
「ほら、認めろよ」
斬鬼は藍に催促する
しかし当の本人は体をよじったりするだけで何も言わない
「らーんーさーまー?」
「…すまん、斬鬼」
「それでよし」
斬鬼は縁側に腰を下ろした
そして橙と呼ばれた女の子に顔を向ける
「お前さんは誰だ?」
「私は八雲橙、藍様の式です!」
「式の式ねぇ…俺は紅白斬鬼、よろしく」
斬鬼は軽く手を振った
「最近幻想郷に来たんだ、知らない事も多い」
「大体は昔と変わっていませんわ」
「そうかね?紅魔館なんて見たこともなかったが」
紫は扇子を開き、口の前に当てる
そして妖艶な笑みを含んだ目で言う
「幻想郷は全てを受け入れる…それはそれは残酷なことですわ」
「へへ…残酷にしているのは誰の事だか」
エイプリルフールネタを作ろうと思ったら昨日だった