「博麗神社に行くか、日が暮れて来ている」
「そろそろ宴会の準備がされている頃でしょうね」
今回の宴会は夜にやるらしい
レミリアは吸血鬼だから博麗巫女が調整してたのだろうか
博麗神社は人里から少し離れた所にあったので騒音は気にしなくていいだろう
気にかかるのは…
「妖怪が沢山来るらしいんだが、それは?」
「霊夢が影響されない子だからと思うわよ」
「能力関係か?それとも博麗巫女としての威厳か?」
「能力ね、彼女は空を飛ぶ程度の能力、もしくは浮く程度の能力ね」
「成程、脅しとかが効かないと言う事か」
空を飛ぶ…いや、浮く程度の能力か
周りから浮くのは勿論どんな事にも影響されないのだろう
脅しとかそういうのもカテゴリに入っている
仲間の死も
…では、愛する人はどうなるのだろうか?
人に影響されない…その博麗霊夢という少女が恋をしたら
そしてソイツが、死亡したら、もしくは失踪したら
…自分の心を開いた唯一の相手が居なくなったら、きっと狂うだろう
「斬鬼?」
「あ?…あぁ…少し考え事をしていた」
「…そう」
この時、紫が黙ってスキマを開けてくれたことに感謝している
多分今この時の斬鬼の顔は────
「開けたわよ」
「ありがとよ、先に行かせてもらう」
斬鬼は言葉よりも先にスキマに飛び込む
その姿を見て、紫は少し哀れみを含めた目で見た
「貴方は囚われすぎている…その気持ちを…」
〇
「ふぅ、今日はこんなものかしら」
今代博麗巫女、博麗霊夢は地面を掃く手を止めた
境内には低い机や座布団が置かれている
今日は宴会の日だ
つい最近西行寺幽々子が起こした春の来ない異変解決祝い
…それと、最近幻想入りした紫の友人歓迎会
「あの紫に幽々子以外の友人がいるなんてねぇ」
「そうか?私はもう少しするもんだと思ったが」
縁側で煎餅を頬張る魔法少女から声が上がる
霊夢は箒を投げて、魔法少女の横に座る
「そうかしら?魔理沙の方が少ない気がするけど」
「何をー!?」
彼女は霧雨魔理沙
ハッキリ言うが腐れ縁だ
寺子屋で会った時、周りから浮いていた
その私に声を掛けた空気の読めない奴
…それがいつの間にか異変解決の仲間になっていた
「アンタも物好きよねぇ」
「へっ、よく言われるぜ」
魔理沙は軽く笑った
…その時、何かが上から境内に降りてきた
「…魔理沙」
「…あぁ」
問題なのは感じる妖力
「これは…幽々子以上…!?」
「ヤバいな…」
自然と鼓動が早くなっていく
相手にすれば、恐らく死ぬ
「修行、ちゃんとしとけば良かったわ」
「一泡吹かせてやるしかないな」
そうして大幣と八卦炉を構えていると、見えた
ソイツは境内の石畳に着地する
「成程、昔から変わっていないな」
ソイツは白の和服、黒の袴にそれを締める赤い帯を着ていた
黒い袴には業火のような模様が描かれている
肩と腰の左右に鎧が付いている
頭から天を指す銀の獣耳が生え、腰からは一際大きな銀の尻尾が生えている
様々な特徴があるが、1番気になるのが横にいる人魂
赤白い光を灯した冥界にいるのとは違う…
「誰よ、アンタ」
「ん?あぁ…そういうお前も誰だ?」
どうやら過去の余韻に浸っていたらしく、こちらに気が付かなかったようだ
「私は博麗霊夢」
「私は霧雨魔理沙…お前は?」
「紫から聞かなかったのか?俺は紅白斬鬼、隻眼天狗…とでも言っておこう」
霊夢と魔理沙は宴会の主役と認識し、警戒を解く
「ごめんなさいね、今まで感じた事の無い妖気を感じたものだから」
「…そうか、お前さんは」
斬鬼は何かに溜息をつくと指を地面に向ける
「所で宴会の場所は此処で良かったか?」
「そうだぜ、有名人さん」
「…文の新聞か」
斬鬼は情報源が何か直ぐにわかった
最近の話題は斬鬼一色らしい
「帰ってきた伝説の男ってな、お前はそんなに凄い奴なのか?」
「聞きたい事なら妖怪の山に行って聞いたらどうだ?」
「そうだなぁ…年齢はいくつだよ」
「紫より年上と言っておこう」
「…おじいさんか?」
「相違ないな、ハッハッハ」
魔理沙は少し驚いた
紫におばさんと言えば次の瞬間には意識が無くなる
だが、斬鬼はそういうのは気にしないようだ
まぁそういう発言は止めておこう
「妖怪ってのはどいつもお年寄りさ」
「そうか…そういやソイツは何なんだ?」
「さっきから気になっていたんだけど、その人魂」
霊夢と魔理沙は気になっていた
先程から斬鬼に寄り添っている様な身振りをする人魂
というか、何故彼は人魂なんて連れているのだろうか
「聞きたいか?」
「っ!」
彼の言葉に重みが含まれた
その一瞬、返事が出来なくなる
その様子を見た斬鬼は首を振った
「止めておこう、人にペラペラ喋るもんじゃない」
「…関係だけ聞いておくぜ」
「そうだな…妻、とだけ言おう」
「愛が重いんだな」
茶化すように魔理沙が言う
「愛した者を離したくないのは誰も同じ、妖怪は精神に重を置いているから尚更な」
斬鬼は笑いながらそう言った
「そろそろ宴会が始まるな」
様々な波動がこの神社に近づいてきている
今から幻想郷の宴会が始まる
「アンタ、主役なんだから最初に挨拶しなさいよ」
「言われずとも」
斬鬼は不敵に笑った