追記 誤字報告有難い
「…」
青白い人魂がまっすぐ舞に近づく
そしてそれは舞の体の中に入っていき
「半分、体を借りる」
斬鬼は舞の体を半分使い、半人半霊となり何処かに行った
「あ、行ってらっしゃいませー」
「行ってらっしゃーい」
妖夢と幽々子はそれを笑顔で送って…
「アイエエエ!?半人半霊!?半人半霊ナンデエエエ!?」
舞「コワイ!」
紫「ゴボボー!」
幽々子「作品評価シテェ!」
妖夢は絶叫した、当たり前である
「あらあら、妖夢ったら今更ね」
「え?ちょ…アイエエエ…」
「私、また何かしちゃいました?」
紫は諭すように言った
「ほら舞、説明してあげなさい」
舞がカラカラ口を抑えながら笑った
「んーそうですね…落ち着いて聞いてください」
妖夢は深呼吸を何回かする
「…いいですよ、何時でも」
「簡単に言えば体の半分を渡しているのですよ」
簡単な事だ、"半人半霊"なのだから
体の半分を渡せばいいだけだ
深い原理は無い、本当に簡単な事だ
「…それって」
「勿論全ての力が半減します」
「それでも勝てなかったのよねぇ…」
紫が遠い目で呟く
「あ、紫も?」
幽々子が気がついたように言う
紫が驚いた様子で質問する
「幽々子も?」
「そうなの、何が起こったのか分からなかったわ…」
なぜだか妖夢にもその気持ちは理解出来た
斬鬼のあの瞬足、全く見えなかったのだ
彼が余裕そうに葉巻を吸っているのを見て、油断していたのかもしれない
「まぁ、妖夢ちゃんはそんな悲観しなくていいわ」
「そんなお世辞なんて…」
「ホントよホント、「あいつは俺が構えたのが見えていた」ってね」
「それが何に…」
妖夢は諦めムードだ
そんな彼女に舞は一つの希望を与えた
妖夢が今求めている最高の提案だ
「彼が貴方を気に入ったの、稽古してくれるらしいわ」
「ホントですか!?」
「言ってねぇ!」
「ありがとうございます!何と言っていいか…!」
「…彼も可哀想ね」
何処かの隻眼天狗の叫び声が妖夢の礼にかき消される
彼も彼で回りくどいやり方をするものだ
「最初から言えばいいのに、ね?紫」
「ホントにそうだわ」
「不器用なところが可愛いでしょう?」
「…」
妖夢は彼女達についていけなかった
唯一思った事がある
紅白家…怖い…と、言うことだった
親がこれなら、娘もきっと…
〇
斬鬼が歩いているのは枯れた木が沢山生えた平原
全てが死に腐れ、迷った人魂がたまに来る場所
生ける者が来る場所では確実にない場所
ここは冥界の端
白玉楼なんて見えない場所
そんな場所を斬鬼は歩いていた
傍らには己の半身である半霊が付き従っていた
…そして、ようやくたどり着く
「よぉ、久しぶりだな」
斬鬼は挨拶をした、"彼"に向けて
半人の…旧友に向けて
「お久しぶりですな、斬鬼殿」
昔の大名が着る服を水色にした着物
顎周りには髪と同じ色の白い髭が生えて、威厳を醸し出している
1番特徴的なのが、斬鬼と同じく半霊を連れているところだ
…旧友、魂魄妖忌
「あの殺気をよく俺だけに当てることが出来たな」
「幽々子様とスキマ妖怪にはバレてしまったので」
「はっ、様付けは止めたらどうだ?」
「癖ですから」
妖忌は笑って言う
「どうだか」
斬鬼は嘲笑の声で言った
無言が辺りを支配する
「…さて」
妖忌が先に口を開いた
「私が此処に案内した理由、変わりますかな?」
「ああ、御託は結構だ」
「それでは」
殺気が両者から放たれていく
両者の心は真剣になり、手は刀に伸びる
「来い、全力で」
「貴方は全力でないでしょうに」
4つの斬撃が、交差する
「はぁっ!」
「くっ」
あれから数十分が立った
それまでの時間は刀の鍔迫り合いだった
斬鬼と妖忌の頬には切り傷があり、服は切れ後だらけだ
「あの時から腕を上げたな!」
「貴方は腕が落ちているぞ!」
こんなジョークを言い合う程には両者余裕である
「余裕そうだな!」
「貴方もな!」
この場に殺気は最早無かった
2人にはスポーツの様な一体感があった
オトコの友情、どれだけ離れようとも消えぬ友情
その気は辺りの枯れ木を切り飛ばし…
「そこまで」
パチン、という扇子の閉じる音で止まった
見れば2つの扇子を持った舞が立っていた
「舞」
「舞殿」
2人は刀を少し下ろし、視線を舞に向ける
「邪魔を」
「しないで頂けるか」
まるで2人が1人のように答える
「いいですわ、私を倒して頂ければ」
パチンと閉じた2つの扇子を開く
それには紅葉模様が描かれ、絶妙な美しさを生んでいた
彼女は妖艶な笑みを顔に作る
それは妖怪でさえ、見惚れる程の美しさだった
「実践なんて、いつぶりでしょう…あぁ、興奮してきました」
「…」
斬鬼は妖忌に目を向ける
妖忌は斬鬼に目を向けた
「…はぁ、分かった…降参だ」
「私達では貴女には勝てませんから…」
「よろしい」
舞はニッコリ笑った
斬鬼と妖忌は刀を鞘に戻す
「ったく、とんでも無い邪魔が入った」
「少し残念ですが…帰りますか」
そう言うと妖忌は背を向けて歩き出す
斬鬼はその背中に声を掛けた
「どこへ行くんだ?」
「また適当に旅に…」
「おじいちゃん!」
幼き声が聞こえた
その声の方向には
「妖夢…」
「おじいちゃん、また…置いていくの?」
涙が零れる
妖忌は珍しく動揺した
彼の目がお散歩をしている
「いや…それは…その…」
遂に妖忌は振り返る事は無かった
代わりに彼はこう言った
「私は…もうここに戻るつもりは無い」
「おじいちゃん」
「だがな、斬鬼がお前を鍛えてくれる」
「…最後に、お願いを聞いてもらって、いいですか」
「何かな」
妖夢は、最後のお願いを告げる
「…私は…幽々子様の従者に、相応しい…ですか?」
妖忌は鼻で笑った
それは決して嘲笑では無く
「なんだ、そんな事か。てっきりハグして欲しいのかと」
「えっと…」
「貴方もそう思うだろう?」
斬鬼の方を見て妖忌は言う
彼は鼻で笑った
「へっ…そうだな…俺の剣筋を見れたし、相応しいさ」
「その通り、お前は相応しいよ…私は嬉しい」
彼はそう言うと歩き始めた、妖夢とは反対の方向に
妖夢は叫ぶ
「絶対に帰ってきて下さい!幽々子様共々待っていますから!」
半人半霊化する時はターミネーターニューフェイトを参考にします
あの黒いネバネバしてそうな奴です、アレですアレ