「敵襲ー!敵襲ー!」
「弾倉は入れてあるか!」
「何時でも撃てる!」
「…何が起こっているんだ?」
星熊勇儀はパルシィに尋ねた
彼女は斬鬼と別れた後、多分彼を追ったのだろう
だがしかしそこに彼はいなかった為、ここに来た
「さぁ?地上の阿呆が飛んでるんじゃないの?」
「そりゃ…人目見ておきたいねぇ」
そう思い勇儀は上を見る
そこには悠々と飛んでいる白い何かが居た
「んんー?」
よく目を凝らす
それは懐かしい天狗装束に身を包んでいた、白狼の
だがそれは少し違っていた
肩と腰にある鎧、普通の白狼と違う耳と尻尾
燃え上がるような模様が描かれた袴
…何より模様より燃え上がる瞳と眼帯
それは昔恋焦がれた存在の情報と死ぬ程似ていた
「…なぁ、お前誰かと会わなかったか?」
「え?会ったわよ…変な名前の」
「なんという名前?」
「ジョニー・佐々木よ」
「…変な名前だな」
外国人なのか日本人なのかコレが分からない
まぁ、会えば分かるだろう
「あれを撃ち落とせ!」
「スティンガーを発射するぞ!」
河童は緑の筒を担ぎ、撃つ
それがソイツにに向かって飛んでゆく
やつは光る玉を発射する
「くそ!フレアか!」
ミサイルは明後日の方向へと飛んでゆく
その隙を図ってか、急にスピードを上げてゆく
「追っかけろ!」
「あの立ち振る舞いは…やっぱり斬鬼か?それとも舞か?」
それが勇儀の中で混ざり合う
もしかしたら勘違いで馬鹿を斬鬼に見立てているかもしれない
しかし、あれの放つ雰囲気は…
「まぁいいさ」
「まだ飲むの?」
「これじゃ足りないさ!」
そう言ってまた盃を傾ける
そこに迷いなど微塵も無かった
〇
対空砲火を潜り抜けたのち、斬鬼は着地した
ここは都からは離れている
河童達の追撃が無い限り安心だ
…ミサイルの射程圏内ってどれくらいだったか?
「やはり旧地獄、怨霊はいるよな」
凄まじい顔をした怨霊
あるものは怨嗟に顔を歪め、あるものは哀しさに顔を歪める
どいつもこいつもこうなった後に後悔したヤツらだ
「…お前らとは違う」
斬鬼は知らずのうちにそれを呟いていた
言葉は無意識のうちに放たれていた
何かの音が聞こえ、斬鬼は顔を上げる
そこには大きな船が浮いていた
帆船だ、白い帆がたなびいている…旗は無いようだ
艦底には誇りとも呼べるフジツボが全く付いていない
空を飛ぶ船など見た事は…あるな
「懐かしい雰囲気だ」
斬鬼は思い出した
この法力は、彼のものだ
「お前さんの力は衰えないのか」
"アイツ"は…もう死んでいる
面白い奴だった、人間で、妖怪と共存を望むなんて
面白い、奴だった
「…」
斬鬼はそれから目を逸らし、館の方向へと向かう
傍には人魂状態の舞が付いてきてくれている
だが、斬鬼は今更気づいたのだ
…肩に何か乗っている
「…誰だ、お前さん」
「…?私?」
「お前以外に誰がいる」
斬鬼はいつの間にか肩車をしていた少女に目を向ける
最初に見えたのはパルシィよりも深い緑の目
その姿はスカートは緑で、服は黄色
ボタンの所は宝石のような物がついている
特徴的なのは…目が浮遊していて、コードが彼女に入っている事
何より。その目が閉じている事
「何だ…さとり妖怪のくせ心が読めないのか…」
「読めないよ?みーんな考えてる事汚いもん」
「はん、違いねぇ…」
「でも…お兄さんも同じだよ」
「…何がだ」
斬鬼は少し威圧を込めて彼女を見る
しかし彼女はそんな事も気にせずに話を続ける
「貴方は皆キレイでいて欲しいのでしょ?」
「そんな…こと」
「貴方は無意識にそう考えているもの」
「…違う」
斬鬼は否定した
それに彼女は驚いたようだ
「ん…そう、違うの…でもね、私は思うの」
「…」
「何もかも後伸ばしにしちゃあダメ、分かるでしょ?」
「…言われずとも、だ」
斬鬼は肩に乗る少女に聞く
その気配が人一倍薄い彼女に対して
「俺は紅白斬鬼、お前は?」
「私?私は古明地こいし!こいしってよんで!」
「じゃあこいし、お前さんの家に連れて行ってくれ」
「うん!」
彼女はニッコリ笑うと斬鬼の手を引っ張る
それは女の子とは思えない力だったが、気にしてられない
ふと斬鬼は彼女に向けて言葉を発する
「…お前、どこかで会ったか?」
「…私は、あった事ないと思うけどなぁ」
「気配が似ているんだよ」
「お姉ちゃんかも?私、姉が居るの!」
「俺もな、妻がいるんだよ」
「本当?」
「あぁ、驚くなよ?」
人魂が斬鬼の半身を借り、実体化する
その様子を見て、最初は驚いていたものの直ぐに好奇心に変わった
あれだけ深い緑がキラキラするというのも、なんだが
「んんー、肩が重い…」
「うわー!凄い!おねえさんはなんて言うお名前?」
「私は紅白舞、こんにちはこいしちゃん」
「よろしく!舞お姉さん!」
「さて、案内を続けて貰おうか」
「私は屋敷から出るまで実体化しておきましょう」
「そうしよう、いちいちの手間が増えるからな」
斬鬼と舞はそう話し合う
こいしは鼻歌を歌いながら歩き続ける
それはすこしフラフラとしたようなおぼつかないものだった
だがしかし、決して迷っている訳では無かった
彼女の能力は、そういうものなのだから…