「これくらい、かな?」
犬走椛は自宅で支度をしていた
彼女は宴会に出る為の支度をしていたのだ
天狗主催の宴会では何回も出席している
大体が途中抜けをして1人酒を楽しんでいるのだけれど
椛にとって酒とは1人か大切な人と飲むのが一番だ
…決して多人数で飲むのが嫌いな訳では無いけど
気分が高揚すれば多人数で飲みたくなる
落ち込んでいれば1人酒をしたくなる
当たり前な事だった
「服装はいつもので…いいよね」
天狗達で開催するのと、幻想郷の者達が集う宴会では色々違うのだろうか
そうだったら…という不安を抱えながら準備する
刀を持ち込んでいる方も居るらしいので大剣を担ぐ
…まぁ、白狼如きが大剣持っていても、意味無いだろうけど
椛は玄関へ歩いた
「?はーい」
コンコンとノックがされる
椛は戸を開いた
目の前に斬鬼と舞が居た
「よ、準備は終わったか」
「こんな感じで大丈夫でしょうか?」
「問題ないわ、さ…行きましょう」
そう言って舞が先に飛ぶ
その顔は食べ物が大量に食べれる嬉しさで染まっていた
「あのブラックホールが…」
「…斬鬼さんも人の事言えない気がする」
椛はポツリと呟く
斬鬼には聞こえなかったようだ
こちらに顔を向けて口を開く
「ともかく行こう、遅れちゃ面倒だからな」
「そうですね、わかりました」
椛と斬鬼は博麗神社に向かった
日は支度の間にとっくに沈んでいる
代わりに博麗神社が賑やかに輝いていた
また、弾幕ごっこをしているようだった
〇
「とっ」
博麗神社の境内に着陸する
宴会をしていた一部の人がこちらを見て、食事に目を戻す
誰かは見ただけでわかったらしい
弾幕ごっこは既に終わった後だった
「うん、いつも通りだな」
「…天狗の宴会と変わりないですね」
酒や食べ物を食って、騒いで
それは何処も変わらないようだった
斬鬼は定位置の、幽々子や魔理沙達のいる強者揃いの席に向かう
そこのテーブルの角、そこがお気に入りだった
「あ、斬鬼さん」
「お!斬鬼じゃないか!」
異変解決に従事した(だろう)妖夢と魔理沙が顔を上げる
それに気づいて他の方も顔を上げた
藍やレミリア、その他諸々が居る
「あら、白狼の子も一緒なのね」
「いえ…休暇というか…その」
「何、休めと言っただけさ」
「いただきマース」
舞は座って食材にかぶりつく
挨拶も無しに行きやがった、こいつ
「お前の妻のこれは止まらんのか?」
藍が袖に手を通しながら問いかける
斬鬼はわざとらしく肩をすくめる
「さぁ?…無理だろ」
幽々子は既に沢山食べたのか扇子をパタパタとさせていた
その横で舞が狂った様に食べているのは中々シュールだ
…今回の食費もえげつない事になるだろうな
「さて…今回の主役はどこに…」
見渡すと、居た
こちらに歩み寄る銀髪と黒髪の女
それに追従するようにうさ耳の紫髪女もいる
…なんでJKの様な服装をしているんだ、あいつは
「こんにちは…紅白斬鬼?」
「久しぶりだな、八意永琳」
半分が赤、半分が青という奇抜な服装の銀髪女
彼女の名前は八意永琳、月の頭脳と呼ばれた者だ
「…んで、お前さんが」
「蓬莱山輝夜よ…久しぶりね、斬鬼」
男ならば即座に魅力される美貌を持つ黒髪女
彼女の名前は蓬莱山輝夜、月から追放された姫さん
輝夜姫という話にいる輝夜姫御本人だ
「…そいつは」
「私ですか?私は鈴仙・優曇華院・イナバ。うどんげと呼ばれています」
「長ったらしい」
斬鬼は思わず呟く
「ネーミングセンス皆無ね」
舞が食べながらポツリと呟いた
「あら?私のネーミングセンスが壊滅してるとでも?」
永琳が青筋を立てながら言う
舞は何処吹く風だ、全く気にしていない
食材は見る間に減っていく
「…旧友ですか?」
椛が問いかけた
斬鬼が頷く
「言うなれば腐れ縁だ」
「酷いわね」
「一緒に旅した仲じゃない」
「…旅?」
妖夢が頭を傾げる
「迷いの竹林にたどり着くまでさ」
「んー、面白そうね」
幽々子が笑顔で言った
それに賛同するように魔理沙が言う
頬が赤く染っていた
彼女の年齢は幾つだったのだろう
その横で霊夢は酔いつぶれていた
「ほーん…斬鬼の昔話ねぇ…」
「面白そうだ!酒のツマミとして聞かせてくれよ!」
「…」
斬鬼は軽く席に腰掛ける
そして徳利から杯に酒を入れた
「んんー、どうしようか」
「ほら、勿体ぶらずに言いなさ」
「黙れスキマ」
斬鬼の横に現れた紫が問答無用で殴られ戻される
そして彼は何事もなかったように話を続ける
「面白い事はないぞ?それでもか?」
「会った時からにしましょう?」
「…それもそうだな」
「斬鬼さんの昔話…ワクワクします!」
椛が楽しそうに言った
他の連中もそう思っているようだ
斬鬼の昔の事なんて、あまり知られていないから
「楽しいものでは無いがな…」
「初めて会った時は…あの時でしたっけ」
「あれだな、まだ地上にお前たちがいた頃だな」
斬鬼は目を瞑る
そして記憶を掘り返していく
彼女達と出会ったあの日の事を