「ほらそこ!休まない!働け!」
白狼大天狗の青年が指示を出す
ビームで削られた箇所を土で埋め、上から踏みしめる
そのしっかりとなった大地の上に櫓など作成し始める
「そこにそんなふうに置け!」
「こうですか?」
「違う!」
青年が叫ぶ
人間側から送られてきた者達の能力はまちまちだった
物を移動させたり、浮かせたり、力が強かったり
かなーりアレだが役に立たない訳では無い
「ここだ、ここ」
「あ、ありがとうございます先輩!」
「おい斬鬼」
「なんだ」
文が斬鬼に声を掛ける
「これでいいのか?」
「いいさ、人質みたいなものだ」
「…そう」
「お前は任務を優先したらどうだ?」
「休憩よ」
そう言うと文は飛び立っていく
ちらりと見えた顔は赤面していた
どうやら忘れていたらしい、可愛いヤツめ
「見る間に作られていくな」
動画が早送りされる様に建築されていく
どうやら時を操る能力者が居たようだった
斬鬼は銀の時計を持つそいつに声を掛ける
「よぉ、面白そうな能力を持っているな」
「こいつか?そうでもないな」
時計を投げた…と思った時には懐中時計は着地していた
今度はコインの様に指で時計を弄ぶ
「名前を聞いてやるよ、小僧」
「はん?俺の名前か…」
そいつは少し思案したような姿勢になる
偽名を使うか、本名か、迷っているのだ
そしてこう決断した
「仕方ない、本名を教えてやる…どうせ直ぐに会えなくなる」
そして名前を告げる
「俺は十六夜せん」
「十六夜せん…?いい名前だな」
「基地の奴らは月に逃げる計画を立てているんだ、だからな」
「…本当か?」
先程直ぐに会えなくなる、と言ったのはそういう事か
基地への攻撃が激しくなって、移住先を月にしたのか
…意味が分からない
「後で永琳に聞いてみるか」
「それがいい」
そういうと十六夜は仕事に戻った
さっさと終わらせて基地で寝たいとボヤいていた
…あいつも疲れているんだな
斬鬼はその場を離れる
辺りにコンコンと木槌の音が響いた
〇
「ようやく来たか」
「待たせたな」
行き場所は勿論大天狗の会議場
既に大天狗達が座して待っていた
「どうしたぁ?へまでも起こしたか?」
「戦闘も起こってないのに、隠れていたか」
「な!?そんな事は」
「もういい、黙れ」
反論しようとした鴉天狗の胸にクナイが突き刺さる
それは斬鬼が懐に隠し持っていた武器だった
「ぐは…っ!」
「死に損ないが」
ピャッと喉元を斬る
そいつは口からひゅーひゅー音を漏らす以外の事が出来なくなった
「ちょっと、遅延行為はダメだと言ったはずだ」
文が咎めるように言う
「お前は少し頭を冷やせ」
白狼の青年が言う
「ま、仕方ないな」
風が肩をすくめて言う
「ランボーな旦那様ですねぇ」
舞がくすくすと笑う
「では、会議を始める」
荘厳な、常に人に命令を下す声が降る
斬鬼はそいつの近くに座っていた
…名前は知らない
ただ、"神風部隊"を統率し、妖怪の山おも統率する者だ
我々は畏敬の念を込めて、彼を天魔と呼ぶ
「今回の会議だが、あの人間達だ」
「ウチの人間達は今まで通りで?」
青年が問いかける
「うむ、不定期に人攫いでいい…それだけで十分畏れは溜まる」
「そうか」
大天狗がポツリと零す
"神風部隊"の幹部が大半を占める大天狗
それ以外にのし上がったのは大体家柄だ
賛同するしか能が無い
「あの人間達だが、諜報班に調べさせた」
天魔が文に視線を向ける
彼女は淡々と事実を述べていく
「河童達の光学迷彩による潜入は成功、情報を入手しております」
「誰にやらせている?」
「暗号名は、"蛇"です」
「あいつか」
蛇のように這いずり回るアイツにはうってつけだ
暗号名には動物や、神の名前、気象も使われる
これは昔からある神風部隊の伝統だ
天魔が口を開く
「今の所の情報は」
斬鬼は先を促す
「人間達は月に移住する模様、技術面では我々を上回っています」
「それと、原爆という恐ろしい兵器を使うらしい」
「原爆とはなんだ?」
大天狗の1人が聞く
「爆弾さ、仮にあの基地が吹き飛ぶならここも更地になる」
「今の内に結界を貼れ、最高のだ」
面倒なものが消えるのは有難い
だが、面倒事は永遠に増え続けるのだが
「対爆発の結界は用意してある、後は貼るだけだ」
斬鬼は先に言った
「じゃあ、後は見守るだけですねー」
舞は気軽そうに言う
「それだけで済めば良いがな」
「天魔?どうかしたか?」
青年が天魔の顔を見る
少し難しい顔をしていた
「妖怪の矛先がこちらに来るかも、とな」
「有り得るな、知能が無いに等しい奴らだ」
怒りの矛先が向かう可能性もある
だが、天魔はそれを捨てたようだ
「その前に原爆で吹き飛ばされるだろうな」
「そうだな、まぁ警戒態勢は解くな」
風がそう諭す
「…いつ移住する?」
斬鬼は文に問う
文は数ミリも顔を崩さずに淡々と言う
「1日後」
「…成程、そういう事か」
何故数人の護衛だけを連れてここに来たのか分かった
これはある意味挑発だ
…原爆でどうせ吹き飛ぶなら、という
「舐められたものさ」
「全く同感だ」
風も同じ結論に達したらしい
「怪しいと思っていましたが、そういう事でしたか」
舞は納得した様子で言う
「…まぁいい、今日はこのくらいにしよう…解散」
既に日は暮れている
戦争は明日だ
「…夜は忙しくなるぞ」
斬鬼はため息を吐いてそう言った