「ここが私の家だ!」
天魔は胸を張って言う。
「相変わらず高い所だこと」
斬鬼は木組みの窓から外を見下ろす
所々雲で隠れているが大体幻想郷の全体が見える
ここは天魔の家だが、1体1で話す場所もある
「それにしても何も変わってないな」
斬鬼は窓から離れると室内を見渡す
室内は天魔らしい豪華な和風だ。
襖には天狗(長い鼻)が描かれている。
箪笥が2個にその横にクローゼット、箪笥の上にあるものがあった
天魔が使っていた槍と刀である
「お前さん今使っているのかこれ?」
斬鬼は刀を手に取ると刃を見る。
刀特有の波紋に光を反射する刃、だからこそ
斬鬼は思った、使われた痕跡が無い
というか刀自体に埃が被っている
だが、槍の方は埃は一切無い
天魔の槍らしく、凝った装飾がされているのが分かる
「あー天狗達を鍛え直した時しかなー」
「あ…」
椛の目に若干涙が溜まっていく
「鍛え直したって…文、まさか」
「そのとおりよ、斬鬼」
ペチンと手を額に当てる。
天魔は気が向いた時に鍛え直しという名の組手を行う。
それはもしかしたら明日かもしれないし、数百年も後かもしれない。
だが、ひとつ言えるのが彼女の匙加減ということ。
斬鬼は彼女の鍛え直しを見たが、酷かった。
相手が妖怪ということもあり、手加減はあんまりされていないのだ。
腕だけなら運がいい。運が悪いと右上半身が
いつの間にか消えている、なんて事もある。
自分がまだ山にいた頃に「友人だろ?」と天魔に誘われた
故にやってみたのだが…同士が爆散するのは良くない
…見ていて非常に目覚めが悪くなる。
一応これも山から出た理由のひとつでもあるが、
根本的な理由も…
「まぁこれからもするから!たのしm」
「ダメよ」
「嫌です」
「この家の中で、じっとしていてくれ」
「アーンヒドイ」
手を「イェーイェ」と振りかざしながら言っている
天魔に対して批判の弾丸が3発ぶち込まれる
斬鬼は溜息をつくと
一応声をかける
「分かった…分かった…そのうち山に何かでかいものがドーンと来るさ」
「そんな訳無いでしょう…斬鬼」
若干オーバーリアクションに手を上げる斬鬼に対して
文が呆れた様に言う。
…本当にでかい物が来るなんてつゆ知らず。
「んん!…取り敢えず斬鬼よ!」
「なんだ」
「お前の家はある!」
「包囲されているみたいに言うな」
「だから帰れ!」
「何故ここに来させた」
「会話がしたかったから!」
「じゃあ広場でいいじゃん」
「恥ずかしい!」
「頬を赤らめるな気持ち悪い」
「何だって?表出ろコラ」
「文さん」
「何?」
「帰っていいですか?」
「良いと思うわよ」
「では」
椛はそういうと、扉をガチャンと開けて飛んでいってしまった。
こんなマシンガントークを聞いていればそりゃ逃げ出したくもなる。
が、2人は椛が出た事なんて気づかなかった
「あ?外出たら落ちるだろ」
「浮けばいいだろ!」
「外で何するんだよ」
「戦いだよ!」
「景色が酷くなるから却下で」
「なーんーでー!」
「駄々を捏ねるな」
斬鬼の言葉に反するかのようにジタバタと
床を跳ね回る天魔。
…お前魚じゃ無いのか?
「じゃ、俺は帰るから」
「私ももう夜なので帰りますね」
斬鬼と文はそういうと小走りで玄関へ向かった
久しぶりに会話ができたと思えばあれだ
最後の会話から何一つ変わっていない。
そう思いながら斬鬼は自宅へと飛んでいった
文は新聞の内容を考えるために自宅へ。
「あれ?斬鬼は?文は?」
○
私は悩んでいた。
何故かというと今日から山に帰ってきた天魔様の友人だ
最初彼と会った時は何処の部隊か聞いてみてあたかも自分は
下っ端で私よりも新人ですよーと思わせていた。
あの時文様の一方的な待ち合わせが少しでも早かったら
彼は普通に山に戻ってきていたかもしれない。
もし普通に帰って来れば天魔の威厳は保たれていた
自分の仕事を放棄するまでに仲の良いのだろうか。
彼についてはわからない事だらけだ。
わかっていることの大半が伝承だけだからなのだ
私は天魔の側近として見た資料を思い出した
*紅白斬鬼の今まで
かつて天狗の里が作られた時に紅白家は生まれた。
彼ら紅白は己の里を外敵から守るために戦った。
そしてそこから先代が行方をくらまして紅白斬鬼が
その代の当主となりある部隊に入った
“神風部隊“
この部隊には様々な部分で優秀なものだけが入ることのできる部隊。
ここでは身分など関係なく単純な強さで偉さが決まる
強ければ強い程カリスマ性が強くなるからというもの。
ところがある時住処を探していた鬼達が山に宣戦布告。
天狗達は総力を用いて対抗したが力には勝つ事ができずに敗北
部隊は60人のエリートが勢揃いだったのに鬼の怪力によって壊滅。
生き残りは紅白斬鬼の他、6名のみとなった。
リーダー格が戦死した神風部隊はその後解散された。
この後斬鬼は「探さないでください」と置き手紙を残した後行方不明。
天魔率いる…どちらかというと強い奴と戦いたいという鬼の我儘により
捜索隊が結成されたが結局見つからず。
斬鬼が帰ってきたのは鬼が地底に行った時だった
―――ちなみに斬鬼は鬼が来る前から妻を侍らしていた
1人の娘も居たという―――
それから数百年後、とある任務中に斬鬼の妻殉職。
斬鬼は生き残る術を娘に教えた後行方不明
ここで伝承は止まるがこれからも続いていくのだろう
それにしてもあの伝説は伴侶がいた上に娘までもがいたらしい
考えられなかった、どうみても伴侶か居るようには見えなかったから
私は…犬走椛は彼に何があったか考えながら眠りについたのだった