「さて、お前は木陰で指を咥えて見ているんだな」
「…嫌ですね、妖怪程度にこんな」
「足引っ張んなよ?」
「そちらこそ」
2人は刀を構え直す
妖怪は既に2人を囲っていた
だが、この程度の障害…何の問題もない
刀の刃が少し鞘から抜けた瞬間、首がごとりと落ちる
「俺が早かったな」
「いえ、私が0.1秒早かったです」
「負けず嫌いが」
「褒めて頂き恐縮」
「嘘こけ」
斬鬼は溜息をつく
依姫はさらに溜息をついた
「援軍が妖怪とは…」
「不満か?」
「いえ、どうせ師匠からのお願いでしょう?」
師匠、つまり永琳だ
確かにあの後「赤い光を見たら駆けつけるように」と言われた
まぁ救難信号だろうと思って神風部隊の幹部で来てやった
「借りを作ったのはどっちかね?」
「貴方では?」
「お前だろ」
「口減らず」
「帰ってきてるぜ、その言葉」
そんな合間にも妖怪を斬る、斬る、斬る…
2人にとってもはや妖怪は空気のようになっていた
「いいコンビですね」
「悪いが、妻がいるんでな…多人数は勘弁だ」
「私が言っているのはコンビネーションです、馬鹿ですか?」
「言ってないで目の前に集中」
また、刀を振るう
〇
「オラオラァっ!」
白狼の青年は双剣を振るう
その双剣は既に血塗れだった
切っ先が釣り針のようになったそれを妖怪の頭に突き刺し、飛ばす
「はっ」
それを十六夜がナイフで滅多刺しにする
「いい腕持ってるな、お前」
「お前こそ、いい戦法だ」
お互いを評価しながら、血の池を作る
彼らの足場に血のない場所など存在しない
それはどんどんと広がっていく
「居なくなるのが残念だ」
「本当に同感だ」
彼らは本心を言い合う
それは男の友情というものだった
男以外には分からないもの
それは秘密を隠すには都合のいいものだった
「お前、彼女居るのか?」
「黙っとけ」
即座に返事を返す彼に青年は嗤う
「はん、俺もだ」
「お前とは気が合いそうだ」
「居なくなるくせに」
「それもそうだった」
ジョークを言う程、仲は深まってくる
戦いの中で友情はさらに強くなる
〇
「うおおおおおあああああ!」
「おーおー突っ込むねぇ」
鈴仙はmp5を乱射しながら戦場に突撃する
時たま来る妖怪を天月は槍で突く
「ほっ!」
胸の辺りを突き立て、別の所に投げる
投げられた妖怪は味方の妖怪にぶつかった後消える
「せいっ、はっ、ほっ」
声に合わせて突き、薙ぎ払う
それに合わせ無双ゲーのように妖怪が蹴散らされる
「あ"ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
「狂っちったか」
その目は更に赤みを帯びる
それに合わせ、彼女は奇声の様な声を上げる
天月は流石に見かねて背中辺りを槍で叩く
「戻ってこーい」
「…いてっ!?」
戻ってきたようだ、目の赤色が薄くなる
「何をする!?」
「戻してやったんだ、感謝して欲しいね」
「…行くぞ!」
「礼もなしか」
鈴仙はmp5をリロードする
そして盾を持ち直しまた戦場に身を投じる
〇
「ドゥララララララ!」
「楽しそうですねぇ」
両手の扇子で妖怪を切り裂きながら舞は言う
横には弾幕で妖怪をすり潰す霧雨が居る
もといクソデカ轟音レーザー銃をブッパ娘である
レーザーがひゅんひゅんと動く
いつの間にかそれを装着したらしい
「ははっー!弾幕はパワーだぜ!」
「計画もちゃんとしましょうね?」
「パワーだ!パワーさえありゃ計画は要らん!」
「駄目みたいですねぇ…」
溜息をつくと扇子を妖怪の頭に突き刺す
特注のそれはどんな扇子よりも高級だ
それで戦闘にも使えるスグレモノ
ただし妖怪に限る
「あんたも力に任せて殺ってるだけのようだがぁー!?」
「こう見えて計算してますよ?ほら」
舞の攻撃した妖怪は皆塵と消えていく
しかし霧雨の方は当たりどころが悪かった妖怪は死んでいない
舞は的確に、霧雨は力任せだ
「頭悪そうですね」
「何をー!こう見えても足し算引き算は出来るぞ!?」
「掛け算は出来ないんですか?」
「え?何それ美味しいの?」
「ええ、結構いけるらしいですよ?」
舞が茶化すように言う
霧雨は豪快に笑う
「はははっ!そりゃ食ってみたいな!」
「HAHAHA、ワタシモソウオモイマスヨー」
全く笑っていない顔をしながら舞は笑う
その間にもミニガンの雄叫びは止まらない
「それうるさいですねー、妖怪共がどんどん寄ってきます」
「これがいいんだろう?はははっー!」
「私達に1番ヘイト向いているんですよねぇ…」
そう言っていた瞬間だった
『ロケット、準備完了…総員退却せよ』
「よっしゃ!ここからだ!」
霧雨は楽しそうに笑う
「そちらは」
依姫や魂魄を背負った十六夜が近づいてくる
「なんとか、依姫は先に行け」
「貴方達も行くのです」
「もう無理だ、魂魄がこれだと俺も行けない」
十六夜は首を振る
「…足止めを、合図したら来てください」
「依姫様、お先に」
鈴仙は銃を持ち直す
そんな彼女の腕を引く
「貴方も来るの」
「え?」
その頃には鈴仙の意識は無かった
「あっちで逢おう」
十六夜はそう言うと魂魄を木陰に隠し、ナイフを構える
依姫は頷くと鈴仙を抱え、消える
「殿か、いいぜ…やってやるよ」
霧雨はミニガンのドラムマガジンを交換する
しかし、その必要は無かった
後ろから何かが飛び出す派手な音がしたからだ
「な!」
思わず霧雨は振り返る
見てみればいくつかのロケットが発射されている
「どういう…ことだ?」
魂魄は呻き声を上げる
十六夜はその魂魄を抱える
斬鬼と十六夜、神風部隊の幹部は即座に分かった
「くそ!全員妖怪の山に引け!」
天月か叫ぶ
人間組を妖怪組が担ぐ
「何を…!」
「逃げるぞ!奴らは核を落とす!」
斬鬼は霧雨を担ぐ
「な…聞いてないぜ!」
驚いた表情で霧雨は言う
「そんな事より!早く逃げますよ!」
舞は魂魄を担ぐ
「やれやれ、疲れるね」
「これだからお偉いさんは嫌いだ」
十六夜は青年に担がれる
そして、彼らは妖怪の山へ飛んだ
「…!あれか」
ロケットから光るものが落とされる
見てみれば"Fat Man"の刻印が刻まれている
「急げ!死ぬぞ!」
着地した瞬間天魔が手を斬鬼に差し伸べる
神風部隊、幹部全員が円になる
「結界を強化する!」
瞬間全員が手を同じスピードで動かす
陣が生まれ、光の柱が立つ
「…すげえ」
十六夜は思わず呟いていた
『はっ!』
全員が右手を地面に打ち付ける
光が妖怪の山を覆う
それと同等の光が、基地から見えた
間もなくして来る波動
結界の内側に無かった哀れな生き物と地形を吹き飛ばす
「…ぐ」
今までに感じたことの無い瞬間の衝撃
それは全てを破壊する力だった
「こりゃ…本当に人間が作ったのか?」
「恐らく、やはり人間は恐ろしい」
天魔は頷いた
そして気が長くなるくらいの時間、結界を貼る
そして、衝撃は消えた
「…終わったか?」
「一応このまま貼っておこう、病原菌が媒介する可能性もある」
まさにこの時放射線が大地に根を貼っていた
この時の判断は間違っていなかったのだ
「終わった…か」