竹林が見えてきた
斬鬼はその中に入っていく
ふと、背後に気配を感じた
「…誰だ」
返ってくる返事は無い
己の声は竹林に反響していく
文を早く搬送したいので無視しよう
ここで変に足止めを食らうと面倒だ
「…が…ググ…」
「その様子じゃまだ喋れないな」
最初の頃よりかは喋れるだろう
ただまぁ口パクの方が分かりやすい
「あのさぁ…」
斬鬼は立ち止まり、顔を後ろに向ける
先程からこそばゆい感覚だ
「そうやってちょこちょこされるのは今嫌いなんだよ…な!」
「うひゃあ!?」
刀を思い切り振る
それは背後の竹林を根こそぎ切り裂いた
その残骸からひょっこりと1人が顔を出す
それは鈴仙の様な奴だった
服装は違うし、耳もヨレヨレじゃないけれど…
「誰だ、返答次第で…」
「待った!敵じゃない!」
そいつは慌てて手を挙げる
「…俺は永遠亭に行く、邪魔はするなよ」
「そう…行き方は知ってるかい?」
「この先に進めば永遠亭さ」
「分かってるみたいだね…私の仕事が無いや」
そいつは手をふらふらと振るとどこかに行った
斬鬼は変な奴だったなと思いながら進んでいく
しばらくすると屋敷が見えてきた
その形は永遠亭以外の何物でもないだろう
斬鬼は躊躇わずに入る
鈴仙は居なかった
波動を見るに薬品を検査しているのだろうか
斬鬼は永琳の部屋に入った
彼女は机の上でデスクワークをしていた
「よう、永琳」
斬鬼が声をかけると彼女は顔だけこちらに向けた
その視線は斬鬼を見た後文に注がれる
「あら斬鬼…患者ね」
「治せるか?」
「見て見なければなんとも…横にしてあげて」
斬鬼は寝台の上に文を置く
若干瞳に赤みが戻ってきている様だ
「何があったのかしら」
永琳は機器を用意しながら聞く
「こっちの事情さ、気にすんな」
「こんな事になるなんてよっぽどね」
「統治者の悩みさ、これは」
斬鬼はそう言うと近くの椅子に腰掛けた
永琳は採血する
「帰らないのかしら?」
「治せるか聞くだけだ、治せないなら楽にしてやらなければ」
斬鬼は柄に手を添えた
文の瞳は斬鬼の姿を写すだけだ
そこに怒りや悲しみは見えなかった
「そ、血液で審査してみるわ…少し待ってなさい」
永琳は隣の部屋に行った
斬鬼は文の顔を覗き込む
「へっ、お前さんも腕が落ちたな」
文が睨むような顔をする
「もう目が見えるか、もう少しで話せるようになるかもな」
斬鬼は体の位置を戻す
そして軽く背伸びをした
「はは、ようやくだな…老害を殺す口実が出来たもんだ」
文も黒い笑みを浮かべている
斬鬼や天月、舞に文が望んでいた事だ
あいつらが居なくなれば今後は楽になる
「はい、検査結果」
永琳がドアを開け、こちらに紙を渡す
それには術で衰弱している事だけが書かれていた
「栄養剤を投与して安静にすれば治るわ」
「大人しくしとけよ」
斬鬼はそういうか、彼女の瞳が大人しくしてない
まるで何か言いたいみたいだ
「ヴらぎ…の…あ…せ…ねん…」
「何言ってんだ…後でな」
斬鬼立ち上がるとそのまま出口へ行く
彼女の呻き声が更に大きくなった気がする
「ファモノ…」
「苦しいのは分かってる…それに裏切り者も知ってる」
文は呻くのを止め、斬鬼を見た
視線が交差した
「後は任せろ」
斬鬼は部屋から出て行った
〇
俺は血まみれの道を歩いていた
そこには仲間達の死体が倒れに倒れている
死臭が鼻に入ってくるが、あまりに気にしない
これは、仲間の意思そのものなのだ
その顔の中に、あの時の白狼天狗を見つけた
「…はは、実力不足か」
あの早切りを得意とした白狼
その顔は道半ばで死ぬ後悔に溢れていた
憎悪の瞳を閉じてやる
「安らかに眠れ」
波動の青い炎が彼を包んだ
あの白狼は仲間によって葬送された
それを仲間達が冥福を祈る顔で見た
「…俺のミス、か」
機会を待ち続けた結果、こうなった
多くの仲間を失い、被害を被った
本来なら反乱を抑えられた筈だ
斬鬼は階段の下に立つ
「いいか、今日からこの腐った制度は終わりだ」
斬鬼は大きく体で示す
「家柄で全てが決まる時代は終わる」
荘厳に、言い聞かせるように言う
「かの神風部隊のように、今日から実力の時代だ」
おお、と観客が沸く
あの反乱で意思が強くなっている
この時にこれを言うのが最良だ
「その切れ目として――」
目の前に、大天狗達がうずくまっていた
彼らは震えてる、この後の恐怖に
「こいつらを終わらせる」
一言言うと刀で頭を切り裂く
それは大天狗の半分以上を殺した
また刀を振る
「ひ!」
止まらずに殺す斬鬼に怯え、1人が逃げ出す
斬鬼は慌てることなく刀で斬る
衝撃波が背中に当たった
「いた―――」
次の瞬間には頭を刀が刺し貫いていた
その大天狗の刀を手放す
彼はそのまま倒れた
「いいか、これからは実力だ
だが―――」
斬鬼は仲間達に向き直る
顔に着いた血を拭わずに
だが、それは彼を飾る物になった
「俺は雑魚でも仲間を見捨てない、絶対にだ」
そう言って彼は話を締めた
(挿絵追加予定)