諏訪大戦
「は、あん時はお前が…」
「いや、あれは斬鬼のせいだ」
昔話に思い耽る
どれもこれも、懐かしいものばかりだ
「いや、トランプでイカサマしていた奴に言われたくないわ」
「本当ですか!?諏訪子様!?」
「うんうん、神奈子イカサマしてたよ」
「諏訪子!?」
昔話、といってもかなり最近の事である
ときたまそういう話が紛れ込むくらいだ
だが、そのどれもが懐かしい
面白い事や、悲しいこと、流産…
最後の事に関しては、何も言えなかった
「まさか残り少ない神力をイカサマに使うとは思わなかったが」
「えぇー!?神奈子様!?何で!?」
「いやー、本当にくだらない事だね、神奈子」
ちなみに今の話は神奈子がトランプでイカサマをした話である
ババ抜き、神経衰弱、大富豪、色々した
その全てでコイツはイカサマをしたのだ
ハッキリ言ってアホである
「阿呆も阿呆、最後にはぶっ倒れてたからな」
「神力切れをするくらいって神奈子様…」
白い目で神奈子を見る早苗
当たり前の事だろう、こんな神を信仰していたなんて信じたくない
斬鬼なら切り捨てて天照大御神にポイするだろう
…多分天照大御神もポイするだろうな
「こっちに来たのはそれが原因かもな」
「それは―――無いと、思う」
歯切れが悪いヤツだ、と斬鬼は嗤う
それがこっちに来る根本の理由だったら殴り飛ばしてやる
斬鬼は構えた
「それに、斬鬼に会いたかったし…」
「uh-huh?寂しがり屋か?」
「外の世界に残っていた妖怪なんて君くらいのものだったんだよ、斬鬼」
うーあー言いながら舞の尻尾に抱きついていた諏訪子が言う
舞はその間にも諏訪子の頭をなでなでしていた
「まぁ、夫は物好きですからね」
「言う通りだな、ははは…」
言われる通りである
外に残っていた妖怪なんて斬鬼以外居たのだろうか
いや、そういえば…
「マミゾーはどうしてるかね…」
「マミぞー?」
諏訪子が思わず聞き返した
斬鬼は頷く
「土佐だったか、伊豆だったか…島だったかに居るタヌキだよ」
「タヌキ妖怪ねぇ、信仰が厚いあれでしょう?」
確か、ちくわ大明神だったか…
神のように信仰されているらしい
らしい、というのは聞いた話であるからだ
「とやかく、羨ましい物だ」
「お前は黙っとけ」
神奈子が爪を噛みながら言う
斬鬼はわざとらしく首を傾げた
「何のこったか?」
「軍神は私1人でいいのに信仰されやがって…!」
「そらまぁ、全県渡り歩いたからか…」
「人間と共存していたからじゃない?」
舞が諏訪子を撫でながら言う
全県を渡り歩く程度で外に居れる畏怖の念は手に入らない
その活躍を語り継ぎ、今でもなお起こさねばならない
―――斬鬼も定期的にしていた
10年に1回くらい、天皇の前で踊る
この前の宴会でやったような踊りを
ネットを覗いてみると、かなり話題になっていた
いつの間にか録画されて上げられていたこともある
ただ、「生で見た方がいい」というコメが多かった
「絶対に忘れられない」「世界一美しい舞」とか…
いつの間にか"紅白斬鬼"の伝説と結びついた
それが運良く畏怖の念の得ることが出来たのだ
「お前も派手にすればいいのにな」
「今の世の中じゃお前みたいな事は無理だよ…」
神奈子が軽く笑った
そんな斬鬼に早苗が聞いた
「あの、斬鬼さん」
「何だ」
「諏訪大戦に居たって本当ですか」
あぁ、あれの事か、と斬鬼は懐かしそうに言う
その瞳には嫌味、懐かしみかあった
「あー、戦いに参加してもらったあれねぇ」
諏訪子が面白そうに言う
「ちょっかい出して来たのはそっちだからな」
「そして諏訪大戦では無く夫婦喧嘩でしたねぇ」
斬鬼が嫌そうに神奈子を見る
舞がカラカラと笑った
「…夫婦喧嘩?」
「あぁ、諏訪子に斬鬼が、私の方に舞が来たんだ」
「どういう事なんですか…?」
「それもおいおい話していこう」
斬鬼はどこからか茶を出した
舞は懐から菓子を出す
「そうだなぁ…どこからか話そうか?」
「ちょっかいを出したところかしら?」
「そうだな」
そう言うと、斬鬼は早苗に語り始めた
途中で神奈子と諏訪子の訂正が入りながらも…