1匹狼の幻想郷帰還   作:回忌

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夫婦喧嘩

「先手必勝!」

 

「先に負けるとも読む」

 

先に斬鬼が刀で突く

それを軽く扇子で弾くと斬鬼の喉元に扇子を当てようとする

後ろに引いて避け、手元を蹴りあげる

 

「おっと、危ないですね」

 

さっと手首を捻って避ける

そのまま斬鬼は足の連撃を続ける

 

「この…!」

 

「遅いおそーい、あくびが出るわ」

 

蹴りはほぼ全て避けられる

その後にゆったりとした動きで上から扇子を振り下ろす

行き場所は斬鬼の脳天だ

 

「…っ!」

 

衝撃

 

刀を横にして、なんとか防ぐ

だが、かかる圧力は半端なものでは無い

刀がギチギチと悲鳴を上げている

 

「武器は選んだ方が良いぞ…!」

 

「これは完全に私の趣味なので、知ったこっちゃ無いです」

 

ニコニコと笑みを浮かべながらそう言う

特注品のそれは見てわかる通り戦闘の為では無い

原理としては彼女が妖力を扇子に送っているからだろう

アレは付喪神では無い、彼女が妖力で硬めているだけだ

 

…それにも限度はあるだろうて

 

「っと…」

 

刀を滑らせ、扇子を斬る

だが、斬れる前に後ろにさがられる

アレは完全に切れない訳では無い

すこーし、ほんの少し本気を出せばいける

 

…面倒だな

 

「いやー、逆ギレして、こんな事までして

 あなた男として恥ずかしく無いのですか?」

 

「うるせぇ!」

 

「おおw、w怖wいw怖wいw」

 

「ンガアアアア!ぶっ殺してやる!」

 

煽りまくる舞

 

挑発に乗る斬鬼

 

まぁ、これだけで器の広さがよく分かること

これに関しては舞が斬鬼の羊羹全て食ったのが原因だが…

 

そんな事言っても意味が無い

 

んな事言っている暇があるなら斬れ

 

「オラっ!」

 

「せい」

 

刀の叩き落とし

それを軽く左の扇子で滑らすと右の扇子で斬鬼の左腕を狙う

アレは硬さはかなり高い、それだったら腕が飛ぶだろう

一応くっつけて治せるがそれは隙を与えたような物だ

 

選択肢は無い

 

「はぁ!」

 

「てやー」

 

鮮やかな刀の連撃

それを扇子で弾いていなす

舞にとってこの程度あくびが出るくらいなのだろう

 

…だったら

 

選択肢は無い、攻撃を続けろ

 

斬鬼は刀を横にし、目の前に突き出す

そして左手を刃の根元に添えて目を閉じる

 

「…ようやくそれを使いますか」

 

「―――」

 

根元から刃先に左手をそわす

するとそれを追うように青い波動が刃を覆う

自身の能力を応用して発明した技だ

 

これにより、刃は万物を切り裂く刃と化す

 

柄の両手を握り直し、切っ先を舞に向ける

全てが遅く感じる…なんなら景色も遅い

 

「―――」

 

景色が若干青く見える

本当に若干だ、そこまで影響がある訳でも無い

 

―――斬る

 

舞に飛びかかるようにして上から刀を叩きつける

それは大地に裂け目を作り、その場に居たものを揺らす

当の本人は既に次の行動に移行していた

 

宙に避けた舞に追撃を始める

 

横からの切りつけ、だが避けられる

それを返すように斬る

 

「とっ」

 

「ふ―――」

 

舞が防御に徹する

上からの切りつけを左の扇子で防ぐ

右の扇子で斬鬼の脇腹を突こうとする

それを蹴りあげて防ぐ、扇子が飛ぶ

 

「へっ―――」

 

斬鬼はそれを好機とし、攻める

舞は空中が不利と察して地上に降りる

 

そこを上から切りつける

舞はすうっと横に避ける

 

頭、胸、腕、足、狙って斬撃を放つ

 

だが、まるで知っているのように避ける

滑らかに、水のようにするりするりと避ける

 

まるで、踊り、舞の様だ

 

こちらも負けてはいない、攻撃を続ける

 

己が力尽きるまで

 

 

「ひぃひぃ…」

 

「ぜぇぜぇ…」

 

そしてその夫婦の息が上がってきた頃

こちらの息も上がっていた

 

二人はこの戦争の主役だ

 

だが、もはやただの喧嘩の様になっている

ちなみに原因は横でクレーターを生産している夫婦だ

その二人がいなければ神々の戦争に見えたろう

だが、まあ、それでも神々の戦いには見える

 

主役では無く脇役となってきているが

 

映画で言うなれば画面で主人公の後ろで戦っている奴らだ

なお部下達は画面にすら入ることは出来ない

大抵夫婦の攻撃で灰か砂になっている

 

「こん…のぉ!」

 

「はあぁぁぁー…!」

 

二人の最後の攻撃かぶつかる

辺りの木をなぎ倒し、止まる

倒れたのは、2人ともだった

 

「…なんだよぉ、いい所だったのに」

 

「うーあー…前が見えない…」

 

それは"この"二人じゃない、あの夫婦の攻撃だった

しかもその衝撃は何回か続く

 

「…降参するよ」

 

「和平にしようよ、それがいい」

 

「…そうだね」

 

二神はそう言う

そして終わりし戦いを見た

 

 

「息が上がってきたな」

 

「そろそろ終わらせますか」

 

二人は得物を構える

服はボロボロだ

 

舞の服は胸元が裂け、白い肌が露出している

袖も、スカートも裂け目が酷い

 

対する斬鬼の服もボロボロだ

和服は脇腹が裂け、腰紐はヨレヨレ

袴も炎のような模様が裂けまくっていた

 

「Here we go」

 

「all right…」

 

舞が挑発するように、言う

斬鬼は刀を鞘に仕舞い、構える

 

「―――」

 

一瞬の静寂の後、振る

 

斬撃は煙を巻き起こし、舞の姿を隠す

斬鬼はその中に身を投げ込む

 

瞬間、殺気

 

体を後ろに逸らす

視界には頭を貫かんとする扇子が2つ見えた

ここで驚いている場合では無い

 

刀を足に当てるように低めに振る

 

それをジャンプで避け、顔面を蹴りあげられる

 

「ぐっ」

 

受け身を取り、すかさず防御する

目の前で火花が散った

 

「―――」

 

「―――」

 

扇子が刀と擦れ合い、火花を散らす

本来ならば、ありえない光景

 

斬鬼は後ろの空に跳躍する

 

舞は迎え入れるように構える

 

「…すぅ―――」

 

息を吸い込む

刀を鞘に入れ、腰を低くし、目を閉じる

 

後ろの吹き飛んでいた岩に着地する

 

全ての音が聞こえなくなる

 

今、この力は刀と一体化している

 

己の波動が刀に送り込まれる

 

刀…鞘自体が発光する

 

思い切り、岩を蹴り上げる

舞に向けて飛ぶ、進む、進む

 

上から下への重力がスピードを上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、舞が扇子を振りかぶった瞬間―――

 

「―――抜刀」

 

「―――!」

 

火薬が破裂するかのような音と共に刀が鞘から飛び出る

それを握り、力を殺さないように注意をはらいながら―――

 

―――斬る

 

その青い一太刀は舞の胸を切り裂いた

 

「ぐ…!あっ…!」

 

小さな嗚咽を出して、彼女は倒れ込む

刀に付いた血を振り払って、納刀した

 

…終わった

 

今、夫婦喧嘩が、ようやくおわったのだ

 

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