「って言うのが諏訪大戦だ」
「斬鬼さん、ただの夫婦喧嘩だと思うのですが」
「奇遇だね、私もだよ早苗」
「あーうー、同じくぅ」
斬鬼は苦笑いをする
まぁ、なんというか大戦していたのは舞と自分だ
その他はもはや蚊帳の外、マジで文字通り
「私達がいる意味はなかったよ」
「というよりあなたがつまみ食いしなければ―――」
「すまん、マジですまん」
正座してニッコニコの舞に斬鬼が音速の土下座をする
それは少し風圧を起こすくらいの速さだ
これにより、早苗は彼が舞の尻に敷かれている事を察した
「はぁ、これだから」
「ほら、奢ったるから、な?」
「は?何で上から目線なんですか?」
「奢りまするので許して下さいませ」
「よろしい」
舞はニッコリと笑った
食事のそれを聞くと、気が緩むのは救いか、弱みか
まぁ弱みでは無いだろうて
「何にせよ、疲れたものだな」
「人里にでも行きます?まだ時間はあるでしょう」
「いんや、少し日を改めよう」
すると、早苗が手を上げる
「あの、少し食材が少なくなってきたのでついて行っても?」
「あー、じゃ、現地合流な」
斬鬼はそう手を振ると立ち上がる
首をごきりと回した後、縁側に移動する
「すまないね、斬鬼」
「何、影響は特にないさ」
「そうですかねぇ、人里で何か用があったような(ツクテーン)」
「…そうか?あったか?」
舞のギャグを流しつつ、飛んだ
「明日は頼むよ」
「分かったよ、おばさん」
「よろしくねーおじいさん」
諏訪子がにっこりと言う
この調子だと帰れないのでもう無視して飛んだ
風が髪を弄ぶように揺らめかす
舞の髪も、不思議と揺らめいていた
彼女自身、此処には居ないのに
〇
そして次の日、2人は人里に居た
というのも暇潰しの様なものだ
年の初めだからか、厚着をしている人が多い
舞もマフラーをして暖かそうだ
…あのマフラーの中に己の尻尾の毛を入れているらしい
いいなぁ、と思いながら歩く
「あ、斬鬼さん」
「よぉ、昨日ぶりだ」
そこには緑髪の巫女が居た
別名・喧嘩売りの少女とも言う
もっと分かりやすく言えば二神万歳女だ
まぁともかく、合流は出来た
「…待てよ」
「はぃ?」
す、と足を止める
そして後ろを見た
…何か居たな
「おい、そこの…出てこい」
「ニャー」
「なんだ猫か、その尻尾を触らせろ」
と、声のした所に行く
そこには…
「た、食べないでくださいぃ〜…」
「…」
紫髪の…黄色の和服、赤の袴を履いた少女が居た
エロゲーで負けた時の女みたいな格好をしている
どこかで、こんな奴を見た気がする
「誰だ?お前さん」
「あなたが紅白斬鬼さんですか?」
「…あぁ、そうだが」
するとそいつは目を光らせる
いや、マジで物理的に光らしやがった
「私、稗田阿求と申します」
それを聞いて、あぁ、と言葉が出た
「悪いなー…あー何話放置したか」
「えぇ、44話です、しっかりと記憶しておりますよ」
「不幸な数字ですねぇ」
舞はカラカラと笑う
はっきり言ってそこまで不幸では無いが…
にしても、年齢に相応しくない目だ
「えぇ、要件は分かっていると思いますが」
「あー、俺は早苗と買い物―――」
と、早苗の居"た"ところを見る
文字通り、消え失せていた
視界の真ん中、言うなれば1ドット位の大きさの緑がある
が、直ぐに消え失せてしまった
「後で教え込んでやる」
「まぁまぁ、先に終わらせてしまいましょうよ」
「…仕方ない」
嫁の言う通りにしておこう
ここで拒否してあることないこと書かれるよりかはマシだ
「オラ、さっさとしてくれよ」
「早めにしておきますよ、ついてきてください」
そういうとスタスタと歩き始めた
その後ろを夫婦はカランコロンと音を鳴らしながら歩いた
〇
「…墨臭いな」
「すみませんねぇ、でも慧音さんよりかはマシでしょう?」
「一理ある」
「あったら駄目だと思いますよ」
舞が横で正座しながら言った
今は阿求と机を挟んで対面している
彼女の前にはしっかり筆と墨、紙がある
…五センチくらい、紙の厚さがある気がする
「さて、何から質問してくるかね」
「そうですねぇ、まず、年齢から…」
「いきなり際どい所をするわねぇ」
「あ、お二人共ですよ、舞さん」
「あらSOW?」
舞はおどけたように言う
年齢を晒す事になんら躊躇いは無いようだ
「あなたの歳が分かれば、私のも丸わかりよ」
「それはそうか」
さてまぁ、今何歳だろうか
言うてしまえば永琳と同じくらいだろう
彼女が蓬莱の薬を飲んだのは確か、竹取物語
あの時に彼女は薬を飲んだ筈
…同期とは思えない、多分一、二歳離れている
「…永琳と同じくらいか」
「あら、医師より長生きなんですね」
となれば億は超えているか、と呟き筆を走らす
あの永琳が年齢を喋った?まぁどうでもいいか
「危険度より年齢か?」
「まぁ、「これだけ生きんてんだスゲー!」みたいな感じですね」
「視覚の暴力ねぇ、じゃあ次は」
「聞くところ、色んなところに現れるようで」
阿求は笑顔を絶やさないまま質問する
死を繰り返した影響か、妖怪を恐れていないようだ
…畏れを摂取出来ないのは痛いな
「出現する場所ねぇ…色々かね」
「特に?…というより主に何処に居るので?」
「主に妖怪の山だ」
ふむふむと筆を走らす
阿求は同じ質問に答えて欲しいのか、舞に視線を送る
「私も妖怪の山ね、種族は分かりきっているけど白狼天狗よ、2人共」
「下っ端と言われる白狼天狗がこんな妖力を持っているのですか」
「らしい、ちなみに先祖もただの白狼天狗だ」
「父親が特別な訳では無く?」
阿求は質問を続ける
「特別な人では無かったな、普通の白狼天狗だった」
「成程、それは努力の賜物と?」
「そうだな…人間は早く死ぬが、それを凌駕する勢いで強くなるだろう
それの妖怪バージョンが俺たちだな」
「ふむ」
阿求は筆を走らせる
既に数ページ書いたようだ、ペラリとめくる
「危険度は分かりきっているとして…ふむむ」
彼女は少し思案しているようだ
そして、突然こんな事を言い出した
「この里に、「山の舞」という店があるんですよ」
「あるなぁ」
「ありますねぇ」
「高級和菓子店…それでいて誰でも買えるお菓子…
店名から、あなた達に関係がありそうですけど」
阿求が目を細めてこちらを見る
斬鬼は少しも動揺はしなかった
「何故そう思う?」
「山は妖怪の山、そして舞は作った主である舞さん…
こう仮定するのは早とちりでしょうか?」
「…お見事、どうやらただのお子様では無いらしい」
斬鬼は態度を改める
1人の人間を、転生者を、畏怖の感情で
舞はいつも通り、カラカラと笑う
「人間が妖怪の山に居た頃、人間に教えたんですよねぇ
"こうすれば妖怪と人間の舌を堕とす事が出来る"と」
「何気に凄いこと言いますね舞さん」
万人の舌を堕とす為の製法を人間に教えた
それが今日まで生きてきたのだ
「凄いですねぇ…あ、そうだ」
彼女は紙を縦にすると、筆を握り直した
そしてこちらをじっくりと見始める
「縁起に格好を載せるので少し動かないで下さい…」
「おいおい、お前さんの能力ならする必要無いだろう」
「あら、既に知られていたとは」
そういうと彼女は筆を下ろす
彼女の能力…1度見た物を忘れない程度の能力
そんなものがあれば見て書く必要は無い
覚えていればいいのだから
「では…」
それから、阿求は能力などの質問攻めを続行した
「波動を操りし者・紅白斬鬼」
推定年齢・億は超えているとの事
性別・男
活動場所・主に妖怪の山
能力・波動を操る程度の能力
文字通り波動を操る
この世に存在する全ての存在には波動がある
それは感情や状態、様々なことによって変化するとの事
ちなみに波動が止まると、宿主も死ぬらしい
彼は波動を操る為、止めたり早めたりすることが出来る
死に簡単に誘える所は亡霊の姫君と同じと思う
なお、本人は余程の事がない限り使用しないとの事
かなり暇な為か、波動を蝶の形にして遊ぶ事もあるらしい
ちなみに応用して刀を波動で覆い、斬れ味を上げたり出来る
人間ならば霊力、妖怪なら妖力で使えるとの事
ただし、双方とも限界があり、使っている時は常に消費する
聞いた話によれば弾幕にも使用できるようだ
〇
「美しき舞・紅白舞」
推定年齢・上に同じく
性別・女
活動場所・主に妖怪の山
能力・効果を高める程度の能力
文字通り効果を高めることが出来る
というより、その物質の特性を強くする、という能力
例えれば紙が1枚あるとしよう
それの効果を高めて、石を切る事が出来る
つまるところ、切れない物が切れる様になったり
酒の美味さがもっと美味くなったりする
なお、本人によれば限界は無いらしい
強さの割にパッとした能力では無い
だが、強さに1役買っているのは確実である
弾幕では妖力の効果を高めたりする
速さを早めたりなど、様々な事ができるとの事
…余談だが、夜の運動会で快楽を高めた結果…
夫は3日程動かなくなり、1週間何事にも力が入らなくなった
恐ろしい物だ