「暗いわねぇ、何も見えないわ」
霊夢の言う通りだ
辺りはかなり暗く、1寸先も見えない
そんな霊夢に斬鬼はあるものを投げ渡す
「ほら、使え」
「これは…陰陽玉?」
それは霊夢の手からふわふわと浮かび始めた
間を置かずに声がそれから聞こえてくる
『あー、聞こえてるかしら?』
「おう、バッチリだ」
「…紫?」
その声は妖怪の賢者、八雲紫の声がする
霊夢は斬鬼に視線を向けた
「地上と地底の交信用に作ったらしいんだ、霊夢に渡せってな」
「迷惑な代物ね」
「ああ全くだ」
『ちょっとぉー?2人とも何言ってるのよ』
全く持って迷惑だ
こんな声が一日中響き渡るとかイライラする
「ま、運が無かったと言う事だな」
『役には立つわよ』
すると、陰陽玉が光る
地底での移動を考えて照明になるようにしたらしい
そこだけは有能だ
「ここで止まっていても面白くねーぜ
早く行こうぜ!」
「それもそうね」
「さて、行くか」
「天国か地獄、どっちになるかしら」
「土蜘蛛をぶっ飛ばしてやる」
魔理沙の言葉を受けて、4人は歩き始める
その歩きは悠々としてまだ楽しんでいるようだった
この異変が、全てを変えるとも知らずに
〇
少し歩くと、見覚えのある物があった
それはこの前見た白骨化した頭蓋骨である
魔理沙は顔を顰める
「こりゃ…油断出来なさそうだな」
「そうさね、そうやって隙だらけってのもどうかと思うよ」
「…!?」
後ろから何かが飛んでくる
それをすんでのところで躱す
それは、蜘蛛の糸だった
「本領発揮ってところか?」
「おお、斬鬼じゃないか?久しぶりだねぇ」
現れたるはヤマメだ、土蜘蛛の
…?土蜘蛛?
斬鬼はそれに気づき、後ろを見る
案の定、にとりが凄まじい形相になっていた
「野郎ぶち殺してやるぅぅー!」
「うわっ!?河童ァ!?」
その反応はまぁ間違っていないだろう
こんなところに外敵が来るとなんて思うまい
「…先に行きましょう」
「そうね」
舞が少し引き気味に言う
まぁ、なんというか漫画みたいな事になっている
時折水圧ビームが飛んでくる辺り、ガチらしい
「そうだな、ほおっておこう」
「触らぬ神に祟りなし、だぜ」
そういうと、4人は洞窟を歩く
少し狭くて曲がり道の覆い洞窟を
ただひたすらに
〇
「この橋も前に見たな」
「さしずめ地底への本当の入口ってところかしら」
この赤い橋は前も見た
いつも通りなら、あの橋姫がいるだろう
と、いうより既に影が見えている
「…あなたは?」
「妬ましい…妬ましい」
「コイツはこういうのだ、さっさと行こう」
「その、そういうのは止めて欲しいんだけど」
さっと行こうとすると後ろから声がかかる
まぁ、これは少し酷いか
「あなた、また来たのね」
パルシィは斬鬼を見ながら言う
斬鬼は少し笑う
「そうだな、また来たぜ」
「懲りないのねぇ、あなた」
「懲りたことは無い、1度もな」
「なら、その罪もさっさと懲りるのね」
パルシィは不気味な瞳で斬鬼の瞳を見つめた
その瞳は、何かしら嫌な予感がする
「は、お前に言われるまでもない」
「そう、じゃ、私帰るから」
と、言って彼女はどこかに飛んで行った
行先は、どうやら自分たちと同じようだった
「…何、あれ」
「言うなれば"お節介な友人"とでも言おうか」
「そう、興味無くなったわ」
ポツリと霊夢は言うと、歩き始める
赤い橋の空…つまり天井からはポツリと雨が降り始めた
地上で降った雨が地底に流れ込んでいるのである
ここでは、無数の穴からぽたぽたと落ちているらしい
雨が、頬に当たる
罪を、懲りろ
今更な、話である
「…へへへ」
少し笑うと、歩き始める
隣の舞も察してくれたのか、何も言わない
あの2人は元気だ、人間の子供らしい
俺も、少しは…
〇
「旧市街、地獄跡だったかなんだか」
地底の町を歩く
周りから奇怪なものを見る視線が多い
それに、陰口も、それに比例して多い
「地上は嫌われ者ね」
「ここじゃ仕方ない」
斬鬼はため息をついて言う
嫌われ者達がすすんでここに来たのに、何故お前達が来る
ここまでお前たちは壊すのか、と言われている気がする
「…早く抜けようぜ」
魔理沙が居心地悪そうに言う
自分たちの悪口を言われて気持ちの良い訳が無いだろう
そうして、少し早歩きで進んでいた時だった
「これはこれは…人間が地底に何か用かぁ?」
民衆から大きな声と共に悠々と現れたのは星熊勇儀だ
その額の角を見て霊夢と魔理沙がゲッとする
「うわ鬼だ」
「おわぁ…こりゃ面倒くさそうだ…」
この2人、同じ種族の萃香に煮え湯を飲まされた人間である
煮え湯というより、ただ単に面倒くさいだけだったか
「こりゃ久々に骨のありそうな…」
「骨はあるだろうな、人間だし」
「って斬鬼も居るのか?お前また来たのか!」
嬉しそうにこちらに寄ってくる勇儀
ハッキリと言おう、酒臭い
絶対に5Lは飲んだ
「俺は付き添いだな、あぁ…暇つぶしの」
「なるほどねぇ、お前、暇そうなの嫌いっぽいしな」
「は、それはお前らだろ」
鬼が1番暇なのが嫌いだと思う
戦いと真実を好む奴らは、嫌いではない
ただまぁ、面倒事があまり好きではないので嫌いだ()
勇儀は斬鬼がまた来たことが嬉しいらしい
また杯を呷る
「ぷはー…んで、こっちの人間は…」
「異変解決だ、地上で間欠泉が吹き上がったからな」
「怨霊のオマケ付き、犯人をぶっ飛ばさないと」
「はー、じゃ、戦おうか」
勇儀は釈然と言う
霊夢と魔理沙は同時にため息をついた
「「メンドクサッ」」
「そう言わずによぉ!やろうじゃないか」
拳を構えて戦う気満々の勇儀
萃香との弾幕勝負でボロボロの霊夢を思い出す
今の状態で勇儀と戦わせれば殺される
これは、弾幕ごっこでは無い
「おい勇儀、お前さんがこいつらと"喧嘩"したら死んじまう」
「そうか…?そうは思えないが…」
勇儀は2人を見た
斬鬼はヤレヤレと首を振る
「萃香との"お遊び"でボロボロな奴だ、ハンデくらいつけろ」
「…仕方ないねぇ」
勇儀はつまらなさそうだった
そこから、2体1の凄まじい戦いが始まった
〇
「楽しそうだ」
「人間と久しぶりにやりあえたからね!
それに斬鬼とまた飲めるんだ!」
あれから、勇儀が負けた
霊夢と魔理沙がかなり疲弊しているのは目に見えた
こいつの後にまた戦うなんて、なんて不幸な奴だ
…ところで
「…それはそれで、鬼子母神は?」
「さぁ?家でぐーたら寝てるんじゃないかね?」
鬼の頭がそんなんでいいのか
斬鬼はそう思いながら、酒の杯を呷った