斬鬼が生まれた時から、では無い
生きる、という概念が生まれた時からである
宇宙が誕生したやら地球が完成したやらそんな時では無い
それは生きるという概念が生まれる為の準備である
そして、生きるという事が生まれた時、全ては始まった
斬鬼や舞、紫達はそれより後に生まれた
死ぬという概念が無いもの達の時代に、その概念は無い
不死者から生者が生まれた時に、ソレは生まれたのだ
全てには終わりがある
終わりというのは、地球人の滅亡では無い
死だ
生ける者達全てに平等に与えられた権利
生者はソレを使い、終わらせる
斬鬼、舞、紫達は持っている
それを使うのも
放棄するのも
俺たちの自由だ
「大規模な宴会になるんです」
「確か地底の奴らも来るんだろ」
俺達はヤマで話し合いをしていた
面白い事に、地霊殿の奴らも来るとの事
あのさとりが自ら来るとは思わ…
「来るのはペットだけらしいけど」
「知ってた」
まぁそうなるだろうな
普通に考えてさとりが来るわけがない
自分の能力を嫌い、地霊殿に引き篭ってる奴だ
よくよく考えればそうだった
「でもねぇ、鬼が来るらしいのよ、アレ」
「そうか、文は残ってたな」
因みに今いるのは文と舞だ
天魔は家だかどこかに行った
先代がぶち殺されているので若干トラウマらしい
確か、天魔になる途中に鬼が来たんだったか
「不貞寝してるらしいな」
「鬼怖いよー状態だって、はー意気地無し」
文の毒舌が天魔にクリティカルヒットォ!
因みに次期天魔に推薦された彼女だから言えることである
先代とそこまでの関わりが無かったからかもしれない
俺としては、惜しい人を亡くしたと思っているが
「まぁ、来なかったら引き摺り出すでしょ?」
「だろうな、というか、"ココ"であるし」
そう、なんとこの妖怪の山で開かれるのである
鬼達は恐らく元配下の場所で久しぶりに飲みたいのだろう
というか、それ以外無い
あるならば此処が1番近かったと言う事だけだ
…いや、それも有り得るな
あの鬼だ、そういう結論になるかもしれぬ
奴らの頭が何処まで出来上がっているか分からない
とはいえ、大体はお頭をみて分かる
勇儀と萃香、狼破を見ればもうバカが居るのは分かりきっている
勇儀と萃香は分かるけど、狼破は違う?
頭良い奴居たら悪い奴居るだろ目を覚ませ
…兎も角、早く整備しないと
始まる場所はここ、俺の家の宴会場だ
幻想郷の奴らはほぼ入れる位、デカい
狭くないというか、デカすぎる
なのでこういう時にしか使えないのだ
「で、出来たのかあんたら」
「今作ってるでしょ」
「貴方の目って節穴だったのね」
酷い言いようだ
まぁ目の前でこんな豪勢な料理出来てたら言うか
金持ちがよくやる鯛の…あの顔と刺身の奴
それに加え、山賊焼きやらの山に住む天狗らしい物もある
いつもの博麗神社で出るものよりかは上物と思う
鯛がそれの証拠だ、幻想郷には海が無いから鯛をとれない…
…いや、じゃあこの鯛は何処から
なーんて野暮な質問は止めておこう
もう少しで始まる
…少し、頑張ってみるかな
〇
「おっしゃー!皆のめのめェー!」
「アノ、私もう飲めな…」
「お?私の酒が飲めないのかい?」
「い、いえ、そういう訳では…」
わー可哀想
勇儀に絡まれたあの河童凄い可哀想
前世で余程の罪を犯したに違いない
じゃないとあんな生き地獄を体験出来るはずがない
他の奴らも騒いでる
主に、鬼が天狗に絡みまくってる
個人的に可哀想だなーとしか思えない
「これが鬼って奴?」
「そうだな」
霊夢の質問に軽く返す
これだけ鬼が騒ぐって言うのは普通だ
地底ならば見飽きた光景とも言える
というより、ココは何時ぶりに使ったか
俺が逃げる前と、帰ってきた時だったか
いやはや、あの時は凄い騒ぎだったな
「こんなのがウチに来るの、何か嫌だわ」
「どうせ来るのは勇儀と萃香だけだろう
あいつらは元支配下だから来ただけさ」
多分な
多分博麗神社にも1部は来ると思う
だが、大半は来ない筈だ
…筈だ
そう思うと何故か来るように思えてしまう
俺と舞はどちらかと言うと畏れられている方だ
圧倒的存在には、皆平伏すだろう?
とはいえ、神風部隊の奴らも可哀想だが
隊員は鬼から所属がバレないように必死で隠してた
「あの、勇儀様…やめて頂けると…」
「何〜?酒は良いだろう?
それに、アンタ元神風部隊の奴だったろ
そんなかしこまらなくていいんだよ、もう去ってるし」
「…全く、最初から知ってるでしょうに」
この文とかはまだ有名な奴だからいい
名も無い奴らが本当に可哀想だった
個人が鬼を倒せる程の実力持ち
まぁこれだけで飛びついてくるよね
俺としてはろくな思い出が無いと言っておこう
…そして、天狗達も可哀想なものである
大半が仮病の持病がと言ってどっか行った
そしてその全員が連れ戻された
まぁ大半が消えたら面白くないからね、しょうが無いね
「ひゅいぃ…私もう飲めない…」
「直ぐに回るねぇ」
そらそうだろそいつ河童だぞ
酒の耐性なんて小数点以下だろ
…
「おう嬢ちゃん、少し飲んでかないかい?」
「えぇ…ちょっと私は…」
その声で、動きが止まった
自然と顔がそっちに向いていく
見ると、椛が鬼に絡まれていた
見ていて、不快
凄く不快
「おう、飲めないってかァ?」
「いやその…えぇ」
…はぁ
俺は立ち上がる
これ以上、見てられない
それに、潮時だ
彼女の元に向かった
「飲めッ」
「そこまでだ」
無理やり飲まそうとする鬼に、刀を向ける
殺意を滲ませながら
宴会が少し静かになった気がした
「うえっ?、これは…その」
「娘に触るな」
俺は、1歩踏み出した発言をした
さっきより静まり返る会場
鬼は、ポカンとして驚いている
椛は、もっと…それこそ信じられないというふうに
「ざ、斬鬼さん?一体何を…」
「動くな」
俺は椛の頭に手を乗せる
その手のひらから、蒼い光が零れる
「…"解錠"」
波動というものは体を構築するものだ
それは血管から細胞に至るまで配置されている
斬鬼が能力で生ける物を殺せるのも、波動で構築されているからだ
そして、それは脳も例外では無い
殺す、というよりどちらかというと封印に近い
故に、記憶を封じるのも、簡単で
解放するのも、簡単である
「ッぁ!?…ァあ…あ……あ、あ…」
椛は頭を抱え、蹲る
脳内に、記憶がなだれ込む…いや、"思い出す"
己の生まれを
己が誰の娘かを
少しの間、呻き声がした
それが止まって、顔を上げる
「…椛」
「おとう…さん?」
"私"の、目から自然と涙が出た
あの日から、どのくらい立ったのだろう
貴方が私の記憶を封じる込めたときから、いつまで
今日でようやく、終わるの?
お父さん…お父さん…
「お父さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「…ごめんな、置いていって」
私は、思い切りお父さんに抱きついた
ああ、暖かい、この温もりが懐かしい
この肌触りが懐かしい
辺りから、暖かい視線が、親子を囲んでいた
ようやっと来た…
ここまで来たら緋想天と最後の異変だけや…!