「おいしい物は、おいしいな♪」
斬鬼は変なリズムで歌っていた
というか字体だけではルーミアかその辺だと思うだろう
彼自身知っている人は少ないがかなりの大食いである
それこそ幽々子に匹敵するくらいの、だ
無論の事それは公式の場でやったことは無い。というかやったら死ぬ(色んな意味で)
人前ではクールでも自室とかだと天然になる
厳格な表情は今や崩れている
「そうだ、食後の一服といこうか」
懐から葉巻を取り、先を切ると妖術を使って火を付ける
これは知っている人は多い。彼はヘビースモーカーだ
最初は煙草を使っていたが最近は葉巻である
ちなみにキューバだ
ほう…と口から煙が出される
妖怪故、いくら吸っても問題は無い…本人には
旋回している人魂が苦しそうな様子になる
斬鬼はそれを見ると葉巻を地面に落とし、潰す
「そうだったな…君は煙草を辞めたんだったか」
"彼女"は煙草を辞めた
健康に悪い事もあったがそれ以外にも…
そういえば外の世界で吸った時に周りの人たちに嫌な顔をされたことがある
その時は不思議に思っていた…後で調べてみると禁煙が世界中に広がっているらしい
なんでも人間達は肺癌を患ってしまうらしいのだ
自分は妖怪だからか、そんな病気とは無縁である…例外が今後できるかもだが
今からもう気が遠くなるような時代から斬鬼はいた
近未来な技術を持っていた奴らが月に逃げた位の時代にはもう青年だった
のちに妖怪の山となる山から成り行きを見守ったりした。
そこから時は流れて…大和が侵略してきた頃に斬鬼は当主となった
…神風部隊に入ったのもこの辺だったか
邪智な妖怪を討ち滅ぼすというバカな神を蹴散らしていた
それから大和と洩矢の戦争が終わった頃に彼女達が謝りに来た
なんでも部下達の単独行動を詫びたいとの事
こちらは正当防衛をしただけと断っておいた
それから何百年後…あいつらがやって来たのだ…鬼どもが
あいつらの力に天月は屈したのだったか。神風部隊壊滅したし
よく斬鬼が鬼を避けて逃亡したのだと言われるがそれは違う
というか実際に会っているので避けてはいない
強そうだなとか言われて喧嘩をふっかけられれば誰でも逃げると思う。
ちなみに鬼子母神とは結構気が合った
彼女は「夫さんはどこにいった?」「そこに行かせてあげましょう…地獄へと」と受け流していた
それからは色々なところを旅したのだ
狸で有名な佐渡に行ったり久しぶりに洩矢に行ったりと
そこから数百年、たまたま妖怪の山に寄ると鬼がいなくなっていた
斬鬼を迎えてくれた彼女や仲間達によると地底にいったらしい
最近の人間どもが卑怯な手しか使わないから出そうだ
確かに弓でペチペチはどうかと思うが…
力の差が歴然なのに突っ込むのは馬鹿くらいだろうな
「ぐあ!?」
「んん?」
悲鳴が聞こえてきた
若い青年の声だった
千里眼を発動し、辺りを見回す
ここから少し下ったあたりに草原があり、そこに青年が倒れていた
それだけなら黄昏ていると思えるだろうが周りには味方の白狼が居た
椛が大剣を使って指示しているところをみると彼女が隊長のようだ
あたりに散開しているのは彼女の部下だろう
その目の前にいるのは立ち上がったぷー…くまの妖怪だ
突然変異か妖怪化した時の影響なのか黄色の体毛だ
おそらく熊が妖怪の山に入り込んだのだろう
どう見ても入籍の申請には見えない
椛の指揮で熊を囲うように白狼が移動する
「天狗ならではのやり方…か」
天狗は強い
妖怪全般でも速力に勝り、社会を築いている種族だ
仲間意識が強く部外者は入れないとする保守派は未だに多いようだ
結構減らした(物理的に)のにまた増えたのだろうか
天狗と共に社会を気づいているのは河童と色々だ
入籍なんてそいつらの仲間か結婚でもしないと無理だろう
「…」
それにしても動きがとろいな…目で追うことの出来る速さだ
昔の天狗社会では「自分はこの社会の一員だからしっかりしないと!」と言うのが多かった
…個人が思っている訳では無い
これは日本の妖怪の特徴だった
1部の妖怪達は違うがほとんどがそれだったのだ
1人が皆に合わし、皆が1人に合わせるのだ
この流れが始まったのはかなり昔だ
それこそ自分が物心着いた頃だ
妖怪が攻めてきて壊滅状態になったらしい
その場で抵抗する者は少数だった…しかし次第に増えていった
…あいつが抵抗している
…あいつも、抵抗している
…抵抗していないのは、俺だけ?
…やらないと
…なにか、言われる…!
つまるところ同調圧力と言うやつだ
日本の、いわゆる「空気を読む」という事だ
三国干渉、日米安保条約、日米通商航海条約etc…
ハッキリ言って同調圧力に弱いのだ
「…変わった?」
考えられるのは、なにかが変わった事
そう言えば屋台からここに来るまでチラリと見たが道場に人が全くいなかった
それこそ師範代と弟子3人くらいしかいなかった
あれから時代は流れ、皆怠けてしまったと言うのか
「仕方ない」
3分経っても熊さんを倒せない彼らに喝を入れてやろうか
〇
「くぅ!」
硬い
椛の口からはこれだけしか言葉が出てこない
突然変異のおかげか皮膚が硬化しているのか分からない
ただ、今の戦闘方法では不利だと言うことだ
大剣を熊に向け、指示を出す
「熊を囲うように配置転換!」
『了解!』
「うらぁ!」
「あ、おい!」
若い白狼が飛び出して斬りかかった
ただ振り下ろしたように見えた刀はまた切りかかる状態になっていた
たしか彼が得意とした技だった気がする
振り下ろした後にもう一度振り上げるのを拘束でやるのだとか
ただし、効果は無かった
「下がれ!」
「は、はい!」
「全員、攻撃開始!」
それと同時に白狼達が次々に切りかかる
横一文字に、縦にバッサリ切り捨てる斬り方
様々な攻撃方法で熊を攻撃する
最後に椛が大剣を叩きつける
バックステップで後ろに飛ぶと熊を見る
「ガァァァァ!」
「く…」
これでも生きているのか…
長期戦はあまりしたくはない
要請を呼ぶべきだろうか
再び大剣を構える
「遅い、遅すぎる」
「…!?」
一瞬風が止まったかと思えばいつの間にか斬鬼が立っていた、刃が赤い刀を持って
右手の長刀を横に振って付いていた血を飛ばし、鞘に収める
それと同時にクマの体に崩れ落ちた
「…」
「…えーと」
無言
彼からの圧が怖い
「全員、整列」
『は、はい!』
彼は並ばした後隊員の顔を眺める
そしてある白狼に目を止めると指示をする
「お前、さっきの技をやれ」
「え」
「早く」
「は、はい」
少し驚きながらも若い白狼は刀を振った
先程と同じ、高速で上から下に斬る事を繰り返す技だ
それを数回やって刀をしまう
「…もう一度!」
「やぁ!…あ!?」
刃先が思い切り地面の土にめり込む
斬鬼は刀を地面から引き抜いた
そして、隊員に体を向ける
「アニメでも見たか?」
「う…」
若い白狼は狼狽した
斬鬼は上を見ながら言った
「昔よりここは発展した、間違ってないよな?」
「は、はい…そうですね」
「だからこそ、だ」
斬鬼は左右に歩を進める
「どうやらお前さん達は鍛錬を怠っているようだな?」
「は…い、そうです」
「だからこんなミスを犯すんだ」
斬鬼は刀を顎で指す
「いいか?ここは幻想郷の重要ポイントだ」
椛の部下達は静かに聞いている
「常は見張られていると思え、さもないと…」
「どうなるんです?」
「…自惚れた人間達に滅ぼされる」
「…」
それはない、と言えないのが現状だった
何しろ博麗の巫女、自称魔法使いや時止めメイドやら人外っぽいのに人間と名乗る奴らがいるのだ
彼女たちのような強さをもった人間が攻めてきたら?鍛錬を積んでいない自分達なんて直ぐに殲滅される
「いつの時代でも重要なのはお前さん達の様な名無しだ」
「…時代を、動かしていけるのですか?」
「1人じゃ無理だ」
「皆で、協力して…?」
斬鬼は目を瞑って頷いた
彼は若い白狼の刀を若い白狼の前で見せる
「…こんな装飾には何の戦術的有利は無い」
「…!」
恥ずかしさで白狼の顔が真っ赤になった
「だが…」
「…?」
斬鬼は彼に刀を渡し、肩に手を置いた
そして耳元で囁く
「…あの技は良かった、いいセンスだ」
「…いい、センス」
斬鬼は彼から離れると告げた
「これから俺が鍛錬を積んでやる、安心しろ、天月程じゃ無い…解散」
『了解!』
〇
白狼達が各々の配置に戻りつつある時葉巻を吸っていた斬鬼に声が掛けられた
「斬鬼さん」
「…椛か、どうした?」
「私…怖いんです」
「…何故」
胸を抑えて言う椛に斬鬼は質問する
椛は顔を上げると、泣きそうな顔で言った
「…私は実は捨て子なんです…天魔に拾われて」
「そりゃ酷い親も…居たもんだ」
「だから、時々思うんです」
「何をだ?」
「また、捨てられるんじゃ無いかって…」
「ふぅ…」
斬鬼は煙を吐くと椛に近づいて言う
安心させるような、優しい声で
「そりゃないさ」
「…それは」
「天月は、自分の部下を売ったりしない、絶対だ」
「…ありがとう、ございます」
椛は数秒斬鬼を見つめた後に礼をした
「そうだ、河童の所に案内してくれないか?」
「そ、それくらいなら!朝飯前でしゅ!?」
お前もか
斬鬼は自分と話す人に噛む呪いでもふりかけているのかと思った
「こっちです!」
「あい分かった」
学校でコロナ出たので遅れました、ユルシテ