マヨヒガに音は無かった
いや、あるにはある
紫が扇子を開いたり閉じたりする、パチンという音が
その音と気配だけで彼女が怒っている事を察せれる
カタカタと足を鳴らし、歩き回る
冷静沈着な彼女が取るとは思えない行動だった
「あの野郎どう落とし前付けてやろうか…」
なんなら口調もぶち壊れてる
斬鬼かマフィアのボスみたいな口調だ
まぁ、己の理想を壊されそうになったら、そうなるか
今のところ、人妖の調和は成功仕掛けている
なぜなら、天狗の里に人が住み始めたから
天狗の里に住んでいた遠い先祖を持つ者…このさい変わり者と言うが…
その1人が来てから、数人、また数人と来るようになったのだ
人里では天狗が自警団に来る事もしばしば
天狗と人間において、調和は完了したとも過言では無い
で、そんな時にこれである
言うなればいい気分の時に面倒事を持ってこられた時だ
今回の場合、死罪に値するが
「斬鬼が天界に向かいました」
彼女の完璧な式神でさえ、少し冷や汗をかきながら報告する
「斬鬼が行った…後は任せてもいいかもしれないわね」
それを聞いて、少し紫が落ち着いたように見えた
座布団に腰を降ろす
「…全く、物事は上手くいかないわね」
「同感であります、しかも天狗と人の調和は完了しそうな時期に…」
「彼が天界に向かった理由はそれだけじゃ無いと思うけど」
「と、いうと?」
藍が袖に手を通しながら聞く
紫は扇子を少し早めに揺らしながら言う
その目は、少し頭を冷やした目だった
「彼としては博麗神社を壊されたのが良くなかったかもね
あそこは彼と"彼女"の思い出の地だし…」
「…そうですね」
「藍、彼の監視を頼むわ
ここは幻想郷、全てを受け入れる…
霊夢次第では生かす必要があるかもしれない…
いえ、多分彼女が待ったをかけるでしょうけど」
「御意」
そういうと、藍はスキマに消える
紫は顔を触る
すると、掛けられていた幻影が解け、バツ字の斬傷が現れる
触れると、凹凸が確かに感じられた
未だに治らぬ、不治の傷
「…さて、何処までやるかしらね」
天を見ながら紫は呟いた
多分、自分が何も言わなくても半殺しにする事だろう
自分達は後処理をすれば良いだけだ
〇
進む、進む、進む
雲を切り裂きながら進む
どこだ、何処だ、何処だ…
斬鬼は千里眼をフル活用しながら元凶を探す
こんな時期に宣戦布告とは面白い奴だ
ようやっと天狗と人間が共存しそうな所なのに
今ここで幻想郷を壊されてたまるものか
古き夢が実現しそうな所なんだ
邪魔をするな
やがて、雲は黒雲へ変わっていった
どうやら雷が降るらしい
そう思っていると、黄色い線が横を通過する
まるでこちらに当てようとしているかのようだ
どうやら、あちらに行かせたくないらしい
ならば、押し通る
「 邪 魔 だ 」
そう言って、刀を抜き切る
雲は綺麗に真っ二つに切れる
「ひっ…」
見えたのは、1つの影
羽衣のようなものを纏った、女
バチバチと、紫色の雷を纏わせている
だが、その顔は恐怖に染まっていた
「地上にこんなのが居るとか聞いてませんよッ…!?」
「退け」
(退いたら退職、退かなかったら死…
どないせいっていうですか!?)
斬鬼の気迫に圧倒される
彼女は引く、少しずつ後ろに
「わ、私は地上に用があるので…」
「変な事をしたら滅殺する」
(滅殺!?殺すじゃなくて滅殺!?)
「覚えておけ、竜宮の使い」
「な、何を…」
「お前の使えている者は後戻り出来ない」
衣玖は言葉が出なくなった
この妖怪はソレも知っているのか
コイツは誰だ…一体何者だ…!
「ま、まさか…あの天狗じゃ…」
それを聞かずに、斬鬼は飛び出す
気付く頃にはその姿は見えなくなっていた
〇
「魔理沙!早く!」
「これでも全速力だよ!」
その斬鬼を休む暇無く追いかけるのがこの2人
言わずもがな、博麗霊夢と霧雨魔理沙だ
今回の異変の場合、首謀者が死亡する可能性がある
もしくは、既にしているかだ
「急がないと…!」
"…天人か"あの言葉がそうなら、元凶は天人
たった1人の天人がしたとしても、不味い事になる
酷ければ、天界と地上が戦争をするかもしれない
ほぼ不干渉の天界と地上が最悪の形で接触する事になる
「霊夢が駄目だったら止められる気がしないぜ…」
「駄目でも止めるのよ、人生ギャンブルみたいなもの」
「そんな無茶な…」
そう言いながら、雲を駆ける
暫くすると真っ二つになった黒雲を発見した
「…斬鬼だな」
「このへんにいるのか?」
そして、更に上を目指す
雲を抜けた
そこは
『ぐぎゃあぅっあ!!!、…アッグァァ!?』
『…倒れるな、殺りにくいだろ』
地獄絵図だった
「ッぁ…!」
霊夢が息を飲む
残虐な光景だった
黒刀を、天人の体が堅い事をいい事に振りまくる
彼女は体が堅いせいで、ろくに死ねない
そもそも、天人は不死だ
生き過ぎた彼女達の元に死神が来ることがある
生き過ぎた仙人や天人を狩る仕事を持った、死神が
だが死神が来ても、追い返せる程の実力がある
彼女から見えれば、彼は妖怪ではなく死神だったろう
地面に倒れた彼女を、斬鬼が首を持ち、持ち上げる
そして、何の躊躇いも無く、その心臓を黒刀で─────
「…彗星、ブレイジングスタァァァァァァアアア!!!」
「天照ッ…!」
太陽の槍と、特攻が斬鬼に向けて飛ばされる
だが、意図も簡単に躱される
掴まれた彼女は、離された
そのまま、雲の地面に落ちる
「…お前らか」
斬鬼は抑揚の無い声で言った
ゾッと、背筋が凍りそうだった
「…幻想郷の流儀でやる
スペルカード・ルールで、やるの───」
「そんなのどうだっていい」
斬鬼は一蹴した
彼の怒りは、神社に来た時と変わらなかった
「人間と妖怪の調和
それが実現しかけたこの時にこれだ
コイツを生かす意味は無い
「ルールはあくまで博麗の巫女にある
それを無視するなら…貴方を退治する必要がある」
斬鬼は霊夢を睨んだ
「これは幻想郷の為だ」
「それは私のセリフよ」
「斬鬼」
そこに、紫が現れる
斬鬼が明らかに不機嫌になった
「貴様…」
「霊夢がああ言ってるのよ、許して────」
「許されるかッ!」
斬鬼は叫んだ
激昂を顕にする
紫は必死に説得を始めた
「私達は運命共同体よ!
誰かが居なくなれば誰かが困る
互いに頼り、互いに助け合う
それが貴方の望んだ事じゃない!
皆が
だからこそ生きていけるのじゃない!
私達は家族の様な物なのよ!」
「嘘を言うなッ!」
斬鬼はそれを否定する
霊夢は、あんなに必死な紫を見た事が無かった
彼女、彼に肩入れしていたのだろうか
「人を見下した醜い瞳が嘲笑う
無能、虚偽、役立たず、邪魔者
どれ1つあってもここでは邪魔だ!
俺はそれを無謀で括ってきた
そうして天狗と人間を調和させたんだ!
誰が仕組んだ地獄だ!
貴様は本当に笑わせてくれるッ!」
「斬鬼!」
紫は必死で叫んだ
だが、遂に彼が限界に達したらしい
咆哮が空を劈く
そして、その後一人一人を指さした
「ぐがぁぁぁああぁああああ!!!
もういい!」
「お前もッ!」
霊夢を指す
「お前もッ!」
魔理沙を指す
「お前もッ!」
紫を指す
「
黒刀を、振り切った
天狗の里に人が来た時の話、書かなければ…
人里の自警団やら取引やら…
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙↑↑↑(メンシス学派)