これも、彼なりの表現なのかもしれない─────
時は戻りて、天界
「貴様が博麗神社を崩した屑か」
「そうだ…妖怪とはな
それに天狗とは、傲慢な奴が来たものだ」
「貴様に比べれば生ぬるい」
斬鬼は刀を抜く
ここは天界だ
ここは地上では無い
ここにスペルカード・ルールは存在しない
故に、少し"昔"の戦い方でも問題は無い
「覚悟しろ」
そうして、刀を振った
鉄を超える硬さの天人の腕が斬れる
「…はっ?」
今の今までそんな事は無かったのだろう
初めて見たかのように惚けた顔をした天人
やがて、それは絶叫に変わる
「グギャァァア!?いっつつつう…」
何とか腕を接合する
無論、斬鬼の攻撃がそれで終わるはずも無い
斬る
上から下へ
へし切る様に、力を出鱈目に入れて
「ウギユッうアッ!」
斬る
下から斜め上に
切り飛ばす様に、軽く力をいれながら
「ツっっっ!!」
何とか回避した
斬撃は頬の斬傷と、髪を斬っただけだった
「ふん」
「うぎがっ!?」
腹を刺す
それは硬さ等無視して簡単に貫通した
斬鬼の腕に天人の体重がかかる
それを思い切り掲げた
「武甕槌命雷よ」
斬鬼が呟いたのは雷の神
外の世界では雷神・剣神・武神と言われている
ここは、雲の上
だが、神の光はそんな事は関係ない
「アアアァァガァカガガガァ!!?」
裁きの雷が直撃する
それは簡単に天子を感電させる
雷に打たれた天子は黒焦げになっていた
ぞんざいに投げ捨てる
「うぐっ…ウゥゥ…」
「流石は天人と言うべきか」
斬鬼はそういうと、興味を無くしたかのように視線を変えた
その虚空を見つめた
「お前も物好きな奴だ、アレの式になるとは」
『あれは運命とでも言うしかないだろう』
虚空から声が帰ってくる
それは完璧な式神の物だった
「さて、そろそろ来るか?」
『…君は勝手な事をするな』
ソイツは呆れたように言った
斬鬼は嘲笑う
「関係の無い事だ」
『ふむ、そうかもしれないな…』
「じゃ、引っ込んどけ」
『承知』
それきり、声は聞こえなくなった
「うぐぐぐぇ…」
「立ち上がるか、その見上げた根性は認めてやる」
立ち上がった哀れな天人に黒刀を降り始める
これは圧倒的な死合では無い
斬鬼は弔いを含めて、黒刀を振った
〇
そして、時は戻る
「避けたか、素直に死ねばいいものを」
斬鬼はドス黒い霊力を纏う黒刀を波動で覆う
霊夢はあれ見た瞬間、当たってはならないと確信した
それを2人に警告する
「2人とも、アレは当たっちゃダメよ」
「勘…じゃなくても、だな
アレは当たったらどうなるか…」
「…恐らく、体に流れる波動が消えるわね
当たれば一生動けなくなるか、死ぬか」
斬鬼は刀を振った
それは見た目通りのリーチでは無かった
黒い霊力が伸びて、リーチが長くなった
「嘘ォ!?」
「魔理沙!アレにここの常識は通用しないわ!」
霊夢は叫ぶ
今まで彼に常識が通用した事は無い
幻想郷の生まれでそこの常識に染まった霊夢
だが、それすら通用しない
吸血鬼やら鬼やらより更に彼は出鱈目で、強い
何処かしらズレた妖怪だ
「妖夢でもあんなんないぞ!?」
「斬鬼を幻想郷に居る妖怪と同じにしてはいけないわよ
彼と舞は正真正銘の最強、本来ならば勝てる術は無い…」
紫が後方から弾幕を放つ
しかし、斬鬼は波動を盾の様にして防ぐ
魔理沙はハッとして、八卦炉を構えた
「お前がバテルまで撃ってやるぜッ
…ファイナル・マスタースパークッ!!」
「あの馬鹿ッ!そんな事─────」
視界を覆うような閃光
出力最大のビームが斬鬼に襲いかかる
そもそも、ビームとは波動だ
魔力を波動に還元し、放つ
妖力を波動に還元し、放つ
幽香やビームを得意とする妖怪はその原理をよく分かっている
斬鬼は波動を操る
つまり
「ありがとよ、まさか敵から塩を送られるとは」
「なっ…」
斬鬼は無傷で、現れる
「彼にビーム系統は禁句のような物よ!
畜生全て最初からに…!」
「お返しとしては何だが、これでもやるよ」
それは、魔理沙という火力に注ぎ込んだ者への布告とも言えよう
斬鬼は、刀を魔理沙に向けて突き出した
「避けて!」
「ッ…!」
瞬間溢れる光
その波動の濁流は魔理沙の元いた地面を抉り取る
「あちち…殺す気で放ちやがった…!」
「もうスペルカード・ルールなんて通用しないぞ
今やってるのは"昔ながらの"殺し合いだからな」
つまり、これは斬鬼が生きてきた時の戦い方だ
旅の途中、戦争の途中、その時の、戦い方
「くっそ…だったら…」
(…だったら、何があるッ!?)
通常弾幕の金平糖の様なものを放つ
レーザーは無効化される為牽制にも使えない
だが、魔理沙の得意とする技はレーザーなのだ
(クッソ!相性最悪じゃないか!)
「仕方ないわね、私が行くしかないか」
「援護するわ」
「後方援護しか出来ないぜ…」
霊夢の前にスキマが出来る
それを使い、斬鬼の後方に移動する
「成程、攪乱か」
「はっ!」
霊夢からの攻撃を刀で防ぐ
後ろからの援護射撃も波動の盾で防ぐ
「面白い…だが、これはどうだ
「舞ッ!」」
「まさか…」
魔理沙の背後から攻撃が迫る
「クッ」
紫は魔理沙ごと転移する
そして、目の前の最悪の状況を目にした
「まさか…確かに幽霊に波動があるからとは思ったけど」
「一体三なんて不利だからな、後悔すんなよ」
そこには感情の無い瞳をした舞が扇子を構え、立っていた