「な、椛」
「ハイなんでしょう」
「そろそろ落ち着いてくれても」
「この場で叩き伏せましょうか?」
「ごめんなさい」
天魔が土下座する
椛は変わらぬ笑顔で大丈夫ですと言った
「いや、本当に止めてほしいのだぞ」
「修行ですので」
「本当に止めてください鬼がまた来ます止めて下さい」
さて、何故天魔が椛に対して土下座しているのか
それは彼女の修行のおかげである
幽香に喧嘩を売った後、勝利
それから様々な所に喧嘩を売りに言ったわけである
紅魔館に突撃して門番を吹っ飛ばす
喘息魔女の魔法をぶっ飛ばし、悪魔も殴る
主も問答無用で蹴り飛ばしカリスマブレイク
応援にやってきたメイドと妹を薙ぎ払う
椛がワンマンアーミー化している今日この頃
最近も白玉楼に殴り込みに行った
すれ違い、相手が強いと感じたら大剣を抜く
そして強ければ楽しく殺し合うのだ
誰が言ったか白い通り魔
巷じゃ白い悪魔なんて言われているらしい
というか彼女の時代が逆戻りしている
幽香、紫、それに鬼達が居た頃の時代くらいだ
大剣を肩に起き、ふふふと笑う椛
久しく忘れていた恐怖が巻き起こる
いや、自分より若い者の筈だ
己が弱くなっただけか
天魔は少しため息をついた
「程々にしてくれ…私も私で疲れるんだ」
「それは大変な事ですね」
「だろう?」
「では私は天界に殴り込みに行くので」
「」
話が通じないとはこの事か
止める暇もなく、彼女は飛んだ
天魔がリアルorzしたのは言うまでも無いことである
「ドウシテ…ドウシテ…」
「あ、天月ちょっと聞い──────」
「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛」
「うるせぇ!汚い高音だすな!」
ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙(絶命)とでも言うべきか
凄まじい叫び声が山を穿つ
文は不思議な事に彼女に物凄く同情出来た
「椛ぃ…どうしてそんな…」
「全責任は斬鬼にあるでしょう」
「…それもそうだな」
天月が涙を拭き、胡座をかいた
そして、天に手を伸ばす
「全く、彼も彼で面倒な――――」
ふと、気が付いた
指先から薄い青の煙のような物が出ている
風呂上がりの、体から上がる湯気を更に薄くしたような
「…本気、か」
全てが始まっていた
いつの間にか始まっていたわけだ
始まりに気付けないとは、本当に腕が落ちた
力無く手が足に落ちる
そこで文もその現象に気付いたらしかった
不思議そうに手を見ていた
「流れ出てる」
「彼女次第で、ここは終わるか」
はぁ、とため息をついた
「どいつもこいつも、身勝手だなぁ」
「天月、あんたも大概よ」
〇
「こんにちは、喧嘩売りの白狼天狗さん」
「隻眼天狗の娘、と言ってください
幻想郷縁起にもそう書いてあるはず」
突然現れた紫にニコリと笑って対応する
いつの日やら、阿求から貰った二つ名を使用する
彼女は扇子で口元を隠しながら聞いてくる
「魔界にも殴り込むに行く気だったでしょう?」
言う通りである
魔界人はとても強く、一筋縄ではいかないらしい
そんな相手、殺るしかないだろう
「修行と称しての侵略よ、あなたのやってること」
「ええ?ただの修行ですよ」
「その修行の後始末をしている身にもなってほしいわ」
「じゃ、その面倒な奴叩き伏せますよ、どいつですか」
「…貴方戦いたいだけでしょう」
白い目で椛を見る
彼女ははてという感じで首を傾げた
「え?それ以外に何があると」
「ダメね貴方」
ペチンと額に手が当たる
もうなんというか、制御不能
その父も今や何処に行ったか…
全く、親子似るものだな
「ま、そんなあなたにいい依頼、あるわよ」
「何かしら?」
「こちらに来なさい」
スキマを開くと、その中に入る
椛は大剣を背負い直し、盾を持ち直した
少し、油断ならない気がして
〇
「こんにちは、幽々子さん」
「こんにちは〜、こうやって会うのは久しぶりねぇ」
訪れたるは白玉楼
転生を待つ幽霊達の待機所
幽々子はそこでそれらの管理を行っている
「それで、今日はどういったご要件で」
「まぁまぁ、少しお茶でも飲みながら話しましょう?」
扇子でナンセンスと言わんばかりに額を小突くと歩き出す
庭から屋敷に上がり、彼女に着いて行った
「…他に誰か居るので?」
「んー?妖夢ならいるわよぉ」
「そうじゃないです、他に居るでしょう?」
椛はにこにこと笑いながら言う
幽々子は障子の前で立ち止まる
「そうねぇ」
そして、勢いよく開ける
「博麗の巫女、とかかしら」
「…アンタいきなり連れてきて何よ」
不貞腐れた顔をした霊夢が、茶を啜っていた
〇
「へぇ、日向ぼっこしてたらいきなりですか」
「そうよ!こちとら暇を謳歌してたのに!」
「それはただの職務放棄でしょう」
博麗巫女恒例の職務放棄
コトは起こる前に解決するのが吉、だ
ま、今の幻想郷じゃ起こった後がいいかもしれない
「暇を持て余して、やる事無いのかしら」
「異変しか能が無い妖怪に言われたくない」
「それを解決するしか、巫女には意味が無いのではなくて?」
幽々子がケラケラと笑いながら言う
やっぱり、彼女の思っている事は分かりずらい
紫の次の次くらいに面倒な存在と言えるだろう
「それで、要件を」
「そうねぇ」
簡単に言えば、と言葉を繋げる
ここで、彼女の言う簡単は普通に簡単じゃないと言おう
「西行妖を、再封印してほしいの」
任務を遂行しろ
全ては幻想郷の為に