「封印、ですか」
苦手な分野だ
封印なんてあまり好きでは無い
自分の場合、エネルギーが強すぎて爆発四散してしまう
そこのところ、親の不器用な所を受け継いでいる…
あの2人、封印の術を使えた筈だけど
だって
「あの桜、父が封印した物でしょう」
「…斬鬼が?」
まさか、と言わんばかりの顔を霊夢がする
あの桜は一度咲き、霊夢に封印されたものである
あの一戦は壮絶と言えるだろう
スペルカード・ルール等あの生物に存在しない
死を纏った反魂蝶の嵐を掻い潜る霊夢と魔理沙と咲夜
3人に近づく死を切り裂く妖夢
一歩踏み外せば、死にまっしぐら
そんな、化け物を
「封印、した?」
「今から1000とかそんな昔の筈ですがね」
「因みに霊夢、あなたの封印は一年程度しかもたないわよ」
「は!?そんな筈じゃ…」
紫からの告白に衝撃を受けた
あれだけ、苦労したのに、一年
伝説は、1000年程
実力の違いが数字で浮き出ている
「こんの…」
パキ、と大幣にヒビが入る
そんな霊夢に紫は言う
「なら今度は強い封印をすればいいじゃない」
「そうだけど…そうね、それもそうね…」
ふふふ、と笑いながら立ち上がる
椛は深く溜息をついた
「どうしたの」
「いえ、手柄は譲らなければ、と」
「そういえば貴女封印術苦手だったわよねぇ」
ムスッとした顔で立ち上がり、縁側に出る
そこから、少しピンク色に輝く桜を見た
さくらさくら、トラトラトラ
そんな、結果になればいいのだけれど
「なる訳、無いか」
また深く、彼女はため息をついた
〇
西行妖
白玉楼に生える大きな巨桜
とはいえ、その花は蕾すら付かせることは無い
咲いた瞬間に封印が解かれ、死を振りまく
西行寺幽々子が死ぬ原因となった桜である
本来、この桜は普通の桜であったはずだ
だが、いつの日にか死を呼び、死に誘う妖桜となった
それは死霊を操るだけの能力を持っていた幽々子を魅入る
彼女が、その桜のしたの屋敷で住んでいたのが良くなかったかもしれない
紫が通うようになったのは"生きた"従者が最後の1人になった時だった
同じ女性か、話は弾んだ
だが、少し、何かが足りなかったのだろう
紫はそんな違和感を解消すべく、ある男を呼んだ
"生きた"最後の従者が死んだ次の日
彼が来て思ったのは、枯木だった
半分死んだ従者は枯葉、幽々子、本体の枯木
いつ、壊れてもおかしくない
見かねた彼は一回、彼女の首に刃を当てた
彼女は、ぎこちない笑顔で、言った
"貴方の手の中で死ねるなら、別に良いわ"
"...本気か?今ならまだ"
"どうせ死ぬもの、今と後でも変わりないわ"
"じゃ、止めだ"
"どうして?見かねたのでしょう?"
"幽々子、アンタなら未練無く逝けるさ"
"…そうね、そう…そうなればいいわ"
そして、次の日、彼女は死んだ
彼は彼女を桜の下に埋めた
反魂蝶が舞羽ばたく中、能力を酷使して死を遠ざけながら
彼の至る所に蝶が停り、羽ばたく
そして、彼女を埋めた所に刀を突き立てた
さっと消える反魂蝶
それと入れ替わるように、西行寺幽々子が現れる
彼女は再誕した、亡霊として
封印の要となった彼女は永遠に成仏する事は出来ない
彼女が成仏出来るのは、西行妖が消えたときであろうか
なんにせよ、その花が咲くことは、永遠に無いのだ
「…」
「封印が、剥がかけてる」
封印の札の端っこ、そこがめくれかけていた
博麗巫女としての恥、とでも言おう
先代なら、かなりの間持たせることは出来たはずだ
「…仕方ないわね、やり直すしかないわ」
パッと大幣を構える
はらり、と札が剥がれた
脆い?違う、封印を解いたのだ
瞬間、西行妖が桜を咲かせる
妖艶という言葉が1番似合うだろう
ゆっくりと、蕾が開き、開花する
今の季節にそぐわぬ、黒染めの桜が
"終わらせる、この悪夢を"
"全て、消してやる"
"伝説は2人も要らない、伝説は1人でいい"
どこかから、父の声が聞こえたような気がした
それに、気が取られて――
「椛ッ!」
「――ッあ!」
気付いた頃には、反魂蝶の濁流が
簡単に、彼女を飲み込んで行った
〇
「モミジィィィィーーーッ!」
霊夢は叫ぶ
だが、彼女はそれが聞こえないのか、ゆっくりと倒れた
何故?何があった?
彼女は何に気を取られた?
彼女を救えなかった自分に歯噛みする
「紫ッ!」
「分かったわ!」
急いでスキマから援護に入る紫
霊夢は彼女に椛の容態を聞く
「椛は!?」
「意識不明!でも死んだ訳じゃ…無いと思うわ!」
「なら、戻ってくるまでにどうにかしないと!」
桜が咆哮を上げる
春を吸い込んだ訳でもない桜は、そんなに強くは無い
反魂蝶の数も、言うほど多いものでは無かった
(戻ってきたら一発殴ってやるわ!)
倒れた椛を見ながら、霊夢は誓った