「河童がいるならコレは欠かせないよな」
「胡瓜ですか?それ」
「そうだ、あいつらはこれに目がないからな」
手元に持っているのは三本の胡瓜
河童というのは何故か胡瓜を好む
理由は分からない…飽きを知らないように食う
どんな条件でも飲んでくれる便利なあいてむ、という奴だ
ともかくどんな反応をされてもこれで収められるだろう…
河童が今も皿を乗せているのか斬鬼は知らない
「…待て」
「?どうしました」
斬鬼は軽く手を森の奥に振った
すると森からフリルのエメラルドグリーン髪の女が現れた
彼女は手を振りながらこちらに近づいてくる
椛は彼女の事を知っていた
「…雛さん?」
「よ、鍵山雛。厄は集まっているかー?」
「まだその季節じゃないわ…久しぶりね、斬鬼」
雛と斬鬼は握手をしあった
その光景に椛は驚いた
「あれ?斬鬼さんって厄の影響は無いんですか?」
「勝手に散っていくわ…おかげで困るのよ」
「厄が臆病なのが悪い」
「いえ、貴方が強いのが悪い」
険悪な雰囲気では無い
友人として接しているようだ
椛は気になった
「御二方は知り合いなんですか?」
「そうだな」
斬鬼は顎に手を当てて考えるポーズをしている
おそらく会った頃を思い出しているのだろう
「たしかこんなだったような…」
「貴方誇張いれてないでしょうね?」
「無論」
「どっちよ」
「さて、会った頃だが…」
〇
「暑い時は川で涼むに限るね」
斬鬼は下駄と足袋を脱いで傍に置いた
そして河原の少し大きな石に腰掛けると川に足を入れる
ひんやりとした感覚が足に走る
体に溜まっていた熱が足からどんどん冷やされていく
やはり、暑い時はこれに限るだろう
家は断熱は完璧だが、逆に熱を逃がす能力は無い
というか温泉が湧いているので暑い
なんで夏に普段使うのは崖のの上にある家だ
主に接客を担当する場所だ
そこにいると少しはマシになる
デスクワークももっぱらそこだ
とある人が言っていたがどうして俺は夏を基準としなかったのだろうか
よくよく考えると欠陥住宅じゃないか
1番長い夏で1番苦労するってどうなのだろうか
冬は温泉に友人達が入ったりする
熱を外に排出する機構を河童に作ってもらおうか
幸い金と胡瓜があった(と思う)ので頼んでおこう
温泉が湧き出たという興奮だけで作るものではなかった
ちゃんと機能性を持たせないとダメだ…
遠い目で景色を眺めているとなにかが流れてきた
「…なんだあれ」
出てきたのはその言葉だけである
流れてきたのは雛人形だった
カゴに置かれた2人の人形。
意味が分からない
「全部集めてみるか」
斬鬼は立ち上がると水をバシャバシャさせながら人形に近づいた
カゴを持ち上げ、雛人形を観察する
これといって変なところの無い雛人形だ
斬鬼はそれを河原に置いた
後で調べてみようか
「ん?」
川を見るとまた、雛人形が流れてきた
それも先程とは違い結構な数だ
「なんだ?今日はなにか人里であったのか?」
斬鬼は先程と同じように雛人形をカゴごと川から持ち運んだ
人里の方でなにかあって生贄の代わりとか…と斬鬼は考えていた
口減らしならともかく…いや口減らしで雛人形を流すとは?
雛人形に親でも殺されたのか?
〇
「…おかしい」
そう、おかしいのだ
今日流れてくる筈の厄を纏った雛人形が全く流れて来ないのだ
人間達には今日、雛人形を流すように言った筈
流すだけで厄が無くなるならと喜んで引き受けたあの笑顔は嘘だったのだろうか
いや、それはないだろう
「もしかして、引っかかったりして」
私、鍵山雛は川の上流を目指した
途中の草むら等に目を凝らすのを忘れないようにする
もしかしたらそこに隠れているかもしれない
〇
「よし、これで全部だな」
額の汗を拭い取り、目の前の成果を見る
そこには10個程の雛人形のペアがカゴに各々置かれていた
そして先程気づいた事なのだがこの人形、厄が付いているようである
そういえば最近この妖怪の山に入籍した奴がいるらしい
確か秋の神と厄神だった気がする
「…もしかして」
「やっちゃってるわよ」
振り返るとそこに女性がいた
ゴスロリにフリルを付けたその女には厄が濃くまとわりついていた
斬鬼は彼女が最近入籍した厄神だと気づいた
「お前が鍵山雛か?」
「ええ、私が厄神」
「お前さんへの厄を少し俺が纏っちまった」
そう、人形に触れたことによってすくなからずとも厄が付いているはずだ
厄が大量にあると不幸になる
「私に任せて…本当に少量ね」
こんな時に役立つのが彼女だ
厄神は彼女にとって美味い飯のような物だ
逆に言えばそれが無くなれば彼女はいつか消えるだろう
それはないだろうけどな
いつの時代にも不幸体質な奴は必ず居るものだ
雛は手を斬鬼に向けた
すると黒い何かが斬鬼の体から放出され、雛の手に吸い込まれる
「はい、おしまい」
「恩に着る」
「貴方が紅白斬鬼?」
「そうだ」
「そう、これからよろしく」
「こちらこそ」
斬鬼と雛は握手した
〇
「それで、人形からは厄が全て抜けていた、と?」
「そうよ!お腹いっぱいになる、チャンスだったのに!」
「元気出せよ」
「貴方のせいよ!」
こいし並に無意識なって貴方の幻想入りのシナリオが思いつかなーい!