1匹狼の幻想郷帰還   作:回忌

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蒼い狼
現世の


「霊夢…もとい、この場に集まった者達に言うわ」

 

彼女達はとある場所に集まっていた

幻想郷の何処にあるかも分からない不思議な場所

妖怪の賢者が住むというそこは簡単に入る事は出来ない

 

――マヨヒガ

 

そこは幻想郷で最も重要な事が話し合われる場である

様々な代表が集い、全てを決めていく

 

その場に、少女達が集まっていた

 

博麗巫女、博麗霊夢

 

普通の魔法使い、霧雨魔理沙

 

守矢の現代神、東風谷早苗

 

冥界の剣士、魂魄妖夢

 

――そして、隻眼天狗の娘、犬走椛

 

その5人に紫はある事を依頼した

扇子で、口元を隠しながら

 

「…斬鬼の抹殺、それを依頼する」

 

「…どういうこと」

 

霊夢が訳も分からない様子で言う

それは他三人も同じだった

 

ただ、椛は静かに目を閉じて聞いていた

 

「文字通りよ、彼の抹殺

 今幻想郷で起きている事は知っているでしょう」

 

「…人妖問わず、消滅事件」

 

至る所で人と妖が粒子になって消滅する

それは特に目的もなく、防ぎようの無い事象

 

「あれを斬鬼さんが?」

 

妖夢がそう言うと、彼女はこくりと頷いた

 

「そう、過去の怨念か何か知らないけど」

 

「…あれを殺れ、というのか?」

 

魔理沙が帽子の鍔を抑えながらそう言った

生ける伝説と言うに相応しい実力

 

弾幕ごっこについては普通に風見幽香の強化版

 

彼女自身も勝てないと理解している

この幻想郷において誰よりも先に生まれた男

 

 

 

 

 

 

そして先程から目を静かに瞑った椛の父

 

「殺るしか無いわ、対話は不可と思った方がいい」

 

「でも、やる気出ないですよ…」

 

妖夢が項垂れる

勝てる自信が無いのだろう

 

なぜなら、稽古でも勝ったことがないから

 

今まで全敗しており、殆ど殺されかけた

 

それを実践でされたら?

 

気付かぬ間に首チョンパだろう

 

「なら、手を掲げてみなさい」

 

紫は事なげもなく、そう言った

 

「一体何が…」

 

はぁとため息をついた霊夢が、目を見開いたまま固まる

他の三人も異常に気がついたらしい

 

「あの、この煙は」

 

「早苗、アンタの思っている通りだと思うわ」

 

それは、波動だった

厳密に言えば身体…その"人物自身の元"が霧散している

波動はその持ち主の色であり、形である

身体から精神を生成し、死ぬまで吐き続ける

 

それが"急に"無くなればどうなるか?

 

その人物は粒子となって消滅するのである

 

だが、急に無くなることなぞ絶対に無い

 

そう、操りでもされなければ――

 

「…貴方達も死にたく無ければ、依頼を受ける事ね」

 

「分かったわ、殺ればいいんでしょう」

 

「スペルカードルールの通用しない男、か

 何故だか興奮してきたな」

 

「…師と言える斬鬼さんを殺すのは気が引けますが…」

 

三人は引きの意志はあれど、殺すしかないと確信した

だが、それはこの三人

 

 

 

 

 

 

椛は

 

 

事なげもなく

 

 

「帰ります」

 

そう言って、サッと立ち上がった

 

「ちょっと待ちなさい」

 

それを霊夢が大幣を構えながら言う

早苗も大幣を構え、妖夢は居合いの体制に入っていた

椛はそれを見ること無く大剣を振る

 

それはたった一振

 

だが、侮れるそれでは無かった

 

早苗と霊夢の大幣は真ん中から真っ二つに斬れる

妖夢の構えていた刀はベルトが斬られ、自重で落下する

持ち手を持っていたが、鞘は添えていただけらしい

紫の扇子はスパンと斬れた

 

いきなり攻撃されたことに憤り、彼女を睨む

 

「…ッ、いきなり何よ――」

 

だが、それは振り返った彼女の目と顔が止めた

 

感情を全て削ぎ落とした、真顔というソレ

もし写真で撮られたならば生きた者とは思えない

目は深淵の深い黒に染まり、何も写す事は無い

 

「貴女方に"アレ"は殺せない

 そもそも、その前座で死ぬ事でしょうね」

 

「前座!?何よそれ、そんなの居るはず…」

 

「居るのよ、居るの、居てしまうの」

 

紫が、感情を無くした瞳でそういう

 

「"彼女"からの伝言です

 "人間にこれは解決出来ない、これは異変では無いのだから"…だ、そうです」

 

それだけ告げて、椛は何処かに飛んで行った

それを三人はただ見送るだけだった

 

 

時は少し戻りて、妖怪の山

とある会議所にて、話し合いがされていた

 

「斬鬼が裏切ったとなると、処罰は?」

 

「そもそも処罰が出来るかも怪しい」

 

そんな、意味の無い会話ばかりが続けられていた

 

「天魔、多分これ終わらないわ」

 

「だろうな、困ったぞ…」

 

そこで、1人、真ん中に歩み出た者が居た

ゆっくり、ゆっくり、1歩1歩を確実に歩む

 

その流れも水のような動作を持つ人物

 

――紅白舞

 

今回の事件の首謀者の――妻

はっきり言えば、彼女も罪に問われることとなる

そんな中、彼女は歩み出て、こう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面倒なので、こうしますね」

 

瞬間、バッと扇子を広げて回転する

びちゃびちゃッと辺りに舞う血飛沫

それはやけにゆっくりで、水のように直ぐに落ちない

 

その中で、くるりくるりと、彼女は舞っていた

 

「…本性現したな」

 

「どうでしょう、そうでしょう?貴女には分からない」

 

「ハァッ!」

 

文が風を操り、切り刻んとする

室内で風をゴウと吹かせれば建物は吹き飛ぶだろう

だが、彼女は風を操る事が出来る

それにより、目標に殆ど確実に当てられる

 

…だが、今回は相手が悪かったのだろう

 

「――ハッ」

 

見惚れる様な舞

だが、文からすれば風が己の制御下を離れて自立しているようにしか…

 

そして、天魔と文に突きつける

 

「天月ッ――アグッ」

 

「グワッ!」

 

2人の胸に正確に突き刺さる風の槍

それは2人が倒れる時に霧散する

 

そして、舞は生き残りの1人に告げた

 

深淵の様な暗い瞳をして、舞を見る彼女に

 

 

 

 

 

「さぁ、貴女に彼を殺せますか?」

 

「――…」

 

彼女は何も答えなかった

ただ正座して、身動ぎせずに舞を見ていた

舞はクスリと笑い、どこかに消える

 

椛は、いつまでも、異常を感じた番人が来るまで動かなかった

 

 

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