ゲーム舐めんな現実世界! 作:かりん
僕は始祖だ。
平民でありながら、高い魔力を持ち、継いでいくもの。新たな貴族。
早期に見出された僕は、必死になって勉強した。あらゆる物を手に入れる為に。
ぬるま湯で暮らしていた貴族になんか負けるもんかって気持ちでいっぱいだった。
試験だって、ほぼほぼ満点取ったはずだった。
けれど、鮮やかに飛び越していく存在がいた。
それがグリーディだ。
15歳にして、既に領地に多大な益を出し、そして画期的な研究に手を伸ばす神童。
ただ、争いごとは苦手らしい。その割には武術でもトップらしいが。
金で成績を勝ったという事はあり得ない。
それが出来るなら、殿下が首席を取っている。当然。
殿下が主席でないなら、それは実力なのだ。
やはり線の細いナヨナヨとした男なのだろうか。
入学式の挨拶の時、現れたのは背が高く、ほっそりとはしているが筋肉もしっかり付いている男だった。美しいが、不思議と気品というより親しみやすさが滲んでいる。
取り繕う事なく言えば、なんとなく高貴というより粗野で平凡だった。
グリーディは堂々とカンペを出し、固まった。
情けないと思ったが、グリーディはカンペを握りつぶした。
そして、カチコチになって言った。
「貴族の義務は戦うことですが、俺は戦えません。度胸がなくて、今も頭が真っ白で、何を言っていいかわかりません」
どよめきが起こる。
でも俺は見直していた。事前に用意した取り繕った言葉ではなく、自分の言葉で喋るつもりなんだ。
「なので、今まで聞いた中で一番心に残った演説をこの場で披露したいと思います」
は?
そして、グリーディは拳を振り上げた。
「諸君、私は戦争が好きだ!」
もっと大きなどよめきが起きる。
争い嫌いって言ってなかったか。
そもそも、入学式の挨拶でそれはなんなんだよ。
「諸君 私は戦争が好きだ
諸君 私は戦争が好きだ
諸君 私は戦争が大好きだ!!!」
それは確かに名演説だった。
確かに、一生忘れないと思った。
正直にいうと痺れた。
でもそれ、吸血鬼の演説だったけどな!!!
変人という噂はまごう事なき事実だったようだ。
こうして、全学生の注目を集めに集めた男は、教室で教師に募られて素直に涙していた。
訳のわからない男である。ふざけているんだろうか? 恵まれているから、少しぐらい羽目を外しても許されるって? だとしたら俺は許せない。
小さくなっているかと思えば、問題を当てられたらスラスラっと答える。
そして可愛いというより凛々しい綺麗な女性が迎えに来た。
さすがはお貴族様、女を侍らすのに余念がないらしい。
ソードという貴族は顎が外れるほど驚いていた。
後日聞いた話によると、フラウはグリーディの前でだけ可愛いらしい。
美人で、自分にだけデレる貴族のご令嬢……いいな。
全てに恵まれた男。
負けたくなくて、こいつの全てを奪いたいと思った。思ってしまった。
そうして、食らいついて、気絶させてしまって。
グリーディはますます変になっていた。
いつも楽しそうで、目が離せなくなると同時に、胸の中にはチクチクしたものが刺さるのを自覚せざるを得なかった。
ああ、欲望という名前は俺の方が相応しい。
グリーディの富も。権力も。可愛いお嫁さんも。人望も。ユーモアも。全て、全てが欲しい。
後日、吸血鬼の討伐の演劇が王都で大ヒットしたけど、一番人気はやっぱりグリーディの演説をそのまま採用したシーンだった。