煙の少女のヒーローアカデミア   作:ジト民逆脚屋

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とりあえず、今週のヒロアカ読んでオギャバブってなって、梅干しおじさんへの殺意が天元突破


時間軸やイベント前後については、拙作の独自設定ということで一つ。
また、アンケートは本日21時を締め切りとします。


三羽烏

「以上で、カウンセリングは終了ですが、無理はしないようにね?」

「うーす」

 

肩が凝る。数日に渡って続いた拷問(カウンセリング)が、漸く終わると煙羅は溜め息を吐いた。

 

「本当に無理はしないようにね。いや、本当に」

「あのさ、念押しし過ぎじゃね?」

「心配症は治療に携わる者の職業病さ」

「そっすか」

 

煙羅は手を降るカウンセラーに頭を下げ、退室すると凝りきった肩と首を回した。

関節の鳴る独特な音を自分の中に聞きながら、煙羅は自身の髪の毛先を見る。

 

「ストックが少ないな」

 

煙羅の個性である煙は、自身を煙に変えるだけではなく、外部から煙を摂取して溜め込む事で、自身の質量以上の大きさや形に変化する事が出来、欠損箇所の再構築も可能な個性だ。

しかし、それらを行うには自身の内に、予め煙を貯蔵しておかなければならず、欠損や損耗が続けばストックは当然減る。

そして、ストックが無くなれば、自身だけとなり、それも無くなれば死ぬ。

ストック残量は、煙となっている髪の毛先で分かる。

煙羅の現在の最大ストック量は、煙羅四人分。大体、煙草一カートン(二十本入り十箱)で、煙羅一人分のストックを貯蔵出来る。

しかし、今の煙羅のストック量は一人分も無く、ストックの補充も難しい。

 

「さて、どうしたもんか」

 

弱々しい揺らめきの毛先を見ながら、煙羅は廊下に備え付けてあるベンチに腰を下ろす。

弱い自身の揺らめきに釣られて、思わずポケットを探るが、そこには禁煙用のガムしかない。

 

「ヘイリスナー、校内は基本飲食禁止だぜ?」

「おう、プレマイ先生じゃん。今日もトサカキマッてんな」

 

英語教師のプレゼントマイクが、逆立てた某南国の鳥を思わせる髪を撫で付けながら、煙羅の隣に座る。

 

「この俺のトレードマークだからな。煙堂リスナーはどうしたよ? トレードマークがVery weakじゃねえか」

「ストック切れ、からっけつのガス欠状態な訳よ。どっかで補充しねえと、何も出来ないからマジでまずい。最悪除籍コース」

「イレイザーも流石にそこまではしねえって」

 

確かに、相澤ことイレイザーヘッドは、ヒーローに足る資格と覚悟が無いと判断すれば、容赦無く除籍処分するが、個性の都合上の事であれば、何らかの方策を指導する。

教師として、ヒーローの先達として当然の事だが、煙羅は違った。

 

「……どうにもなぁ、最初のイレ澤先生の目がアタシを攻撃してきた連中と、一緒の目しててさ。分かってんだけど、やっぱりさ……」

「Oops……、何やってんだイレイザー……」

 

相澤にその意思が有ったのか、マイクはそうではないと知っているが、煙羅達は違う。

相澤が初期に向けていた品定めの視線を、煙羅達は嘗て向けられてきた敵意の目と受け取ってしまった。

 

「いや、信じてんだよ? USJでアタシ庇ってくれたし、そんな事してくれた大人は出久と勝己の両親とうちのババアと、兵頭先生(生徒指導教員)だけだったし……」

「うぅん、リスナーの闇がVery deep! しかし、それはヒーロー以前に人として当たり前の事だぜ? 煙堂リスナー」

「だよなぁ……」

 

マイクも、事前に煙羅の受けた迫害と、それらから守ってきた爆豪と緑谷達の話は聞いていた。

本来、そういった事から子供を守るのが、大人の役割の筈だ。しかし、煙羅はそうではなかった。

学校や地域、果ては一部のヒーローまでもが、彼女に対して害意と敵意を与えてきた。

そんな劣悪な環境の中で、よく歪まず間違えずにここまで来てくれたと、マイクは煙羅を守ってきた二人と家族達に、感謝と尊敬を感じた。

 

「あ、あと、鳴羽田に居た頃にヴィジランテの人が助けてくれたな」

「Oh! マジかよ」

「そうそう、いきなり〝黒腕〟の娘は死ぬべきだって、ヒーローが家に突っ込んできてさ。そん時に刀背負ったあの人が助けてくれた」

「んんん! The darkness is deep!」

 

本当にマイクは頭を抱えたくなった。

ヴィジランテはヒーローの先祖と言える存在だが、現行制度が整備された今では、仮想敵とも言える存在になってしまっている。

しかも鳴羽田は、ヒーロー、ヴィラン、ヴィジランテが入り交じれて一つの大事件に発展した街で、相澤の縄張りでもあった。

人を助けるヒーローに襲われ、ヒーローではないヴィジランテに助けられた。

今の社会の闇の部分、煙羅の口からはそれが簡単に湧いて出てくる。

 

「なあ、プレマイ先生」

「どうした? 煙堂リスナー」

「アタシさ、その人にお礼も何も言ってないんだ。その人が今、何処に居るのかも分かんないんだ」

「OK、リスナー。俺も探してやるさ」

 

ヴィジランテが拠点や活動範囲を変える事は、あまり無い。これはヴィジランテが正規のヒーローの様な、バックアップが無い一般人であり、資金や装備、能力的にも慣れ親しんだ拠点の方が安全かつ、確実な成果を挙げられるからでもある。

 

 

――鳴羽田はイレイザーの縄張りだったから、あとで聞いてみるか――

 

 

「バカ煙」

 

そんな事をマイクが考える横、普段通りのしかめっ面で、爆豪が保健室から顔を出した。

 

「バカって言った方がバカなんだぞ? バ勝己」

「だったら、テメーもだろうが!」

「アタシ、お前よりテストの点良いもーん」

「ンダトゴルアアアア!」

「ああ、もう。かっちゃんも治ったばっかりなんだから、大人しくしなよ。煙羅さんもかっちゃん挑発しないの」

「出久が言うならやめるー」

 

爆豪の怒鳴り声に飛び出してきた緑谷が、爆豪と煙羅を諌める。二人と合流した煙羅からは、先程までのしんみりした雰囲気は消えていた。

 

「HEY、爆豪緑谷ダブルリスナー」

「あ?」

「あ、マイク先生」

「……大事にしろよ?」

「……わかっとるわ。おら、帰んぞ」

「わ! 待ってよかっちゃん」

「んじゃ、プレマイ先生もイレ澤先生によろしくー」

「OK!」

 

手を振る煙羅に、マイクも手を振り返す。

寮への帰り道を行く三人の後ろ姿に、マイクは嘗ての自分達を幻視した。

自分が騒ぎ、相澤が嫌そうな顔をして、そして……

 

 

――頼むぜ、イレイザー――

 

 

自分達はもう、一人が居ない。

願わくば、あの三人が欠ける事無く、ヒーローになる姿を見たい。

 

「その為には、少しでも不安を減らさねえとな」

 

まずは、そろそろ目を覚ましただろう相澤に、例のヴィジランテについて問うてみよう。

そして、大人を信じても大丈夫なのだと、あの三人に教えてやらねば。

マイクはサングラスの位置を正し、一つ笑みを作ると、目的の為に立ち上がった。

 

しかしマイクは、このヴィジランテが見付からない可能性を、この時点では考えていなかった。

ヴィジランテという非合法の存在、そんな危険極まりない行為、きっともう止めていて真っ当に生きているか、もしかすると自分達と同業になっているかもしれない。

そう思ってしまった。

 

最悪の、道を踏み外しているという可能性を、マイクは除外してしまった。

その結果、煙羅は恩人との再会を果たす事になる。

最悪の再会を。

 

 




煙羅に関わったまともな大人一覧
煙羅母
煙羅祖母
爆豪夫妻
緑谷母
兵頭先生

ステ…………、スタ…………、とあるヴィジランテ


約十五年程の人生で、まともな大人はこれだけ

煙羅コスチューム

  • 軍服風
  • 作業着風
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