煙の少女のヒーローアカデミア   作:ジト民逆脚屋

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ヤバい。かっちゃんに柔軟剤投与し過ぎたかも


どうしようもない現実

煙堂煙羅は、不良である。素行も言動も、授業態度も悪い。

交友関係もそう広くなく、親しいとはっきりと言える者も少ない。良く言えば一匹狼、悪く言えば孤独。

煙羅本人も、その現状に憂いは無く、寧ろ煙羅が抱えているものを考えれば、至極当然の事だ。

 

「出久ー、ペース落ちてるぞー。ほら、後ろから勝己が来てる」

「え、ちょっ! 待ってかっちゃん!! 爆速ターボは反則……!」

「うるせえ! 死ねぇ!」

 

爆発音と悲鳴が木霊する夕方の砂浜で、煙羅はぼんやりとボロボロのベンチに座り煙草を吹かす。

爆豪と緑谷、ヒーロー志望の二人の特訓を眺めながら、煙羅は煙草を携帯灰皿に押し付け、次の煙草を手に取る。

 

「……未成年喫煙は感心しないな、煙堂少女」

「んだよ、八木さんじゃん。仕事上がり?」

「あ、うん。って、喫煙続行するのね、煙堂少女」

「ここにはアタシら以外来ねえし、八木さんはチクったりしねえし」

「まあ、効果的じゃないし、君の個性的にも必要な事だしね? でも、未成年喫煙を、ヒーロー関係者として見過ごす訳にはいかない」

 

痩せぎすの骨と皮しかない、そんな弱々しい姿の男。彼はベンチの空いたスペースには座らず、立ったまま煙羅と同じく砂浜を見ていた。

名を八木俊典と名乗った男は、どうやらとあるヒーローの事務所で働いているらしく、つい最近三人の特訓を目撃し、それから時折ふらっと現れては、監督役と言って三人の様子を眺めている。

 

「これは没収だよ、煙堂少女」

「しゃーねえな。八木さんに見付かったのが運の尽きか」

 

そう言うと、煙羅は素直に八木に煙草を手渡し、八木はそれを受け取ると、一度頷いて自分のポケットへしまった。

 

「潰さねーの?」

「潰さないよ。これは君のお金で買ったものだからね。君が成人するまで、私が預かっておくよ」

 

優しいが強い意志と確かな力を感じる瞳に、煙羅はおどけた様に肩を竦めて、咥えていた煙草を携帯灰皿に押し付けた。

 

「かっちゃん!! 爆破ダメだってば!」

「うるせえ! くたばれ!」

「おーう、やってんなあ」

「……何時見ても、手加減無しだね」

「バ勝己は何時だって本気で、妥協とかは滅多にしないから」

「個性を使うのは、いただけないけどね」

「そこは八木さんが黙ってれば問題無い」

 

派手な爆発音が響き、爆豪の喚き声と緑谷の抗議が何度か交わされた後、二人が戻ってくる。

 

「二人共、お疲れ」

「あ、八木さん」

「なんだ、来てたのかよ」

「ははは、まあ一応監督役だからね」

「だったら毎回来いよ」

「痛い所を突かれた……。あ、そうだ! 差し入れ、どうかな?」

 

爆豪の指摘に、冷や汗を流す八木が差し出してきたのは、有名チェーンのコンビニの袋だった。

 

「皆、中学生の食べ盛りだし、体も動かしてるからお腹空くだろ?」

「有り難う御座います。八木さん」

「構わないさ、緑谷少年。ほら、爆豪少年も辛いの好きだったろ?」

「けっ、この握り飯ハズレのやつじゃねえか」

「え、そうなの?」

「勝己、差し入れに文句言うなよ」

「うっせぇ!」

 

缶コーヒーのプルタブを押し上げながら、煙羅がそう言うと爆豪は文句を言いながらも、〝激辛焼豚おにぎり〟のパッケージを開ける。

 

「……ゴミ箱」

「はい、ゴミはこっちね」

「ねえ、八木さん。これなに?」

「煙羅さん、それなに?」

「おい、煙女。それなんだ?」

 

煙羅が手に持つ缶コーヒー、それ自体に奇妙な点は無い。円筒形のアルミで出来た入れ物で、飲み口から香る湯気と匂いは、間違いなく缶コーヒーのものだ。

だが、その存在に疑念を持たせるのがパッケージだった。

 

〝まロい缶コーヒー ~し、新庄君、こんな所で大胆だね~〟

 

「え、これ飲んで大丈夫なやつ?」

「いや、私もちょっと急いでたから、確認しなかったけど……、えぇ……?」

「おい、煙女ぁ。ちょっとでも味がおかしかったら、そいつに飲ませろ」

「かっちゃん、ちょっと失礼過ぎるよ」

「いや、妙なものを人様の子に飲ませる訳にはいかない。私が飲もう」

 

八木が代わりに自分が飲もうとしていた、未開封の缶コーヒーを煙羅に手渡し、まだ口をつけていない謎パッケージの缶コーヒーを煽る。

そして止まった。

 

「…………」

「八木さん?」

「……君達、これは買わない方がいいぞ」

「……だろうな」

 

缶コーヒー片手にガタガタと震える八木の口元に、何か赤いものが見えたのは、気のせいだと三人はそう思った。

 

「……それで話は変わるけど、三人はどういうヒーローになりたいんだい?」

「んなもん決まってる。俺はオールマイトを超えるヒーローだ」

「僕は、一人でもいいから多くの人を助けたいです」

「…………」

「煙堂少女、君は……」

 

爆豪と緑谷の答えに、目を伏せたまま答えない煙羅に、八木はそっと問い掛ける。

その声には単純な問いかけの他に、何か願いの様なものがあった。

 

「アタシは……」

「おい、バカ煙。お前の事情なんざ、なんも理由になんかならねえ。クソモブ共の言ってる事なんざ無視しろ」

「かっちゃん」

「テメーは黙ってろデク」

 

爆豪は何も答えない煙羅を睨み付ける。

煙堂煙羅が抱えている事情について、爆豪も緑谷も知っている。知っていて尚、二人は煙羅と一緒に居るのだ。

 

煙堂煙羅は二人を裏切りたくない。

煙堂煙羅は二人と一緒に居たい。

煙堂煙羅は爆豪勝己とヒーローになりたい。

煙堂煙羅は緑谷出久とヒーローになりたい。

煙堂煙羅は緑谷出久と一緒に居たい。

 

だが、それを彼女の抱えている事情が、不可能に近い程に困難にしている。それは覆しようがなく、消し去る事すら出来ない。

それは煙堂・煙羅という少女が、どれ程に望んでも消えずまとわりつき、絶えず彼女を苛んでいる。

 

「いいか、煙堂。今更逃げようなんざ考えんな。お前は俺達とヒーローになんだよ」

「うん、なろうよ。かっちゃんと僕と煙羅さんの三人でヒーローに」

「アタシは……」

 

なれるだろうか、ヒーローに。

私は……。

 

「煙堂少女」

「……なに、八木さん」

 

優しくも強い意志の籠った目で、八木は煙羅を見つめ、小さく息を吸い込んだ。

 

「一ヒーロー関係者として、そしてこの最近君達を見てきた者の言葉だ。ヒーローというのはなる事は非常に難しい。ヒーローとそうでない人の間には非常に深い谷がある。そして、その谷を越えられるのはほんの一握りの者達だけだ」

 

だが

 

「君は、いや、君達はその谷を飛び越え、更にその先に行ける! 煙堂少女、諦めるな。君は越えられる人間だ」

 

越えられるのだろうか。なれるのだろうか。

 

煙堂煙羅という少女は、ヴィランの娘なのに。




煙堂・煙羅(えんどう・えんら)
個性¦煙
体を煙に酷似した物体に変えられ、溜め込んだ煙の量によって変化させる体の形が変わる。
また、この個性は母親と父親の個性との複合個性でもあり、父親の個性により体の一部分だけなら金属並みの強度になれる。(拳なら拳だけ、足なら足だけ、胴なら胴だけ)

煙堂頭¦頭は良い。とりあえず雄英模試A判定は取れる
煙堂髪¦黒のワンサイドヘアー、毛先が煙となって揺らめいている。
煙堂目¦吊り目で目付きは悪い。緑谷を見つけるのは世界最速レベル
煙堂髪¦黒髪だが、毛先が煙の様になっている
煙堂腕¦強い
煙堂足¦しっかりしてる
煙堂胸¦ちゃんとある
煙堂尻¦まロい

煙羅コスチューム

  • 軍服風
  • 作業着風
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