1話 最悪の嵐
8月30日 9:00 太平洋フィリピンサマール島沖50km
空母群(第7護衛群)は警戒地であるサーマル沖に到着した。サーマル沖は太平洋戦争のレイテ沖海戦時戦場になっており今も日米両艦が数多く沈んでいる。
だが今はそんな影もなく静かな海であり、激しい戦闘の跡など何処にも見当たらない。
「しょうかく艦長。佐世保基地から連絡です。サーマル沖では低気圧が発達しているようです。」
「そう。じゃあこれ以上ここにいると危険ね。サーマル島に避難しましょう。」
「そうしたいですが…………。」
「どうしたの?」
「さっきフィリピン海軍から連絡がありましてフィリピン全土の港は全部大波で入港できないっていう連絡ついさっき入ってきたばっかなんですよ。」
「ええ?そんなにひどい波なの。じゃあどうしましょう?」
「日本に戻るしかありませんね。」
「そうですね。仕方ありません。全艦に通達。取り舵一杯!!単縦陣全艦19ノット。北に向かいます。」
「はい。了解です。」
「とりあえず低気圧を抜けましょう。」
空母群は低気圧を抜けるため北に向かった。
「佐世保基地に連絡。“我第7護衛群帰投する”」
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艦隊は低気圧を避けようとしたが低気圧は艦隊についてくるように移動してきたため全艦大きく揺れていた。
14:00 フィリピン海 しょうかく艦内
「揺れが大きくなって来ましたね。」
「そうですね。各艦との距離700mにしてください。」
「わかりました。」
「あと全艦に通達。総員荒天準備、波浪に注意·警戒せよ。」
「了解。」
だが各艦は、しょうかくからの連絡より早く準備をしていた。
そのあとまた波が強くなっていき艦は揺れが大きくなり各艦内にいる艦長他、妖精も立っていられないほどになっていた。
「たかお艦長大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないは、これ船酔いだわ。ちょっとお手洗いに行ってくる。」
「トイレ汚くしないで下さいね。」
「それ今いうことじゃないだろう!!」
たかおと副長妖精のくだらない話をしている中でも艦隊は進んでいた。しかし
速力は大幅に落ちており5ノットにも届いておらず進んでいるとは言いがたかった。
その後も艦隊は佐世保へ向け進んでいた。各艦長ともかろうじて見える味方艦を確認するため、艦橋に上がり指示を出していた。
「んー。やっぱりちょっとしか見えないですな。」
「たかお艦長、しかありませんよ。こんなこともありますからね。」
「確かにそうだ。しかし、こんなときは航海用レーダーが頼りだからな。」
「そうですね。航海用レーダーがなければ大変なことになりますから。」
ふざけるように副長妖精は話していたが、冗談が現実となるとは思っていなかった
「たかお艦長!」
艦橋に飛び込んできたのは普段CICにいるはずの砲雷長だ。砲雷長はイージス艦の全火器を管理する役職だ。
「どうした?砲雷長。」
「水上レーダーと対空レーダー、通信機器が故障し探知不能です。」
「なんだと‼」
「ちっ。味方艦に発光信号で連絡しろ。」
たかおは味方艦にレーダーが故障し探知ができないことを伝えるように命令したが帰ってきたのはもっと悪い知らせだった。
「味方艦を確認できません。」
「どういうことだ?航海用レーダーに映っているだろ。」
「さっきまでは味方艦の探照灯の光で確認できたのですが。」
これは艦隊のたかお以外の艦がもっとひどい状況に陥っており、レーダーだけではなく艦内の電気まで止まってしまっている為である。
「レーダーがなぜ、いきなり故障するんだ。」
「私にはわかりません。」
その言葉に艦内は静かになったがそれも航海長の声でかき消された。
「航海用レーダーも故障。味方艦を探知できません!!」
たかおは、信じられないという顔をした。確かに、たかお型イージス艦は建造させてから10年以上足っているとはいえ、つい最近、近代化改装したばかりでレーダーも最新型のため故障するなんてありえないはことだからだ。それもいきなり全レーダーが一気に故障したのだ。
それにイージス艦であるたかおや補給艦である明石なら電気がきれることはまだわかるが、原子力空母であるしょうかくやずいかくが艦内の電気がきれることなどありえないため、たかおはかなり焦っていた
第7護衛群の船員の中でこの緊急事態のせいでこの先起きることを予測できたのは誰一人もいないだろう…………