佐城沙知はまだ恋を知らない   作:タトバリンクス

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二十八話 『どこに魅力を感じるの?』

「男の子って、女の子のどこに魅力を感じるの?」

 

 ある日の放課後。僕は沙知と勉強会をしていた。といっても沙知は自分のベッドに横になっているだけだが。

 

「いきなりどうしたの?」

 

 毎度毎度、突拍子もなく、いきなりそう聞いてきた沙知に僕は困惑してしまう。

 

「いや~、ちょっと気になっちゃって」

 

 彼女はゴロンとうつ伏せに寝転がりながら、脚をブラブラとさせ僕を見つめる。

 

「頼那くんがあたしのどこに魅力を感じるのかは知っているんだけど、他の男の子ってどうなのかな~って」

 

 口元に指を当てながら、沙知は首を傾げる。どうやら純粋に疑問に思ったみたいだ。

 

「あたし的には恋を知りたいわけだし、他人の意見と言うか、フェチのサンプルデータは欲しいんだよね」

 

「いや、サンプルって……」

 

 まあ、確かに恋を知りたい彼女からすれば、色んな人の好みを聞いてみたくなるのも頷ける。

 

「なるほど……話してもいいけど、テスト勉強はしなくて良いの?」

 

 僕と勝負するとか言っていたくせに、今のところ勉強はしていない。しかも彼女のベッドで寝転んでいるだけだ。

 

「ん? しなくても点は取れるし、あたしなら少し勉強するだけで、ほぼ満点取れるし……」

 

 沙知は僕の質問に当然のように答える。さも当たり前のようにそう言うものだから僕は唖然とするしかなかった。

 

「相変わらずすごいね……沙知は」

 

「えへへ、まあね~あたし、天才だから!!」

 

 僕が褒めると沙知は笑顔でドヤ顔を決める。めちゃくちゃ舐められている気もしたが、そんな彼女も可愛いので、どうでもよくなった。

 

 それよりも沙知に恋愛感情を知ってもらうほうが重要だ。

 

「まあ、そんなことよりさ、男の子が女の子のどこに魅力を感じるか教えてよ」

 

 沙知はそう言うと、四つん這いで僕の方に近付いてきた。

 

 今日の彼女の服装は薄手のワンピーススタイル。そんな格好で四つん這いになっているものだから、つい彼女の豊満な胸を見てしまう。

 

 なんだったら服の隙間から、彼女の黄色色の下着が見えてしまっている。

 

 それどころかベットの高さと相まって、僕の顔の位置がちょうど沙知の胸元辺りになっている。

 

 そうなると自然と彼女の胸元の深い谷間が目に入り、僕の視線は釘付けになってしまうわけで。

 

 やっぱり、デカすぎる。威圧感というか、圧倒される感じだ。というか、沙知は無警戒にも程がある。

 

「頼那くん?」

 

 僕は彼女の呼びかけにハッと我に返る。そして慌てて彼女の胸元から視線を逸らした。

 

「え~と、そうだな~」

 

 僕は誤魔化すように呟きながら、沙知の質問の答えを考える。

 

 手っ取り早く今まで自分の友人と話した会話を思い返してみる。

 

 結構、この手の会話は中学時代でもしていたから、何かしら答えられるはず。

 

「僕の友だちだと、脚が綺麗な子に惹かれるって言ってたよ」

 

「脚? どうして?」

 

 沙知は不思議そうに首を傾げる。この辺はフェチ的な要素が関係してくるので、なかなか説明が難しい。

 

「筋肉の付き具合とか、脚の太さとかが人によって魅力的に見えるらしいよ」

 

「ふ~ん、そうなんだ……脚か~」

 

 沙知は自分の身体を起き上がらせると、ベットの上に座る。すると、今度は僕の顔の近くに彼女の脚が来る。

 

 目の前に沙知の綺麗な脚が。僕は思わずゴクリと唾を飲んでしまう。

 

「頼那くんはあたしの脚って魅力的に見えるの?」

 

 沙知は自分の脚をまじまじと見つめながら、僕にそう聞いてくる。

 

 僕は彼女の脚から視線を離すことができないまま、頷いてみせた。

 

「う、うん……とても魅力的だよ……」

 

 少し肉付きが良くて柔らかそうな彼女の脚。ニーハイで締められているせいか、肉感が出て余計に魅力的に見えてしまう。

 

「どんな風に魅力的?」

 

「ど、どんな風にって……とっても柔らかそうで、しなやかで……つい触ってみたくなるというか……」

 

「へえ~」

 

 なんだこの質問は……僕は困惑してしまう。沙知的にはただ単に気になったから聞いただけなのは分かる。

 

 ただ、端から見たら僕がとても変態的なことを言っていて、かなり恥ずかしい。

 

「頼那くんって傾向的に女の子の柔らかい部分に惹かれるよね」

 

「うっ……」

 

 沙知の言葉に僕は言葉を詰まらせてしまう。確かに僕は女性の柔らかい部分に魅力を感じる。それは事実だけど……。

 

 しかし、それを面と向かって言われると、さすがに恥ずかしいものがある。

 

「確かにあたしの脚って柔らかい感じがあるよね」

 

 ペチペチと自分の脚を触りながら沙知は納得するように頷いてみせる。

 

「柔らかいというか……ムチムチしてる?」

 

 彼女の言葉に僕はドキッとする。沙知が自分からそんなことを言うなんて思わなかったから。

 

「って言ってもあたしの場合、運動しないから肉が付いちゃうんだよね」

 

 沙知はそう言うと、自分の脚に付いた肉を摘まむ。そしてそれをムニムニと弄り始めた。

 

 確かに彼女は運動をあまりしない。というかできないから、足もそこまで筋肉質じゃない。

 

「まあ、男にはムチってしたタイプの女の子が好きな人もいるから……」

 

「それって頼那くんでしょ?」

 

「うっ……まあ、否定はしないけど……」

 

 僕の返事に沙知はクスクスと笑っている。そんな彼女の笑みを見ていると、なんだか恥ずかしくなる。

 

「でも柔らかいものが好きっていう感覚、あたしも分からなくないかな?」

 

「沙知も?」

 

「うん、この部屋の中見たら分かるけど、ぬいぐるみとか多いし、柔らかいの好きだよ」

 

 彼女の部屋を見渡すと、至る所に動物のぬいぐるみなど柔らかそうなものが置かれている。

 

 沙知は自分の近くにあったキリンのぬいぐるみを抱き締めると、顔をスリスリと擦り付ける。

 

 その姿はとても可愛くて、愛らしい。そんな沙知を見て僕も癒された気分になる。

 

「やっぱり、女の子って可愛いものとか柔らかいものが好きなの?」

 

「う~ん、どうだろう、あたしに一般的な女子の感覚は分からないけど」

 

 沙知はそう言いながら、ぎゅっとぬいぐるみを抱き締める。

 

「こういう風に抱き締めていると、安心できるのは事実だよね」

 

 沙知はそう言いながら、ぬいぐるみに顔を埋める。まるで甘える子供みたいに見えた。

 

 正直、こうして彼女に抱き締められているキリンのぬいぐるみが羨ましい。

 

「まあ、それには理由がちゃんとあるんだけどね」

 

 沙知はぬいぐるみから顔を離し、僕のほうを見る。そしてそのまま話を続けた。

 

「人間は柔らかいものに触れると、オキシトシンが分泌されるからね」

 

「オキシトシン?」

 

 聞き慣れない言葉だったから、僕は首を傾げる。そんな僕を見て沙知は説明してくれた。

 

「簡単に言うと幸せホルモンって呼ばれるもので、それが脳から分泌されると、ストレスの軽減や精神安定の効果もあるんだ」

 

「へ~そうなんだ」

 

「寝るときに抱き枕してたり、ぬいぐるみを抱いてたりする人が多いでしょ? あれもそういう理由」

 

「なるほど……確かに」

 

 沙知の説明に僕は納得する。確かに僕も彼女と同じようにぬいぐるみとか枕を抱き締めると、落ち着く感覚に覚えがある。

 

「って考えると、頼那くんみたいに柔らかそうな女の子が好きな人って、女の子に安心とか求めているのかもね」

 

「どうなんだろう……?」

 

 そう言われても、いまいちピンと来ない。確かに沙知みたいな女の子はドストライクだけど。

 

 安心感があると言われると、首を傾げる。むしろ沙知といると、ドキドキしてばかりな気がする。

 

 異性的なドキドキもあるけど、危なかっかしくてハラハラさせられることもほうが多い。

 

「なにその反応?」

 

「いや……沙知は見てて、心配になることが多いから……」

 

 沙知にジト目を向けられ、僕はボソッと呟く。すると彼女はムッとした表情になった。

 

「それじゃあ、まるであたしが心配にさせるようなことばっかりしてるみたいじゃん」

 

「それは……うん……その通り……」

 

 沙知の言葉に僕は苦笑いを浮かべながら、素直にそう答える。

 

 そんな僕の返答に沙知はぷくっと頬を膨らませる。

 

 こういうところは子どもっぽいというか、可愛らしい。見た目はかなり大人っぽいのに、基本中身は子ども。純粋過ぎるが故の危うさが彼女にはある。

 

「むう……そう言われると、否定はしづらい、あたしってデンジャラスな女だからね」

 

 沙知は自分でそう言って、自分自身で頷いている。

 

「さすがに何言っているか意味が分からないんだけど」

 

 僕はそんな沙知にツッコミを入れると、彼女は楽しそうに笑う。そして僕の隣にちょこんと座ってきた。

 

「まあまあ、気にしないで話を戻そ? それで?」

 

「うん、えっと……男は女の子のどこに魅力を感じるかの質問だよね?」

 

「そうそう」

 

 僕は改めて沙知にそう尋ねる。彼女はコクッと頷きながら、僕の方を見てきた。

 

「そうだな……あとは……」

 

 もう一度自分の記憶にある友だちとの会話を思い出してみる。すると、とある意見が浮かんできた。

 

「ギャップかな」

 

「ギャップ?」

 

 僕の答えに沙知は首を傾げる。僕は頷きながら、彼女の質問に答えた。

 

「うん、例えば沙々さんって、沙知と同じですごく美人で、大人のお姉さんって感じだけど」

 

「うんうん、あたしの自慢のお姉ちゃんだよ!」

 

 沙知は自分のことのように嬉しそうに頷きながら答えてくれる。そんな姿を微笑ましく思いながら、僕は話を続けた。

 

「でも、機械やロボットのことになると、子どもっぽいというか、無邪気になるっていうか……見た目の印象から、一気に幼い感じになるんだよね」

 

 前に沙々さんから発明品を見せてもらったときのことを思い出す。あのときの沙々さんはすごく楽しそうに発明品について語っていた。

 

 そのときの姿があまりにもカッコイイイメージの沙々さんとはかけ離れていて、新鮮だった。

 

「なるほどね~、お姉ちゃんってば機械に変な拘りがあるからね~」

 

「そういうの見ると、人によっては魅力に感じるんじゃないかな?」

 

 僕がそう言うと、沙知はう~んと唸る。そして何か気づいた顔をした。

 

「お姉ちゃんを例に出したってことは、頼那くんはお姉ちゃんのギャップにやられちゃったってこと?」

 

「いや、印象には残ったけど、そういうところは沙知とそっくりだなって……」

 

 沙知の返しに僕は苦笑いしながら答える。下手に口ごもると、変な誤解をされそうだったから。

 

「アハハ、双子の姉妹だからね~」

 

 沙知は僕の答えに納得がいったのか、楽しそうに笑っている。良かった。変な誤解とかはしていないようだ。

 

「なるほどね~ギャップか……確かにそれは言えてるかも」

 

 沙知は腕組みしながら、コクコクと頷く。

 

「まあ、あくまで一つの意見だけど、参考になった?」

 

「うん、まだ聞きたいけど、頼那くんもそろそろ勉強したいよね」

 

 机の上に置かれた教科書をパラパラと捲りながら、沙知は答える。確かに彼女の言う通り、そろそろ勉強に戻りたい。

 

「そうだね」

 

「よし、それじゃあ、色々と教えてくれたお礼にあたしが頼那くんに勉強を教えて進ぜよう」

 

 沙知は得意げな顔で、僕に向かって胸を張る。そんな彼女の姿に僕は思わず笑みをこぼしてしまう。

 

「なにその口調……それじゃあ、お手柔らかにお願いします」

 

「はいは~い、あたしに任せなさい!!」

 

 沙知は嬉しそうにそう返事をすると、教科書を開いた。僕はそんな彼女を見つめながら、勉強を再開するのだった。

 

 そんなこんなで沙知とはテスト当日までほぼ毎日勉強会を行った。

 

 沙知と一緒に勉強したおかげで、テストの手応えはバッチリだった。

 

 実際に返ってきたテストは前回同様高得点。なんだったら前よりも満点に近い点数をとることができた。

 

 勝負の相手である沙知の点数は気になるけど、結果は順位の発表で分かるまで秘密にすることにしている。

 

 今日は順位発表の日。僕と沙知は一緒にテストの順位が張り出されている掲示板に向かっている途中。

 

「フフフ」

 

 沙知はなんだか嬉しそうな表情をしながら、僕を見てくる。

 

「どうしたの? なんか嬉しそうだけど」

 

 僕がそう聞くと、沙知は満面の笑みで答える。

 

「いや~これから頼那くんにどんな実験をお願いしようかって考えると、つい口元が緩んじゃって」

 

 もう既に沙知は僕に勝った前提で話を進めている。そんな彼女の様子を見て僕は内心苦笑いしてしまう。

 

「そんな余裕でいいの? 僕が勝つ可能性だってあるんだよ?」

 

「え~そんなわけないよ。頼那くんがあたしに勝てる要素なんて何もないじゃん」

 

 沙知はアッサリと僕の言葉を否定してくる。

 

 随分と舐められているけど、僕は気にせずに彼女と一緒に順位表が張り出されている掲示板のところに向かった。

 

 そうして掲示板の前に着くと、そこには多くの人が群がっていた。みんな自分の順位が気になっているようだ。

 

「うわ~、人多いね」

 

「そうだね、じゃあ僕が見てくるから沙知はここで待ってて」

 

「は~い」

 

 僕は人混みの中を掻き分け、何とか掲示板の前まで到着する。

 

 そして自分と沙知の順位を確認すべく、張り出されている紙に目を向けた。するとそこには意外な結果が待っていた。

 

 一位 佐城沙知 494点

 

 一位 島田頼那 494点

 

「え?」

 

 僕は思わずポカンと口を開けたまま固まってしまうのだった。




如何だったでしょうか。

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それでは次回をお楽しみに。
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