「ぜっけん……?」
キリトが負けたという話を聞き、アスナが驚く。
それはそうだ。
キリトが負ける相手などそれこそトキくらいしかいない。
いやまあ、最近だとトキの歩法を齧り始めたアスナに負けそうなのだが。
「とにかく! その絶剣って子と戦ってみる!」
アスナは決意した。
ここで勝ってキリトのリベンジ、そして褒めてもらうのだ。
でへへへとゆるゆるな笑みを浮かべているアスナ。
どうしてそうなるのかちょっとよくわからない。
「あはは……」
アスナの娘を自称するユイは乾いた笑みを浮かべていた。
最近、ママがおかしいんです。
そう相談する姿が良く見られている。
「とにかく! 私が絶剣を倒します!」
「お、女の子……!」
アスナは戦慄した。
まさか、キリトが女の子だからと手加減したのでは。
そう思ったりもしたが、それもまあないなと考え直す。
だって私の方が可愛いもん!
どや顔である。
「と、とにかく勝負よ!」
顔が赤いまま戦いを挑むアスナ。
その構えは既に戦場のそれだった。
「うん、いいよ」
即座にデュエルモードに移行、戦闘が始まった。
先手はアスナだった。
トキの手ほどきが異常に噛み合った彼女は、無想流舞の一部を使いこなせるようになったのだ。
化け物っすね。
「はやっ」
「そっちが遅いのよ!」
神速の突き。
真下から放たれたそれをギリギリのところで避ける絶剣。
マジかよワンキル狙いか。
変なことまで教え込んでないだろうなトキ。
そんなことをちょっと遠くから見ていたキリトが思った。
しかし、戦況は平行線
アスナが常時攻めている印象だったが、それでも攻めきれない。
どうしてもあと一歩が足りないのだ。
「あの世界にあいつがいたら、俺は二刀流を持ってなかったよ(うろ覚え)」
そんなことを言っていたのを思い出したアスナ。
だがまあ、それはそれ。
別に二刀流がなくてもキリトを好きになったからだ。
惚気てる場合ではない。
と、そこまで考えていたアスナが距離をとった。
絶剣の雰囲気が変わったのだ。
必殺技を出すつもりのようだ。
多分だけど。
勘だけど。
アスナの勘はよく当たるのだった。
「それじゃあ、奥の手出すしかないか……」
アスナも自身の愛剣を構える。
彼女にも必殺技がある。
まあそれもトキ直伝の呼吸法、移動法、技術をパクりもとい参考にしたものだが。
お互いが目線を合わせ、激突。
両者の突きも激突し、火花が散る。
2発目3発目と突きを繰り出す絶剣に対して、アスナはその全てを逸らし、弾き、散らした。
「あ、あれは!?」
「し、知っているのかキリト!?」
キリトと一緒に観戦していたエギルが驚く。
というか顔が劇画タッチになっている。
「北斗有情断迅拳……!
トキが使用した北斗神拳の奥義である。
襲いかかってきたたくさんの敵の間を駆け抜け、敵全員の秘孔を突く技である。
有情拳の名の通り、相手は天国を感じながら爆散する!」
キリトの説明に周囲の観客も慄く。
いつの間にか北斗の拳通になってしまったキリト。
悲しいね……とか思いながら、アスナはそのまま技を繰り出し続ける。
突きを逸らし、弾き、散らす。
その動きはまるで流水のよう。
そして決して身体に剣を触れさせることはない。
最後と思われる突きを絶剣が放ち、アスナがそれを弾き飛ばし、首に愛剣をつきつける。
今の動き、全てがゲーム内のアシストがない自力の技である。
化け物じゃん。
「私の勝ちね」
「うん、ボクの負けだ」
わっと沸く観客。
連戦連勝の絶剣に勝ったのだ。
その興奮は冷めない。
そして、アスナも力を抜いて剣をしまう。
思い切り息を吐いて脱力する。
あれだけアシストなしで動くのだ。
かなり疲労した。
アスナがその場に座り込んでいるのを見て、絶剣がにっこりと笑う。
「やっと見つけた」
「このPTで、エリアボス撃破するの……!?」
「うん」
驚くアスナに、絶剣――ユウキは頷いた。
アスナの驚きは当然であった。
アインクラッドのボスは強敵だ。
トッププレイヤーが束になってかかってようやく勝てるような存在なのだ。
それを、アスナを入れた7人で倒すなんて……いや、倒したけど、前に。
アスナは頭の中に無双するトキの姿を思い浮かべて消した。
あれはある種の悪夢だ。
キリトにとってはだが。
「とにかく!」
「は、はい」
「作戦、練るわよ」
「!」
ハイタッチをするスリーピング・ナイツの面々。
アスナはその様子を見て、笑みを浮かべた。
「しゃあおらあああああああ! 我流! 北斗! 砕覇剣!!!」
アスナの必殺技が炸裂!
見事にエリアボスは頭をぶっ飛ばされてOK!
見事に勝利をしたのだった……!