副の神(副生徒会長の神田)   作:若気のItaly

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2話 重要会議

ドアを開けると、やけに神妙な面持ちで神田が座っていた。

「まさか...?」

「...そのまさかだ」

すっごい真剣な表情だ。これ真面目に聞いた方がいいやつかな。

「ごめん、まさかとか言ったけど実は皆目見当もついてない。」

「だと思ったよ、適当だな」

神田が笑う。だと思ったなら「そのまさかだ」とか言ってくるお前も適当じゃねえか。

「まあ、とりあえず全員揃ってから言いたいから。安藤も隣でなんかそれっぽい雰囲気出してて」

「おけ」

この雰囲気は作られたものだったのか、なんか騙されたみたいな感じだ。くそう、俺も残る2人を全力で騙してやろうじゃないか。

 

5分ほど経って、廊下から大トロと三浦の声が聞こえ始めた。神田が俺に目配せをしたので、俺も神田の隣に座って、なるべくそれっぽい雰囲気を出した。

「うわ!何?!」

ドアを開け、中を一目見た大トロが叫んだ。後ろから三浦も覗き込み、

「え、何?人死んだの?」

と一言。

「入ってくれ...みんなに悪いニュースがある」

ここまで勿体ぶられると、ネタなのではないかと思ってしまう。

「てか、安藤は知ってる側なの?すごいシリアスな雰囲気出してるけど」

「あ、いや俺はまだ何も聞いてない」

「紛らわしいなおい」

この状況下でツッコミどころを逃さないとは、大トロは何とも抜け目ないやつだ。脱帽する、それは室内だから当然か。

「で?どうした」

大トロが3人を代表してきいた。

「文化祭で副生徒会が...何か出しものをしなくちゃいけないらしい」

「はあ?!」

「え、嘘だろ?」

「勘弁してくれよ」

俺含めみんな取り乱した。当たり前だ、この体たらくグループで。

 

「どうすんだよ、副生徒会が今までやった仕事なんて一番大きいやつでもベルマークの集計くらいだぞ」

大トロがため息をついた。

「だよな〜、じゃあそれやるか」

「それって?」

「ベルマーク集計」

「馬鹿じゃねえのか」

「わお、いつもよりツッコミが過激だねえ」

三浦が大トロの肩をつつく。

文化祭の出し物でベルマーク集計ってホントにどういうことだよ。

中庭でベルマークの公開集計パフォーマンスか?You’re kidding.

成立しないようなことを言うのがボケだが、これはすっとぼけすぎていて、もはやボケとしても成立していない気がする。

 

「生徒会長からは『ダンスでもしたら?』って言われたけど」

「「「しねえよ」」」

「だよね〜」

特別にダンスを忌み嫌っているわけではないが、俺たちはハモった。

理由はまあ色々ある。

俺たちができるようなクオリティのダンスじゃ出し物にもならないこと。

失敗した時のリスク(数週間クラスでネタにされるとか)が大きいこと。

うちの学校にはハイクオリティのダンス部がいること。などなど。

でも一番大きい理由は「練習だるい」だろう。

(俺含め)なんて積極性のない連中なんだ。夏休み序盤を彷彿とさせる怠惰っぷりだ。

 

「とりあえず何にしよっか〜」

あまり真剣に考えてなさそうな声で神田が言った。さっきのシリアスな演技は何だったの。

「まず範囲絞って考えてくか。これだけは譲れない条件とかある?」

「1、頑張って練習しなくていいこと。2、当日忙しくないこと。3、失敗とかなさそうなこと。」

「注文多いな、宮沢賢治か。」

なんか三浦が言うとだらしなく聞こえるけど、的は得てるんだよなあ。楽な事前準備で終わるなら、それに越したことはない。

「あ、じゃあみんなの前で漫才するのとかどう?」

「さっきの条件聞いてた?」

「ごめん聞いてなかった」

「ドロップキックしたろか」

神田が人に話を振っといて返事を聞いてないのはいつものこととして、こいつ漫才したいとか言うタイプだったんだな、初見。文化祭での漫才とスカイダイビングだけはリスクが高すぎて絶対にしたくない。してみたいとも思わない。

 

「あー、じゃあレモネードとか出す?」

「レモネードスタンド活動ってこと?」

おおお。発案者は神田だが文化祭でレモネードスタンド活動とは、なかなか粋な(粋な?)考えじゃないか。

「何だそのガソリンスタンドみたいなやつ」って思っている読者もいるかもしれないので、一応解説を入れておこう。我ながら気が効く、さながらお母さんだ。

レモネードスタンド活動とは、レモネードを売り、入ったお金で小児癌の治療費などを病院に寄付するという、アメリカ発祥の言わばボランティア活動のことだ。

 

神田はポカンとした表情を浮かべて

「??何それ、ガソリンスタンド?レモネードって作るの簡単そうじゃん」

...解説は神田にこそ必要だった。

「動機薄!小児癌の支援金集めとかそういうご立派な物を想像してたわ」

「ああ、それいいね」

「適当すぎだろ」

 

♦︎♦︎♦︎

 

ということで後日出来上がったパンフレットがこちら

 

〜レモネードスタンド〜

場所:副生徒会室

値段:一杯200円

副生徒会選りすぐりのレモンを使用したレモネード、文句なしの味!

副生徒会長神田から一言

「このレモネードスタンドで得た資金は小児癌の治療や研究のための費用として病院に寄付します。この文化祭から助け合いの輪を広げましょう。」

 

 

「お前これなんかセコいな」

「ホントそれだよ」

大トロが笑いながら言って、俺も同意する。

身内から見れば突っ込みたい点がこの短い文章の中に凝縮されている。

「うわべ良し子ちゃんか、お前。何が助け合いの輪だよ、お前の動機習字紙くらい薄かったじゃねえか。」

「紙の種類による薄さの違い、共感性低いだろ。紙なんか全部薄いわ」

「お前っっ、習字紙舐めてんのか?」

「いつからそんな習字紙推し始めたんだよ」

「いや、一ミリも推してないけど」

「絡んできただけかよ」

大トロと三浦は今日もキレキレだ。てか、あれ?突っ込まれるべきは神田なのでは?路線戻すか。

「あと、レモネードまだ作ってないし、レモン選んですらないんだよなあ」

「え、もうレモン買ったし試作したよ?」

「「「え?」」」

またハモっちゃったよ。

てか、え?もう作った?

「うちの爺さんがレモン作ってるからさあ、そこで文化祭で使う分までレモン買って、レモネードも家で作ってみたよ」

頼れる兄貴じゃねえか。

さらっと言うけど、すごいよ?それ。

社会科とかのテストの中の会話文で

ゆみこさん「地域にはそれぞれの特産品があるんだね」

だいちさん「自分たちの地域では何が有名なのかな」

ゆみこさん「だるまが有名だと聞いたことがあるよ」

だいちさん「じゃあ、だるまづくりを実際に見に行ってみよう」

とか言ってるあの人たちくらい凄まじい行動力だ。

うん...ちょっとわかりづらい例えだったね。

 

♦︎♦︎♦︎

 

とりあえず、みんなで「ううぇ〜い、神田やるぅ〜」とか色々やってその日は帰った。神田によるとレモネード作りはダンスの練習の50分の1くらい楽らしい。嬉しい限りだ。

今は俺は帰りの電車に揺られている。

向かいに座ってるおじさん、お腹のボタン一個開いてるけど指摘した方がいいかな?

あれ、そう言えば...

「レモン買う費用って経費で落ちるんだよな?」

副生徒会のグループLINEにメッセージを送った。まもなくして

「そりゃそうだろ、俺らで自腹とか言われたら発狂だわ」

と大トロから返信があった。

え...じゃあ...

神田あいつ!副生徒会の予算、あいつんちに流れてんじゃねえか!

「クッソ!」

電車の中なのに、割と大きな声を出してしまい、8人くらいに見られた。

はっずいなあ、もう。

 

...そういや神田、新しい靴履いてたわ。




スピッツっていいっすよね(唐突)
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