ガラスごしのVisions   作:ホワイト・ラム

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久しぶりの投稿となりました。
多分覚えている人は少ないでしょうが、待ってた人すみません。


バッド・コンディション

午後の陽射しが差し込む部屋の中で、アグネスタキオンのトレーナーがパソコンに向き合っている。

先週のレースの件をレポートにまとめている。

 

「む?」

その時、彼の人物が不意に動きを止める。

そして素早くマウスカーソルを動かし、上書き保存のボタンをクリックする。

それとほぼ同じくして、トレーナーのおんぼろな扉が音を立てて開かれる。

 

制服の上に纏った白衣、艶のある栗毛に、何処か怪しげな瞳。

彼の担当するウマ娘 アグネスタキオンだった。

 

「トレーナー君!新薬が完成したぞ!

君もそろそろかな?まだかな?なんて考えてウズウズしていただろう?

安心したまえよ!

君のそんな、ささやかな願いを叶えるべく、私が今、参上したよ!!

さぁ、ぐいっと、行ってくれたまえ!」

まくし立てる様な早口でタキオンが、青白く発光する粘度のある液体が揺れるフラスコをトレーナーの前に差し出す。

彼女の頭上に、今にも『絶好調』の表示が出かねないほどのゴキゲンぶりだ。

 

「ふむ、そうか」

早口のタキオンに対応するかの如く、トレーナーがゆっくりと口を開く。

レポートを纏めるのも仕事なら、タキオンの実験の被験者に成るのもまた仕事。

一瞬の躊躇いも無く、受け取ったフラスコに手を掛ける。

 

「タキオン、例の約束は守ってくれたか?」

 

「ああ、分かってるよ。苦いのや辛いの、極端にすっぱいのは苦手なんだろ?

丁度、飲みやすい甘さにしておいたよ」

やれやれと言った様子でタキオンが手を上げる。

 

「すまない」

 

「構わないさ、多少ブドウ糖を加えるだけで君が実験に協力しやすくなるんだ。

薬品の効果に影響が出ない限りは、やっておくさ」

語るタキオンの前でトレーナーが薬品を全て飲み干した。

そして何事も無かったかのように書類作業に戻る。

 

5分後……

 

「どうだい?何か変化は有るかな?」

 

「無いな」

ワクワクしているタキオンにトレーナーが何時もの様に無表情で返す。

 

「ま、まだだ!まだ効果が出ていないだけかもしれない!!」

グッと拳を握りタキオンが自らにそう言い聞かせる。

 

更に10分後……

 

「だめだー、効果が出てこないー!今回は自信作だったのにー!!」

 

「タキオン」

 

「おや!?効果が現れたかい?異変かい?」

諦めかけていたタキオンの瞳に輝きが灯る。

 

「トイレに行きたくなった」

 

「それは普通の生理現象だよ!!

もう良い!!午後のトレーニングは休む!!」

不貞腐れたタキオンが言い放つと同時に、部屋を出て行った。

 

「ふむ」

トレーナーはその後ろ姿を眺めた後、再度レポートを書き始めた。

その表情からは彼の感情は読み取れない。

 

 

 

 

 

翌日

 

「トレーナー君!今日も実験の始まりだよ!!」

 

早朝の旧トレーナー寮の部屋の前でタキオンがスタンバイしていた。

眼の下に若干の隈を作り、右手に持つフラスコは半透明の綺麗な緑色をしていた。

 

「おはよう。タキオン。朝の挨拶は大切だ。

親しき中にも礼儀ありだ」

何時もと同じ無表情でトレーナーが鍵を開ける。

 

「早速で悪いが実験に付き合って貰うよ?

ああ、安心したまえ。

仕事に支障が出る筋肉痛や眠気が出る副作用は無いハズだからね。

しかも、今回は特別に君の好きなメロン味にしてあげたよ?

ほら、色もそれっぽいだろ?」

 

「今日は口数が多いな。

だが、思ったより『普通』で安心した」

自室に入り手早く荷物を置くと自然な動きでトレーナーがクスリを飲み干した。

 

「おお、()()()()()だ」

 

「なんだい、そのメロン味味ってのは?」

 

「強いて言えば、駄菓子やジュースなどのワザとらしい味だ。

いちご味のガムは本物の苺とは味が明らかに違うと言った場合などに、俺は使っている」

簡単な会話をしながら、トレーナーが今日の分だ。と言いながらタキオンに今日の練習メニューと弁当の包みを差し出してくる。

 

「分かるような、分からないような絶妙な例だね……

で、効果は?」

 

「無いな。今現在は」

 

10分後……

 

「失敗……またしても失敗か……」

変化の見えないトレーナーに対してタキオンが明らかに『不調』を見せる。

 

「タキオン。

『実験は期待と失望の連続』だと何時も自分で言っているだろ。

数度の失敗で落ち込むなど、()()()無いぞ」

 

「ああ……そうだったね……」

トレーナーの励まし空しく、タキオンが部屋を後にする。

その後、授業もその後のトレーニングも何処か上の空のままだった。

 

「ふむ」

トレーナーは肩を落とすタキオンの背中を何かを考える様に見ていた。

 

 

 

 

 

更に翌日――

 

「さぁ!飲みたまえ!役割だろ!早く!!ふあははははははははは!!」

眼の下に濃い隈を作ったタキオンが、クスリ片手にトレーナー室に入ってくる。

有無を言わせずトレーナーの口元に、フラスコを突き出してくる。

何処となく目の焦点が合っていないのは、トレーナーの気のせいでは無いかもしれない。

 

「甘ずっぱい」

 

「味の感想なんか聞いちゃいないねぇ!!

さぁ、早く七色のミラーボールみたいに発光するんだよぉ!!」

クスリを飲み干したトレーナーに向かって高笑いをする。

本来ならば、精神的な干渉を恐れてクスリの効果を言わないタキオンだが、そんな大原則すら忘れてしまう程ひっぱくした精神状態なのだろう。

 

 

10分後

 

 

「トイレに行きたい」

 

「そうかい……好きにいきなよ……」

無反応のトレーナーを見てタキオンがソファーに倒れる様に横になる。

上がっていた両手がボスんと音を立てて倒れる。

 

数秒の静寂の後――

 

「う、うわぁ~ん!!トレーナー君の脚が強靭になってくれないよぉ!!副作用で声が甲高く成ってくれないよぉ!!静電気が大量に帯電して、地面から少し浮いたり、ミラーボールみたいになったりしないよ~」

バタバタ、バタバタと手足を駄々っ子の様にしっちゃかめっちゃかに振り回す。

その様を見て、トレーナーがため息を吐いた。

立ち上がり、タキオンの暴れるソファーに身を寄せる。

 

「タキオン、落ち着け。誰しも『不調』は有るモノだ。

今回はたまたま調子が悪かっただけだ。

また挑戦すれば良いだけじゃないか」

優しい声色でトレーナーがタキオンの頭を撫でる。

時折指先がカリカリと耳の横をひっかくのはご愛敬だ。

 

「そ、そうだね……私としたことが少し取り乱していた様だ。

3日の徹夜はやはり心身に不調を起こす様だね」

トレーナーの慰めにより、タキオンが僅かに冷静さを取り戻す。

 

「はぁ……君に撫でられると不思議とほっとする――

っと!しかし!!トレーナー君、これは頂けないぞ?

ウマ娘にとって尻尾と耳は非常にデリケートな部分だ。

しかも、思春期のうら若き乙女の体をベタベタと撫でまわすのは実によく無いぞ!」

 

「そうか。すまない。

もう触らない。赦してくれ」

タキオンの言葉にトレーナーが頭から手を離す。

だが――

 

「仕方ないねぇ、今回だけは私が許可するよ。

さぁ、もっと頭を撫でて慰めるんだよ。

メンタルケアもトレーナーの仕事のウチだろ?」

タキオンが撫でやすい様にと耳を倒す。

撫でろ撫でろと頭を突き出す。

 

だが、何時まで経っても求める感覚はやってこない。

 

「どうした?撫でないのかい?早く撫でておくれよ。

こんなチャンス、滅多に無いよ?」

期待を込めてタキオンがトレーナーを見る。

 

「髪の毛がベタベタする。触りたくない」

 

「きーみーとーいーうーやーつーはー!!」

この後はタキオン自身覚えていない。

思いつく限りありったけの罵倒を投げつけた後、今日も休む事を伝えトレーナー室から出て行ったのをなんとか覚えている。

扉を閉めた時「言い過ぎたか?」と若干不安になったが、扉の向うから「体をキチンと洗って寝るのだぞ」の言葉に安心して再度怒り出したのを最後にタキオンの記憶は飛んでいる。

 

 

 

 

 

更に翌日――

 

「えーと、埃をはたいて、窓を開けて換気をして……

ああ、ゴミも纏めて捨てておかないと――」

せっせとタキオンがトレーナー室を片付ける。

昨日の寝不足を含めても、3日続きの失敗を振り切ったにしても、その姿は通常の彼女と比べても想像出来ない姿だった。

 

「タキオン、落ちている物を食べてはいけない。体調を崩す」

掃除に付き合わされているトレーナーがタキオンに投げかけた。

 

「落ちてる物なんて食べる訳がないだろ!!

私が掃除をしているのがそんなに変かい?」

 

「変だ。何時ものタキオンは食べカスを平然と床にばらまき、風呂に入れるのも嫌がる。

おおよそ、掃除・整頓・衛生観念という概念を持ち合わせてはいない存在だ」

酷くまじめな、冗談など一切入れていないというのが彼の口調から分かる。

 

「そろそろ私も本気で怒って良いんじゃないかな?

掃除の理由は簡単だよ。

今日、スカーレット君がトレーナー室に遊びに来たいと言っているんだ」

 

「まさかスカーレット・ノヴァか……!」

タキオンの言葉にトレーナーが戦慄する。

 

「いや、誰だいソレ……

私の後輩で友人だよ。

今日は彼女が遊びに来たいと言っているんだ。

事後承諾になるが、別に構わないだろう?」

手を動かしながら話を纏めて行く。

だが肝心のトレーナーからの返事は無い。

 

「トレーナー君?どうしたんだい?何か、困った事でも――!?」

タキオンが驚き掃除の手を止める。

その視線の先には、トレーナー君が静かに涙を流していた。

 

「ちょ、ちょっと、一体何が起きたんだい?!」

成人男性の無言の涙に狼狽える。

 

「タキオンに友人がいた――これほどうれしい事はない!!」

 

「友人位、沢山いるよ!!カフェだって友人だよ」

余に失礼な涙にタキオンが憤る。

 

「この前、否定していた」

 

「う、うぐ!?で、デジタル君は友人だ」

 

「本人曰く『恐れ多い存在』との事だ、友人とは違うのではないか?」

 

「う、うぐ……と、兎に角他にも友達位いるねぇ!!」

次々出される反論にタキオンがトレーナーとは違う意味で涙を流しそうになる。

 

「友達は数じゃないぞ」

 

「慰めてるつもりかい?ひょっとして」

 

「貴重なタキオンの友人だ。

精いっぱいトレーナーとしておもてなししなくては」

トレーナーが何度も頷くように言葉を噛みしめる。

 

「待ちたまえ、トレーナー君。

君の仕事はあくまで『デキるトレーナー』感を出す事だよ」

掃除の手を止め、タキオンがトレーナーに向き直る。

 

「デキるトレーナー感とはなんだ?」

 

「優秀っぽい雰囲気を出せば良いんだよ。

無理に明るくする必要はない。

紅茶でも淹れて、後は私のこのニセレポートをパソコンに打ち込んでくれれば良いから」

タキオンが持ってきていたカバンの中から、お高そうな茶葉の缶と数枚の文字が羅列した紙束を差し出す。

 

「つまり、どういう事だ?」

渡された缶と紙束を手にトレーナーが尋ねる。

 

「まぁ、君はちょっとエキセントリックな部分が有るからね……

いや、まじめな性格なのも、真っ直ぐな性格なのも、意外と熱意を持っているのも知っているんだ。

だけど、基本無表情だし、たまーに常識外れな事をするからね。

私としては大切なトレーナーである君が勘違いされるのは心苦しいんだよ。

分かってくれるだろう?」

大分、トレーナーの評価を盛り、更に相手を傷つけない様にタキオンが配慮した言葉を並べる。

 

「分かった、任せておけ」

タキオンの言葉にトレーナーが力強く答える。

 

(思っていたが意外とチョロいね……)

単純すぎるトレーナーの思考回路に内心『助かった』とため息を漏らす。

 

 

 

30分後、掃除を終えたタキオンがドアノブに手を掛けながら確認する。

 

「じゃあ、スカーレット君を迎えに行ってくるよ。

君の仕事は理解しているね?」

 

「無論だ。ニセレポートをパソコンに打ち込んで2人を待つ。

やって来たのなら、椅子から立ち上がり挨拶をし、一言話してから紅茶を淹れてくれば良い。

その後、用意した茶菓子を差し出し、二人の話が終わるまで再度ニセレポートを打ち込み続ければ良いんだろう?」

 

「そう、なるべく無口に最低限のマナー分以外はしゃべらないでくれよ。

君はすぐにボロが出るからね。

安心したまえ、トレーナー君は黙ってさえいれば真面目で熱心なトレーナーに見える容姿をしているからね」

行ってくるよ。と伝えタキオンがドアを閉めた。

 

「こちらも、始めるか」

トレーナーがそう呟き、パソコンの電源を入れ、文章制作ソフトを立ち上げる。

タキオンの我儘は珍しくないが、友人を連れてくるのは初めてだ。

 

「友人に良い所を見せたいとは、思春期の娘らしい部分も有るのだな」

そう呟いて、キーボードを叩き始めた。

 

「む?」

何かに気が付いたトレーナーが小さく声を上げる。

 

 

 

 

 

ぎしっ……

 

「ひっ!」

小さく軋んだ床板の音に小さな悲鳴が漏れる。

 

「大丈夫さ、安心したまえよ。

確かにここはずいぶんオンボロだが、流石に歩いた程度では床は抜け無いよ」

タキオンが自身の後ろを歩く後輩、ダイワスカーレットを安心させるように声を投げかける。

 

「こんな所に、トレーナー寮が有ったなんて知らなかったです」

何時もは勝気な彼女だが、ある種不気味とも言えるボロさ加減に、優等生の仮面が剝がれかけている。

 

「正確にいうなら『元』だね。

本来ここでトレーナーたちが生活していたが、増改築をするうちについには打ち捨てられてしまった場所さ。

今は一部のトレーナーの仕事部屋として使われているよ。

大浴場はもう無いけど、各部屋にシャワー室があるのが、唯一の救いだね」

 

「へぇ、なんだか数奇な場所なんですね」

スカーレットがタキオンの言葉に続ける。

 

「けど、良かったです。タキオンさんにトレーナーが見つかって。

一時は本当に退学しちゃうんじゃないかって、本気で心配で……」

 

「ははは、ようやく私に相応しいトレーナーが現れたという事さ。

少々変わっているところは有るが、彼は有能でね」

 

「流石タキオンさん!しっかりとスゴイ人をゲットしてたんですね」

キラキラと尊敬するような、スカーレットの視線がタキオンに注がれる。

 

「さぁ、着いたよ。ここが私の――いや、私とトレーナー君二人の夢を追う為のステージさ!!」

タキオンがバーン!と扉を開く。

 

そこに居たのは、クリーチャーだった。

 

1メートルほどの4脚と思わしき黄緑に光る存在が床を滑り、壁を上り、天井を這いまわっていた。

 

「い、いやぁああああ!!!」

スカーレットが悲鳴を上げる。

その瞬間、その生物が天井に4脚をつけたまま、扉の方を見る。

黄緑に光る顔に唯一目だけが赤く光っている。

 

「オカエリ、タキオン」

妙に甲高い声でソレが鳴き声を上げた。

 

「な、名前、呼んだぁああああああ!!!!」

スカーレットが怯え、震え、腰が抜けてその場に尻もちを付く。

 

「キイてイルゾ、おマエガ、ダイワスカーレットダナ。

オレ、ワタシハタキおン乃とレーなーダ。

イツもタきオントなヵヨク、シテクレて感謝すル」

怪生物がスカーレットに親しく話しかける。

 

「あわわわわわわ、と、トレーナーさんでした……か……

さ、さすが、タキオンさん……こ、個性的な方を、選びましたね」

露骨に怯えた表情を尚も腰が抜けたスカーレットがする。

 

「ヨロコベ、タキオン。

実験ハ成功ダッタノダ、ヨウヤククスリのコウカガデタノダ」

はしゃぎながら自身の体色を変化させるトレーナー。

 

「わ、わー、すごーい……タキオンさんって、新しい生き物も生み出せるんですねー、すごーい……」

死んだ眼で現実から何とか眼を背けさせながらスカーレット話す。

 

「良かったな」

 

「ああ!!もう!!色々と台無しだよ!!バ鹿モルモット!!」

タキオンの叫びが空しくトレーナー室へ響いた。

 

 

 

 

 

 

「戸締りは任せる。明日の朝忘れずに届けてくれ。

鍵は手渡しが原則だ」

そう言ってクスリの効果が切れたトレーナーはタキオンにトレーナー室の鍵を渡す。

電気を切り忘れるな。の言葉を残し先にかえっていった。

 

「は~、もう少しスマートにする積りだったんだけどねぇ……」

 

「そんな事、ありませんよ?」

ため息を吐きながらタキオンがお盆にティーカップを二つ乗せて姿を見せる。

カチャカチャと音を立てて、ダイワスカーレットの前にカップを置いていく。

 

「ええと、お茶菓子を直ぐに持ってくるからスカーレット君は適当にやっていてくれたまえ」

 

「いやー、ビックリしましたよ。

見た事も無い、生き物がしゃべりかけて来たんですから」

 

「うぐ……それは、クスリの副作用が今になって一気に来たからで……

いや、言い訳はよそう。

彼はなんというか、少しズレた所があるんだよ……」

伏目がちにスカーレットに話す。

 

「けど、タキオンさんあの人の事、嫌いじゃ無いでしょ」

自身を持ってスカーレットが紅茶に手を伸ばす。

 

「ふーむ、嫌いじゃないのは確かだねぇ。

実験も付き合ってくれるし、なんだかんだ良い人だしねぇ。

ま、意識するほどじゃ無いね」

紅茶にミルクを入れながら、大量の砂糖を溶かし始める。

 

「ふーん、ずいぶんあの人に影響受けてるみたいですけど?」

 

「私が?」

訳が分からないと言いたげな表情をタキオンがする。

 

「紅茶、すごいミルク入れてるじゃないですか。

前までは砂糖だけだったのに、トレーナーさんの趣味に合わせてるんですか?」

ニヤニヤしながらスカーレットが尋ねる。

 

「いや、そんな事――」

ここ数日のタキオンが自身の行動を思い出す。

朝から部屋に押し掛けた事、クスリの味を彼の為を思い変えた事、慰める為に頭を撫でろと迫った事

 

「アレ?」

タキオンが自身の行動の中での違和感に気が付く。

 

「い、いいや、違うね!!実験を円滑に進める為の手段と、寝不足による不調のせいさ!

断じて私はトレーナー君の事を何とも思って無いねぇ!!」

タキオンが無理やり自分を納得させ、スカーレットに言い放つ。

 

「そうですか?けど、トレーナーさんは結構タキオンさんの事、大事に思ってますよ?

クスリの効果の件もそうですけど、この部屋の合鍵渡してくれたじゃないですか。

そこまで、してくれるトレーナーさん、あんまりいませんよ?」

そういうと紅茶を飲み干しスカーレットが立ち上がった。

 

「また来ます、タキオンさん。

紅茶とお菓子ごちそう様です」

スカーレットはそう言って部屋を出て行った。

 

「あー、私もトレーナーさんに会いたくなっちゃったなぁ」

そう呟くとスカーレットは自身のトレーナーに連絡を入れ始めた。

 

 

 

「そんなこと、ない……ありはしないよ……彼は特に、無いねぇ……」

タキオンが一人トレーナー室の中、渡された合鍵を見てひとりモンモンとしていた。




書いてるうちに長くなっちゃった……
短く、シンプルにしたいのに……
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