ザントもミドナも拗らせています。
ザントがミドナに求婚して本編のあのシーンに繋がるようなイメージです。
ザントとミドナの拗らせ小説。キャラ崩壊含むのでキャラ崩壊嫌いな人は回れ右。
基本崩壊設定
ザント:ミドナに並々ならぬ想いを寄せている。自分よりリンクやゼルダにばかり目を向け自身には寄り添ってくれないミドナに執着している。
ミドナ:ザントに好意を抱いてはいるが、ザントの歪んだ心にはなかなか伝わらない。
今回の話はミドナが光の世界に来る前の、姿を変えられる場面の妄想がメインです。
「共に世界を支配しよう。」
その言葉に頷きたかった。一人の奔放な女として。
「何故、何故首を振るのだ。なぜ……」
黒々とした、影の世界の城を背後に手を広げ困惑するザントに、ミドナは「そんな冗談、面白くもないね。」と薄く笑った。
冗談なら、もちろん答えはイエスだ。黄昏の空に包まれ影に満ちた世界を、二人で将来を誓い合った居城から眺めるのはどんなに心地よく清々とした気になるだろう。そしてそこに感じる幸福は、どんなに温かなものだろう。
だが、
「仮にもワタシは影の世界の長なんだよ。忘れたのかい?ザント」
どこか寂しげな色を湛えながら、ミドナの瞳はザントの姿を映し込んだ。
空は黄昏時の黄金の雲が揺らめいている。
「冗談ではない。私は本気で申しているのだ。ミドナよ………」
私たちならできる。私の知恵とミドナの強大な魔力とを合わせれば、光を影に取り込むことだって難しくないだろう。
「なあ、そう思わないか?」と近づくザントに、ミドナは目を伏せた。
「冗談じゃないからダメなんだよ。」
言葉の真意が彼に伝わるかどうかは怪しかったが、きっと伝わらないだろう、いや、伝わって欲しい、そう願いながらミドナはそう告げた。
黒い木々はざわめいている。
「何故だ?何故だ、何故………」
ミドナの思いも虚しく、ザントには彼女の気持ちが伝わらなかった。何も。
代わりに断固とした拒否という事実だけがザントの心の奥深くまで突き刺さった。
「ミドナ、何故そう私を拒むのだ。私ではミドナと釣り合わぬというのか。ミドナよ。私ではダメなのか。」
「拒んでるのはお前じゃないよ、ザント。」
狼狽えるザントに、ミドナは一歩近づいた。
「愚かで浅はかなお前にも分かりやすいように説明してやるよ。光と影は表裏一体………、どちらかが崩壊すれば両方とも崩れ去ってしまうものなんだ。だから我々は光の干渉を許さないし、影も同じく光に干渉してはならないんだよ。」
これでわかっただろ、とため息混じりにザントを見やると、ザントは何を言っているかまるでわからないという顔をしていた。
「光を影にしてしまえば、全てが均衡で均一になるのだ。それがわからないのか?」
想像してみよ、ザントは手を広げた。穏やかな影が光に惑わされることもなく脅かされることもなく、静かに幸せに暮らせるようになった民の幸福な姿を。
理想を語るザントの姿は、本当に自信に満ちている。いつもの虚栄心に翻弄されながらおどおどしたり癇癪を起こしたりする男とは思えない。
「理想だけ見たってダメなんだよ、ザント。」
ミドナは腰に手を当てた。
「ワタシだってそりゃあ光なんか無い方がいいと思ってるさ。奴らなんて影の世界を何とも思ってない愚かで哀れで、思い上がった連中だからね。でも、」
それは排除していい理由にならないのさ。
ミドナは寂しく笑った。
影の世界の鳥たちが遠く空を飛んでいる。
「何故、何故、何故、何故……」
ザントは理解できず、癇癪を起こした。
「光が在る意味が、意義がわからない。穏やかな影の世界だけ在ればいいのに、影の世界だけが全てならいいのに、何故、何故……」
腕や頭を振り回して悩むその姿は滑稽だが、ミドナは彼の気持ちが理解できないわけではなかった。むしろ同じくらい光の世界を拒んでいる。あいつらがどうなったって構わない……。
だが影の世界の長として、均衡を保つ者としての責務が、民からの期待と背負った平和への重みが彼女を動かさないでいた。
「このコタエがわからないのなら、オマエは長になど………ワタシの公的な夫になどなれないよ。」
それは決して彼からの想いを断つ意味では無かった。むしろ、彼の想いを受け止めようとさえしていた。
公的でなくとも、王としてでなくとも、彼とは生涯に渡って支え合えれば、それが幸福の一つの形なのではないか、とミドナは考えていた。
ザントは確かに浅ましく、愚かで、虚栄心に満ちて、頼りなく、地位や名声に執着するような男で、決して異性として魅力的というわけではない。
だがミドナはそんなザントが何故だか愛おしく、そばに置いておきたい気持ちになるのだった。
彼女自身なぜこんな男が、この男のどこが、と疑問に感じているが、歪みながらも影の世界を想う一途な心と、得られぬ名誉を求める性懲りの無さが、世の理不尽さに抗おうとする未熟な過去の自分にも似て、大事にしたい、寄り添いたいと感じさせるのだ。
「なあ、ザント。お前が嫌いってわけじゃないんだ。だから、」
ワタシの話も少しは理解してくれよ。ミドナはザントに笑いかける。
だがザントは、王位こそがミドナと共に在る術と信じていたザントには、ミドナの言葉は関係の断絶……むしろ存在の拒絶に近い意味に受け取っていた。
「ミドナ、ミドナよ。何故私では駄目なのか。私の何がいけないのか。何故そう拒むのだ。何故」
悲鳴に近い声を出しながらじりじりとミドナに近づくザントに、ミドナは思わず後ずさった。
それがザントには決定的な拒否の意として受け取られてしまったのだ。
「そうか。ミドナ。お前もそうやって、私を突き放すのか。私にミドナを愛する価値も権利も無いと言うのだな。私は所詮捨て駒というのだな!」
考えをどんどん飛躍させ、ミドナの想いからかけ離れていく。
「そんなこと、ワタシは一言も言ってないだろ!落ち着けよザント、ワタシはお前を拒んだわけじゃない。ワタシは………」
お前のことが、必死にザントに想いを伝えようとするも、手遅れだった。
「許さない。許さない。ミドナも、光の世界も、影の世界も、私を認めぬ全てを、許さない、許さない………!」
あの時、あとずさりなんかせず、抱きしめれば良かった。
その前に想いを告げ、キスを交わせば、あるいは……………。
今となっては何もかもがもう遅い。
暴走したザントに姿を変えられ、勇者リンクと旅をしながら影の世界に戻り、ザントと再び対峙した時には、ザントはもうガノンドロフに心が奪われていた。
そして怒りのまま自分自身の手でザントを消滅させることになったのだ。
何を言っても聞かぬザントに張り手を食らわせる程度のつもりだった。
それがザントの最後になってしまうとは………。
どこまでも愚かで哀れな男で、そんなお前をワタシは愛していた。
もうその想いを告げることもできないが。
相棒とまで思えるようになったリンクにもこの事は秘めておく。
言ったところで「あの男のどこに愛おしさが感じられるのか」と理解されないだろう。
複雑な恋心は誰にも知られず、報われずに終わってしまったのだ。
ザントの消えた王座に振り向く事もなく、ミドナはリンクと最終決戦へと足を進めた。
ザントもミドナも両思いだけど報われない感じが好きです。
報われて欲しい