「愛している」
そう告げたはずなのに
「嘘だ」
何故お前はそうやって、私の手からすり抜けていくのだ。
「嘘ではない。お前を愛している。心から思う。」
お前が欲しいと。
胸に手を当て、想いを込めて叫んだ。だが、
「違うだろ」
何故お前は黄昏色の髪をゆらめかせ、漆黒のマントを翻し、再び私から離れていくのだ。
「お前が欲しているのは、ワタシじゃない」
陰りある切長の瞳が射抜くように私をとらえる。
どういう意味だ。私はお前が欲しいのだ。身も心も、全てを手に入れて、この手に抱き、愛おしみ、慈しみたいと思っているのに。
「何故わからない」
想いが伝わらないのが、こんなにも苦しいことなど、初めて知った。
いや、知りたくなかった。
ミドナ、何故私の愛を受け取ってくれないのだ。
「お前が欲しいのは、」
ミドナは徐に口を開く。
「お前が手に入れたいのは、ワタシじゃなくて」
ワタシの魔力なんだろう。
そう告げて、もう少しで掴めそうな長い腕が、再び私の手からすり抜けていく。
「違う、違う」
待ってくれミドナ、信じてくれ。
「違うものか。」
心を閉ざし、私の言葉に耳を傾けてはくれない。
何故だ、何故なんだ。
そんな冷たい瞳で私を拒まないでくれ。
私が欲しいのは、私が本当に愛して止まないのは魔力ではない。
「待ってくれミドナ、信じてくれ。」
必死に近づこうとミドナの後を追う。
「信じられない」
私から背を向け、遠ざかるミドナ。
何故だミドナ。何がいけない。私は本当にお前を愛しているのに、何故お前にこの想いが届かない。
「こんなにも、何度も伝えているのに」
愛しき黄昏の姫君はどんどん私から遠ざかっていく。
もう追いつくことはできないのか。
「ミドナ、私は本当に」
お前のことを、愛しているのだ。
文字が足りないので以下おまけ
「ミドナ、私はお前のことを愛している」
想い人からそう告げられるも、恋物語のように心が躍ることは無い。
だって、
「お前が愛してやまないのは、ワタシじゃなくて」
ワタシの魔力なんだろう。
それを知っているから、何を言われても嬉しくないのだ。
ザントのことは好きだ。婚約相手として周りからも期待されている。ワタシも彼と両思いになれたらと思う。
だが、ザントが欲しいのはワタシではなく、王座だ。力だ。権力だ。
ワタシがどんなにザントを想っても、伝わることは無いだろう。
「信じてくれミドナ、私は本当にお前を」
愛している。
そんな言葉は、王位を手に入れるための方便として使うものじゃないよ。
鼻で笑ったが、本当は本当なんじゃないかと、割り切れないでいる。
しかし本当だったとしても、影の世界の長として、ザントを婚約相手として受け入れることが出来ない。
何故なら、ザントには悲しいことにその器が無いのだ。
彼を補佐として使役するならまだしも、政治に関わらせてはいけない。
直観がそう告げていた。
彼を王座につけることはこの世界の崩壊を意味する。
長としてのワタシが彼を拒む。
ワタシが長でなければ、この愚かな男と手を取ってささやかな幸福を築き上げていきたいのに。
ザント、その愛の言葉は嘘なんだろう。嘘だと言ってくれ。
そうでなければワタシはお前を、ワタシのお前への想いが本当なのか、嘘なのか、何もかもが
「信じられない」
ザントの悲しい片想いになってしまったけどミドナもザントのことが好きなのにザントは魔力のことが欲しいんだと思い込んでる設定です。
そうなるとお互い拗らせすぎだ。