TSクズ娘は百人の男を誑かしたい   作:げれげれ

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12話「葱神様のラブラブ下賜」

 皆様どうもこんにちは。

 

 最近は天気の良い晴れやかな日々が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。

 

 愛と勇気は従僕(トモダチ)、傘子美音です。

 

 本日はお日柄も良いので、以前の約束通り昼飯をタカろうとマス子を呼びだしたのですが……。

 

 残念なことに今日のまんまる餃子亭はセイさんシフトから外れていることが分かり、お流れとなってしましました。

 

 呼び出す前に調べとけと、マス子に怒られたのはさておき。行先もなくなったので仕方なく、私はマス子と街をぶらつくことになりました。

 

 そこでなんと、私達はセイさんに絶賛色仕掛け中の変態色欲下賤貧乳ネギネギを発見してしまったのです。

 

 ああ、なんたることでしょう。

 

 以前から彼女は相当の淫売ではないかと予見しておりましたが、実際まさにその場面に出くわしてしまうと、同じ女性として心底軽蔑してしまいます。

 

 吐き気を催す邪悪、男を食い物としか見ていないメス豚、人の心を持たぬ悪魔。

 

 ああ、一瞬でも彼女を親友と思ってしまった自分に呆れが止まりません。

 

「ますは近くの席に、陣取りましょう。会話を盗み聞きしますよマス子」

「……あ、ああ」

 

 私とマス子は速やかに入店し、気配を消して彼女の背後の席を取りました。

 

 気付かれないかヒヤヒヤしましたが、クソネギは二人だけの世界を作っているのか私たちなど完全スルーです。

 

 ……よし。あの女、一体どんな話をしているのでしょうか。

 

 

 

 

「まあともかく、そんなセイさんの体質も受け入れてくれる恋人を作るしかないのう」

「……居るかなぁ、そんな人」

「んー……」

 

 

 

 

 ネギカスはセイさんのすぐ隣で、ハンカチで顔を拭いてあげながら、とても不穏な言葉をかけていました。

 

 恋人を作る、ですって? 前後の文脈は分かりませんが、間違いなく……卑猥なことを話していますね。

 

 清楚で可憐な私ではとても口に出来ない、卑しい話をしていたのでしょう。このFUCKING BITCHが!

 

「……、マス子。私は今からブレイクダンスして陽動しますので、貴女はあの生ゴミネギ団子の背後に回り込んで首をへし折ってください」

「いや、やらねぇよ」

 

 もはや一刻の猶予もありません。

 

 いちはやくあのゲロネギを始末して純粋無垢なセイさんの目を覚まさせてあげないと取り返しのつかないことになるでしょう。

 

 だというのに、マス子には動く気配がありません。

 

 まだ殺人に躊躇がまだ残っているようです。

 

 このアマちゃんが。プロ失格です。

 

 

 

「まぁ、私に任せぇ。何とかしちゃるけえ」

「でも、そんな、年下の娘に」

「男ってのは、年齢関係なく女に甘えていいんじゃ。むしろいつまでも気を張って強がってる人より、甘えてくれるくらいの方が可愛げがあるわい」

「お、おお。なんだこの包容力」

「ねーちゃんが……、あのねーちゃんが、かつてないほど強ぇムーヴしてる」

 

 

 

 ぬあーっ! ちょっと目を離したら、また抱き合い始めましたよあの売女!

 

 どれだけ攻めてるんですか! その手練手管で彼氏いない歴17年は嘘でしょう。

 

 な、成程、ああすればセイさんを落とせたんですね、って違う!

 

 感心している場合ではないです、このままでは本当にセイさんが墜ちる、墜ちてしまう────

 

 

 

 

 

「ほんじゃ、また連絡するけぇ。LINE交換どうじゃ」

「おお、サンキュ」

 

 

 

 

 ……このままセイさんが落とされてしまうくらいなら、身も蓋もなく自爆特攻して邪魔をしてやりましょうか。

 

 と、そこまで思い詰めたのですが、ネギカスはすまし顔でセイさんと抱き合うのをやめ、連絡先の交換に移りました。

 

 そしてお互い笑顔で、会計に向かっていきます。

 

「お、終わりですか。よ、よかった」

 

 アレ以上、あの妙な赤ちゃんプレイを続けられていたら、終わっていました。

 

 間違いなく、うぶなセイさんでは籠絡 されていたでしょう。

 

 く、クケケケケ。詰めを誤りましたねネギネギ。

 

 せっかく落城寸前まで追い込んだ相手をあっさり逃がしてしまうとは。

 

 所詮ネギネギは陰キャ、ヒョロチビ根暗の田舎娘。

 

 その手緩さ、糞雑魚恋愛ムーヴに免じて少しでも楽に逝けるよう取り計らってやりましょう。

 

「か、完璧だ……。完璧な引き際だ、ネギネギっ」

「ど、どういうことです、マス子」

「今日はもう十分甘やかしたから、これ以上何かやってもコスパが悪い……。なので、次回以降の甘やかしの効果を保つ為に、敢えて今日はここで終わったんだ」

 

 安堵を浮かべた私と相対的に、マス子は蒼白な表情を浮かべました。

 

 そして言われてみて、私もハッと気づきます。

 

「ま、まさかネギネギは……」

「そうだ。今日セイさんを落とせなかったんじゃない。より深く恋の楔を打ち込むため、そして恋人として優位にたつため、わざと今日落とさなかったんだ」

 

 そうか。ネギネギにとって、ただセイさんを落とすのがゴールではなかったのです。

 

 彼を落とした上で、カップルとして優位にたち弄ぶことこそゴールだったのです。

 

 な、何というしたたかさ。何という思慮深さ。

 

 腐っても投資や取引だけで日本の殆どのお父さんの平均年収を超える『神童』ネギネギです。

 

「見誤っていた、まさかネギネギがあんなに恋愛巧者だったとは」

「お、恐ろしい……、おぞましい……。どこまで悪女なんですかネギネギ」

 

 我々とは違うステージに立って、セイさんを誑かす悪魔ネギネギ。

 

 私の人生で、ここまでの強敵に出会ったことはありません。

 

「ようし、こうなれば仲間に集合をかけます。鉄砲玉をかき集めて、確実に息の根を……」

「まてまてまて! 何をする気だアマネ!」

「は、離してください! このままじゃセイさんが! セイさんが!!」

 

 ここは私が組織したAMF(アマネちゃんファンクラブ)による人海戦術でネギネギの一族郎党皆殺しにするしかありません。

 

 まだ幼いネギ妹には悪いですが、ここは心を鬼にして────

 

 

 

 

 

 

「で。何やっとるんじゃお前ら」

「「ほわあああああああっ!!?」」

 

 

 

 

 

 

 ネギネギが会計している間に仲間を集めようとしたのに、マス子が大騒ぎしたせいで感づかれてしまいました。

 

 ぐぬぬ、何故どいつもこいつ私の邪魔を……

 

「これは、その、奇遇ですねネギネギ!」

「何が奇遇ですね、じゃ。わざわざ店員に言って、私らの背後の席まで来たくせに」

「気付いてたのかネギネギ」

「さっきは、周囲から注目の的じゃったからのう。そのせいで視線に少し敏感だったんじゃ。あー恥ずかしい」

 

 じぃぃぃ、とネギネギは胡散臭そうな目で私を見てきます。

 

 ま、不味いです。何か言って、誤魔化さないと。

 

「にしても、こそこそ隠れてなにするつもりじゃった? また、録でもない事を考えてたんじゃないじゃろうな」

「か、考えてませんよ!? 私はちょっと、ネギネギの一族郎党を抹殺根絶やしにしようかなと思ったくらいで」

「考えうる中で最も録でもない計画じゃが!?」

 

 しまった、口が滑りました。

 

「……マス子。説明お願いじゃ」

「ネギネギとセイさんが抱き合ってたのを見かけたから、気になって店に入ってきた。アマネはいつもの発作だ」

「そんなところじゃろうな」

 

 マス子の説明で一発納得する、ネギネギ。

 

 この信用の違いはなんなのでしょうか。

 

「えっと、その、それでセイさんは!?」

「もう帰ったよ、これから土木のバイトだそうじゃ」

「えー……」

「何で残念そうなんじゃ」

 

 どうやら、私達に気づいていたのはネギネギだけみたいです。

 

 セイさんはもう帰ったとの事。一言くらい喋りたかったです。

 

「に、にしてもその。知らなかったよ、ネギネギ。いつの間にセイさんとあんな関係になったんだ?」

「ん?」

「オレ、久しぶりにねーちゃんを尊敬してる。思った以上に、ねーちゃん大人……」

「え? 何の話じゃ?」

 

 さっきまでのラブラブいちゃいちゃを間近で見せつけられたネギ妹は、呆れたような恐れおののいた様な複雑な顔をしていた。

 

 まぁ、私だって似たような感想です。この女にこれほどの恋愛ポテンシャルがあったなんて知りませんでした。

 

「セイさんとラブラブだったじゃないですか。何ですかアレ、見せつけですか。私たちの存在に気付いてたんですよね、つまり見せつけですよね」

「ラブラブ……って。ありゃ、セイさんが彼女にフラれたらしいから慰めとっただけじゃ」

「ふーん?」

「おお、そうじゃそうじゃ。その事で二人に、少し相談が有ったんじゃ」

「ふーん……」

 

 成る程。何処の誰かは知りませんが、セイさんは女に捨てられたのですね。

 

 その弱った心の隙につけこまれ、ネギネギの誘惑に屈してしまったと。

 

 ……人の傷心につけこむその手口。公序良俗に則って、許されるものではありません。

 

「え、えっと。私程度がネギネギさんに助言できることなんてないような」

「マス子? なんで急にさん付け……?」

完璧(パーペキ)っスからねぇ、ネギネギさんは。もう本当に、どこでそんなテク覚えてきたんだって話っス」

「アマネ、何か口調変わっとらん?」

 

 こうなれば是非もなし。

 

 マス子の邪魔の入らないタイミングで従僕を使って、このクソビッチの拉致監禁を────

 

 

 

 

 

「どっちか、傷心のセイさんを癒す為に、デートしてやって欲しいんじゃが」

「ズッ友だヨ」

 

 

 

 

 

 なんだコイツ神か。

 

「セイさんは、事件巻き込まれ体質が酷くてデートも一苦労だそうじゃ。貧弱な私にゃ荷が重いが、マス子は腕が立つし、アマネは問題解決能力高いからのう」

「え、あっ。で、デート?」

「さっき、慰めるついでにで私の女友達を紹介するって流れになったんじゃ。安心せい、少し人格が破綻してるのも居るけどそれでよければ、と念を押しておいたから」

 

 人格破綻。

 

 ふむ。確かにマス子は頭おかしいですからね。

 

「お前ら、セイさんには大きな恩もあるじゃろう。今彼氏いないなら、デートくらい付き合ってやったらどうじゃ」

「そ、そそそうですね。そう言うことなら仕方ないですね。何せ命の恩、2度も救われた命、これはもう仕方ありません」

 

 何ですかこれ。夢ですか。夢ですか!?

 

 な、何というファインプレイ。何という益虫。

 

 ネギネギ、私は今後一生、貴女を裏切ることは滅多にないと誓います。

 

「アマネはおっけー、と。本命はマス子なんじゃが、どうじゃ?」

「あうっ、私も? あーっと、その、えーっと……。も、勿論オッケーだ」

「おお、良かった。じゃあ、そう返信しとくのじゃ」

 

 ……マス子も、セイさんとデートですか。

 

 いえ、まあ良いでしょう。この女にはどーせ山のように男が寄ってきます。

 

 今のところマス子に卑しさは見受けられませんし、泳がしておいてやりましょう。

 

「あ、それと二人とも」

「何ですかネギ神様」

「ね、ネギ神? いや、これは先達の助言なんじゃが」

「助言ですか。聞きましょう」

 

 お、ラブマスターのネギ神様から神託がある様です。

 

 素直に聞いておきましょう。

 

「デートの際は必ずヘルメットに防弾チョッキを身に付けて、非常食に水分、医薬品は忘れんようにな」

「成る程、出来る女の気配りというヤツですね」

「いやデートの敷居高くない?」

 

 セイさんとのデートはお洒落(フル装備)必須な様です。それくらいお安いご用です。

 

 く、くふふふふふ。棚からぼた餅、降って湧いた絶好のチャンス。

 

 セイさんを、私の100人誑かし計画の記念すべき1人目にして差し上げますよ。

 

「くひひひひひひひ」

「うわっ! アマネの笑いかたキモッ!」

「やっぱアマネは紹介せんほうが良かったかのう」

 

 待っていてくださいセイさん。

 

 私の完璧すぎるデートプランで、貴方の心を支配して差し上げますから。

 

 アマネちゃん以外の女の子なんて目に入らなくしてあげますから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「根岸さん、良い娘だったなぁ……。元気貰っちまった、俺も頑張らんと」

「おいボーッとすんな新入り!」

「う、ウッス!!」

 

 因みに、今日の出来事の結果。

 

「よっしゃ、何かやる気出てきた! フラれたくらいなんだ、やるぞぉ!」

「おう、テキパキ働けぇ!」

 

 当然のごとく、現時点の彼の好感度トップはネギネギとなっていたりする。

 

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