TSクズ娘は百人の男を誑かしたい   作:げれげれ

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2話「はいはいテンプレテンプレ」

 私の名前は傘子(かさこ)美音(あまね)、現役バリバリ女子高生。しっとり長い黒髪で、慎ましい胸に大きめのお尻が魅力の純和風美少女です。

 

 私にはちょっと人とは違う所がありまして、中々に信じがたい話なのですが、どうやら私は100人の男性から好意を持って貰えないと消滅してしまう様なのです。

 

 まぁそれ自体に大きな問題はありません。私の美貌は天下一品、その気になれば男は選り取り見取りです。親友のマス子が言うには声がゲロ以下らしいですが、それは訓練でどうとでもなるでしょう。

 

 そんな私ですが最近、不幸にも凶悪犯罪者に目をつけられまして、日夜ワイドショーで放送されるレベルの大事件の被害者となってしまいました。

 

 あろうことか殺人犯に襲われ、殺されかけてしまったのです。セイさん────私の窮地を救ってくれたあのお方が居なければ、きっと今私はこうして生きていないでしょう。

 

 しかし九死に一生を得て一安心、というようにこの世界は出来ていません。

 

 そんな大事件に巻き込まれてしまった私の学校にはマスコミさんが大量に押しかけてきて、被害者である私を見かけると鼻息荒く詰め寄ってきたのです。

 

 誰だって金になる情報があれば、脇目も降らず飛びつくモノ。きっと彼らは、放送に映えるいい感じの映像を撮ることしか頭になかったに違いありません。

 

 押し掛けてきた人の群れに勝てず、その日は学校から引き返すはめになりました。

 

 私だけならいざ知らず、マスコミの人は少しでも面白いネタを探したいのか無関係な生徒にまで声をかけまくっています。

 

 私の友人のマス子やネギネギも被害にあったみたいで、辟易としていました。

 

『被害者の少女について何か一言を!』

『いつかやると思ってました』

『えっ』

『えっ』

 

 結局、この珍騒動が落ち着くまで私は数日学校を休むはめになりました。

 

 TVインタビューに映った面倒臭そうなマス子の顔が、印象的でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またお前はとんでもない事件に巻き込まれたな」

 

 私が例の大事件に巻き込まれ九死に一生を得てから、3日後。

 

 ようやく出歩ける程度にマスコミが引いていき、私は久し振りにネギネギやマス子と共に登校路を歩んでいました。

 

「今日は家まで迎えに来てもらって本当に助かりました。正直、まだ一人で出歩くのは怖いんです」

「まぁ、そんな目に逢えばなぁ」

「今も、急に豹変した男に襲われないかと、内心ビクビクしてます」

「それで今日は妙におとなしいんじゃな」

 

 殺人鬼に襲われるという経験は、私に思った以上に大きな影響を及ぼしていました。

 

 それに追い討ちをかけるように、マスコミに追い回されてしまった訳で。

 

 そのせいか今迄は平気で町を歩けていたのに、今は人通りの多いところを歩くだけで恐怖心がわいてくるようになっていたのです。

 

 この二人の素晴らしい友人に迎えに来てもらえなければ、不登校になっていたかもしれません。

 

「いやまぁ、百歩譲ったら私たち友達じゃん。それくらいお安い御用さ」

「そうじゃ、四捨五入すれば私らは友達じゃ」

「わあ、ありがとうございます」

 

 優しい級友の厚意に心を温かくなります。持つべきものは親友です。

 

 この二人を裏切る時は、しっかり躊躇うようにしましょう。

 

「それでですね。今度その、お礼がてらお二人をお食事でもご馳走したいと思ってまして」

「おや、珍しい。いったいどんな下心があるんだ?」

「下心というかなんというか。まぁ、今回の事件はもう結構報道されてると思うのですが」

 

 私がお二人を食事に誘うと、マス子は随分と怪訝な声を出しました。

 

 そんなに私が身銭を切るのが珍しいのでしょうか。

 

「今回の事件、どこまで聞いてます?」

「あー、中々に危なかったそうじゃな。殺される寸前で助けてもらったと聞いたわ」

「お前、昔から本当に悪運強いよな」

 

 マス子達は、連日のワイドショーのお陰で今回の事件の詳細を把握している様子です。

 

 これなら、話が早いです。

 

「実は今回、私を助けていただいた方にお礼を言いに行こうと思ってまして」

「ほう?」

「そこで、その方が働いてる飲食店を聞いてあるのですが。私一人だと恥ずかしいというか、えっと」

「……え、恥という概念を持っておったのかアマネ」

 

 実際、女の子一人で餃子のお店に行くのは少し敷居が高いです。

 

 だれか誘って来いよ、ボッチかよと言う目であの方に見られるかもしれません。

 

「それで、そのぅ。お二人へのお礼もかねてお代は出しますので、どうかついてきて頂けないかな、なんてですね」

「ほほーう?」

「いや、うむ。だがそれはお前らしからぬ良い心がけじゃぞアマネ。流石のお前も、命を救われれば恩義を感じるのじゃな」

 

 ネギネギはどうやら、私の話を聞いて得心がいった顔になりました。

 

 彼女は礼儀とかそういうのに煩いタイプです。

 

 普段は私が適当なことを言うとあれこれと説教を受ける羽目になるのですが、今回の件には協力的に動いてくれるでしょう。

 

「私は構わんぞアマネ。一人で飯を食いに行くのも辛かろう」

「ありがとうございます。本当に助かります」

「マス子はどうじゃ」

「そうだなぁ~」

 

 ただ、気になるのがマス子です。私が食事を提案してから、何故か妙な笑みを浮かべているのです。

 

 何故か、癪に障る顔ですね。

 

「まぁ良いか、付き合うよ。今日は部活ない日だから」

「おお、ありがとうございます」

「ま、それに面白いモン見れそうだし」

 

 少し含みのある言い方をして、マス子は口元を抑えています。

 

 何でしょうか。ちょっと嫌な予感がしてきました。

 

「ところで話は変わるのですが、ネギネギ」

「おう、何じゃ」

「お金貸してください」

「……」

 

 まあ気にしないでいましょう、マス子の性格が悪いのは周知の事実です。今更です。

 

 今は、今日の食事代を捻出する為に行動しないといけません。

 

「いくらじゃ」

「一万円もあれば」

「……、まぁ今回は用途がはっきりしとるしな。貸してやる」

「感謝します、ネギネギ。一生親友でいましょう」

 

 やはり、持つべきものは金を持った友人です。

 

 私は何とも言えぬ微妙な顔で財布から一万円札を渡してくれるネギネギに抱き着き、カウンターでアッパーカットを貰ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、此処か。部活帰りに来たことあるわ」

 

 その日の放課後。

 

 私たちJK3人組は、仲良く町内の中華系ファミレス「まんまる餃子亭」に足を運んでいました。

 

「味はどんなもんじゃった、マス子?」

「悪くはねぇよ。少し脂っぽかったけど」

「ここにあのお方が働いて……」

 

 軽くスマホで調べたところ、ここは円形の餃子をウリにしている中華系ファミリーレストランの様です。

 

 ここの店に佐藤さんがラーメン定食を注文してくれたおかげで、私は一命をとりとめたのです。

 

「で、では入ってみましょう。セ、セイさんは居るでしょうか」

「え、調べてなかったの? 店に電話してシフトとか聞いてから行けばよかったのに」

「……」

 

 それもそうです、うっかりしていました。

 

 あの方に会えると思うと、何故か色々とフワフワしてしまいます。

 

「ま、ここまで来たんじゃからとりあえず入ってみよう。そんで聞いた方がてっとり早い」

「そうです、その通りですネギネギ」

 

 この店は、私の家からそんなに遠い場所ではありません。

 

 なので、セイさんが居なかったとしてもまたの機会を狙えばいいだけです。

 

「……えっと、失礼します」

「いらっしゃいませー」

 

 女は度胸。

 

 私は意を決し、先陣を切ってまんまる餃子亭の暖簾を潜りました。

 

 この先に、あの方が待っていると信じて。

 

「3名様ですね。テーブル席をご希望ですか」

「は、はい。ええっと、その」

 

 店に入って最初に目についたのは、優しそうな女性の店員さんでした。

 

 大人のお姉さんといった感じです。

 

「あの、すみません。実は私、とある方に逢いに来まして」

「……はあ」

「数日前、私の危ないところを助けていただいた方で。その方に誘われて、今日は食事に伺ったんですけど」

「あー……。成程。当店の、宮司間の事でいらっしゃいますか」

「は、はい! ぐ、ぐ、宮司間さんは、今シフト中……でしょうか。お忙しい様子でしたら、お礼の品だけでも」

「あー、えー」

 

 私のたどたどしい会話を読み取ったあと、店員さんは眉を八の字にして困り顔になりました。

 

 もしかして、私の件でクビにでもなったのでしょうか。

 

「ええ、おっしゃる通り宮司間はシフト中ですが」

「すいまっせーん! 遅れましたぁ!!」

 

 その時突然、私の背後から大声が響きました。

 

 驚いて、思わず振り返ります。すると、

 

「げ、お客さんもう入って────」

「アホ!」

 

 スパーン、と元気よく女性店員さんにシバかれるセイさんが居ました。

 

 ああ、やっと会えました。私を助けてくれた恩人に。

 

「……シフト時間になっても姿を現さない上に、客前で大声出して入ってくるなこのボンクラがぁ!」

「あ痛テテテテテ!!? す、すんません!!」

 

 そのままセイさんは、女性店員さんに耳を引っ張られて悶絶しています。

 

 痛がっている顔も素敵です。

 

「で? 今日は何で遅れた?」

「その、道端に産気づいたおばあちゃんが居て。急いで近くの産婦人科までおぶっていきまして」

「……」

 

 店員さんはセイさんの言い訳を聞くと、黙ったまま耳を更に捻り上げます。

 

 痛い、痛いと叫ぶセイさんは半泣きです。

 

「はぁ、もういいよ。信じるに値しない戯言みたいな言い訳だが、どうせ本当なんだろう」

「あ、当たり前っすよ。俺、生まれてこの方嘘ついたことはないんで」

「遅刻は常習だがな。良いから着替えてこい、そんでこの娘らの接客してやれ」

「え。あ、ハイ」

 

 はぁー、と女性は大きなため息をついて手を離すと、セイさんを控室に追いやりました。

 

 何でしょう。セイさん、そんなに遅刻が多いのでしょうか。

 

 案外、私生活はだらしないのかもしれません。となると、お礼に色々世話を焼いてあげるのもアリかもです。

 

「あ、あのー……」

「あ、ああすみません。宮司間は支度したらすぐお客様の席に行かせますので……」

「ありがとうございます。あ、ではテーブル席に案内していただけますか」

「はい、よろこんで」

 

 店員さんはすぐに先ほどの丁寧な口調に戻り、にこやかに応対してくださいました。

 

 良かった、これでちゃんとお礼を言うことができそうです。

 

「ねぇアマネ、さっきの男の人が例の王子様?」

「あ、ハイ。私を助けてくれた恩人さんです」

「はー、なんかこう言っちゃあれじゃが。あんまり冴えんのう」

「どこがですか、かなり格好良くないですか? あの方」

「……ふぅん」

 

 マス子やネギネギは、セイさんを見てあんまり好印象を持っていない様子でした。

 

 あんなにイケてるのに、不思議ですね。

 

「老婆が産気づいたって、もう少しマシな言い訳は無いんかのう。絶対嘘じゃろ」

「どうしてそんなこと言うんですか、あの方が嘘つくはずないでしょう」

「いや、だってのう」

 

 ネギネギはどうやら、先ほどのセイさんの言い訳を嘘と思っているようです。

 

 人を信じることのできないなんて、ネギネギは可哀そうな人です。

 

「まぁ遅刻常習は、あんまり褒められねぇな」

「少しだらしないところがあるくらいの方が、かわいらしいんですよ」

「ま、私には関係ないけえ」

 

 そんな会話をしながら、私達は四角いテーブル席に案内されました。

 

 店は清潔で、雰囲気も良い感じです。

 

「では少々お待ちください、宮司間が伺います」

「ありがとうございます」

「あ、宮司間は全力疾走した直後らしいので、汗臭かったら下げますよ。気軽に言いつけてください」

 

 そういうと、女性店員は会釈してメニューを全員に配ってくれました。

 

 そういや、セイさん少し汗かいてましたね。

 

「……もしかして、店員さんはあの言い訳を信じとるんです?」

「ええ、嘘は言ってないと思いますよ」

 

 ネギネギは意外そうに、その女性店員を見つめました。

 

 何ですか、当たり前でしょう。セイさんが嘘をつくはずがないんです。

 

「彼のココ半月の言い訳を教えて差し上げましょうか。某国のテロ行為を前もって防ぐため遅刻、麻薬取引現場に出くわして警察に引き渡すため遅刻、溺れている幼児を助けるため飛び込んで配達失敗、JKを襲っている連続殺人犯に遭遇し助けるため配達失敗etc……。最初のうちは鼻で笑ってたけど、後から後から彼の言ったとおりの事件がマスコミで報道されましてね」

 

 ……。

 

「全部事実だったんですよ、アイツの言い訳……。頭がおかしくなりそうでした、アイツなら産気づいた老婆くらい出くわすでしょうよ」

「えぇ……?」

「貴方もあの男に何か助けられた口なんでしょ。しょっちゅう来るんです、アイツに謝礼持ってくる客……」

 

 ……。ええ、その連続殺人犯から助けられたJKです、ハイ。

 

「すごい頻度で遅刻するし、配達頼むとちょくちょく失敗するし、それでトラブルになって赤字増えるし……。でも、いつも人のためになることしてるからクビにし辛いし……」

「や、厄介すぎるバイトじゃのう」

「……私自身も、アイツに借りがあるからクビにしたくないし。まぁ、そんな迷惑な男なんです、アイツ」

 

 その女性店員はそういうと、かなりくたびれた笑顔を浮かべました。

 

 そっか。セイさん、そんなに人生経験が豊富なんですね。

 

 素敵です。

 

「アマネ、お前の恩人ヤベーもんに憑かれてないか? コ●ン君の生き霊とか」

「と言うか、その事件を全部解決してるのヤバすぎじゃろ」

 

 そんな奴に近づかない方が良いのではないか、とジト目で私を睨むネギネギ。

 

 何を言うのですか。逆にスゴいじゃないですか、逆に。

 

「まぁ良い、私はちっと花摘んでくるけぇ。注文取りに来たら、炒飯定食(チャーテイ)頼んでおいてくれマス子」

「あいよ、行ってら」

 

 ネギネギはそう言うと、席を立ってお手洗いに行きました。

 

 テーブルには私とマス子の二人が残されます。さて、私も注文を決めないと。

 

 メニューを見ると、非常にオーソドックスな中華ファミレスと言った感じです。

 

 どれも、中々に美味しそうです。

 

 

「……さて、アマネ」

「どうかしましたか、マス子?」

「お前、さっきのセイさんとやらに惚れてるだろ」

 

 私がメニューを開いて美味しそうな小籠包に気をとられていると、マス子は突然に妙なことを言い出しました。

 

 ……この女は、突然に何を言っているのでしょう。

 

「はぁ、マス子は案外恋愛脳ですね。何を言い出すかと思えば」

「だってさっきから、ずっとニヤニヤしてセイさん見てるじゃん。ついにお前にも人らしい感情が芽生えたのかと、私は感激してたんだよ」

「別にニヤニヤしてなんかいませんよ。私はその、あれ? 人らしい感情って?」

「端から見ればバレバレだよ。命の危機を救われて、ストンと恋に落ちちゃった?」

「違いますよ、もう。私に芽生えているのは純粋な恩義です」

 

 マス子は大層に面白そうな顔をして、私の方を見つめていました。

 

 やめてください、変な誤解をしないでほしいです。

 

「お前に恩義を感じる部分があるとは思えないけどなー、認めちゃったらどうだアマネ」

「確かに格好の良い方ですが、私はあれです。100人くらい男を転がさないといけないので、誰かに惚れている暇は無いのです」

 

 これは、マス子の性格の悪いところが出ていますね。私をからかうつもりなのでしょう、しかしそうは行きません。

 

「ふーん。じゃあ私が彼を誘惑とかしちゃっても良いの?」

「どうぞどうぞ、好きにすれば良いのではないですか。私には関係ないですし」

「ほう」

「ですがマス子はバスケ忙しいんじゃないですか? セイさんもお忙しい身ですし、年齢差もありますし、やめといた方が良いんじゃないですか?」

「……」

「私としては全然構わないですけどね? その、私はマス子を想ってですね」

「あはは、分かった分かった。悪かったよ、そんなに怒るな」

 

 私からの忠告を一通り聞いたあと、マス子は噴き出して笑っていました。

 

 何がそんなに面白かったのでしょう。

 

「そんなに顔を真っ赤にして怒るとは思わなかったんだ。そっかそっか、お前にもついに春が来たか」

「何ですか。私は怒ってなんかいませんよ」

「はいはい、それより早く注文決めようぜ。もうすぐセイさん来ちまうぞ」

「そうですよ。全く、意味のわからない話をしないでください」

 

 一体何なんでしょうかマス子は。

 

 不快です、とても腹が立ちます。

 

 自分でもよく分からないくらい苛立ってしまいます。

 

「お、見ろよ。丁度セイさん出てきたぞ」

「あ、本当ですね。早く決めないと」

 

 見れば確かに、裏から制服に着替えたセイさんが姿を見せていました。

 

 どうしましょう。マス子の与太話に付き合ったせいで、まだ注文を決めきれていませんでした。

 

 余計な時間を食ったものです。

 

「私は決めたぜ」

「そうですね、じゃあ私は命を救われたラーメン定食を────」

 

 此方に向かって歩いてくるセイさんに手を振りながら、私は取り敢えずの注文を決定したら、

 

 

 

 

 

「きゃっ!?」

「おっと」

 

 

 

 

 

 トイレから出てきて足を滑らしたネギネギが、セイさんに抱き付いて押し倒した瞬間を目撃してしまいました。

 

 ……あ?

 

「も、申し訳ない。ゆ、床が滑ったんじゃ」

「ああ、こっちこそスミマセン。うちの床、油が飛んで滑ること有るんで」

 

 ネギネギはセイさんに覆い被さって、密着しながら頬を赤らめてます。

 

 それは、吐息と吐息がかかり合う距離。ネギネギは恥ずかしそうに、そのまま目を伏せました。

 

 同時に何処かで、バキッという変な音がしました。

 

「怪我はしとらんじゃろうか?」

「大丈夫大丈夫」

 

 ……不思議ですね。何で二人は離れないんでしょうか。

 

 近くないですか。何かネギネギ、卑しい表情(カオ)していませんか。

 

 メスブタですか? 発情期ですか?

 

 何なのでしょう。

 

 

 

「お、おいアマネー?」

「……何です」

「お前、割り箸ソレ」

「……おぉ?」

 

 

 

 あと何故か、私の割り箸が掌の中でまっぷたつにへし折れてました。

 

 どうやらこの箸、腐っていた様です。不良品を置いておかないで欲しいですね。

 

 

「ま、君に怪我がなくて良かった。今から注文取りに行くから、先に座って待っててくれ」

「う、うぅむ。乗っかっちゃって申し訳なかった」

「いや気にするな、羽根のように軽かったよ」

 

 

 ばつが悪そうな顔でネギネギは立ち上がり、そのまま顔を赤らめてます。

 

 そんな彼女を、セイさんは微笑を浮かべて見つめあっています。

 

 ……何で? 見つめ合う必要性が? あるんでしょう?

 

 

 

 

「……」

「落ち着けー? おーい、アマネー?」

 

 

 ……。

 

 何でしょう、煩わしいですねマス子は。

 

 私はこんなに落ち着いていると言うのに。ええ、私の思考回路はクリアそのものです。

 

 

「大丈夫ですよマス子。私はセイさんとネギネギが倒れられたので、少し心配していただけです」

「そ、そうか。今お前、凄い表情してたぞ」

「あはは、気のせいですよ」

 

 

 そして楽しかったですよ、ネギネギ。

 

 貴女との友情ごっこ。

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