TSクズ娘は百人の男を誑かしたい   作:げれげれ

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7話「えっと、どっちが悪者なんだっけ」

 傘子美音、通称カスゴミ。

 

 彼女は息を吐くように嘘を吐き、流れるように裏切り、他人を煽ることが生き甲斐という畜生である。

 

「さてさて、今更謝っても遅いですよ? 貴方達これから、どうされたいですか?」

 

 しかし、1年間このカスと付き合ってみて、分かったことがある。

 

 この女は自己中心的で、他人の嫌がることを平気でやり、何よりも自分の利益が最優先されるクズであるが。

 

「ま、どうしたって許してやりませんケド」

 

 アマネという少女は存外に寂しがり屋であり、だからか身内とみなした人間には甘い。

 

 彼女が従僕(トモダチ)と称する人間は数多かれど、親友と言ってくれてるのは私とネギネギだけ。

 

「私の“親友”に手を出した落とし前。キッチリと付けさせて貰おうじゃありませんか」

 

 そしてアマネは『身内の敵』に対して、普段以上に攻撃的だったりするのだ。

 

 

 

 

「……ジャップらしい、陰険ナ連中だナ。お前ラは群れないと何も出来ナイのか、イエローモンキーが」

「いや、お前が言うな」

 

 ケイリーは、いつの間にか招集されたアマネの下僕たちを睨んで舌打ちした。

 

 集められた顔ぶれは、ウチの生徒だけじゃなかった。よく見れば他校の生徒も混じっている。

 

 そういえば、最近ここらのチームを統一したとか自慢してたっけ。

 

 アマネの奴、いつの間にかここまで勢力を伸ばしていたのか。

 

「負け犬の遠吠えは、浅ましいですねぇ。暴力でしかモノを解決できない人は、いつかこうして報いを受けるんですよ」

「それもお前が言うな」

「さぁて、お楽しみの始まりです。コイツら全員、アナ●擦り切れるまで棒切れ突っ込んで二度とウ●コ出来ない肛門にしてやりましょう!」

「何でそんな発想が猟奇的なんだよ!」

 

 アマネはゾクゾクとした恍惚の笑みを浮かべて、とんでも外道な命令を下した。

 

 楽しんでやがる。この女、私の救援にかこつけて弱者をリンチするのを楽しんでやがる。

 

 こいつ、前に私のことをサディストだの変態だの言ってくれたが、自分の方がよっぽどサドじゃねぇか。

 

「屈強な男を……無理やり羽交い絞めにしてお尻から……くふっ。い、一度やってみたかったんです。そんなのお下僕(トモダチ)には出来ませんからねぇ」

「……お前のその従僕(トモダチ)、ドン引きしてるからその辺にしとけ」

 

 アマネに従わされている不良は、心底気持ち悪そうな顔で主を見つめていた。

 

 そんなんだから、男子からモテねぇんだぞアマネ。

 

「……」

 

 しかし、このクズのおかげでこの場はケイリー達を何とかできそうだ。

 

 ただ、厄介なのが後始末である。ケイリーは蛇のように執念深いので、ここで逃がしたら今後もっと狡猾な嫌がらせをしてくる可能性が高い。

 

 出来れば連中を警察に突き出して、アメリカ本国まで強制送還させられれば良いのだが……。

 

 

 と、そこまで思考が行ったところで、事態は最悪の方向へ急直下した。

 

 

 

 

 

「……ちっ、コレを抜くことになるとは」

 

 

 

 

 ズドン、と鈍い衝撃音が裏路地に響いた。

 

 それは、日本ではまず聞くことのない『暴力的な音』。

 

「ケイリーお前、正気か!」

「抜く気なんて無かったヨ、元々ナ」

 

 いつの間に取り出したのだろう。見れば私たち日本人には馴染みのない、黒光る小型の武器がケイリーの手に握られていた。

 

「が……、お、おぅ……っ」

「う、撃たれた!? 大丈夫か、お前……。血、血ぃぃぃぃぃぃ!!」

「うわああああ! ヨシ坊が撃たれて血塗れになってる!」

 

 そしてケイリーの目の前に立っていた不良の一人が、太腿を抑えて呻き倒れた。

 

 太い血管がやられたのか、そのまま地面に大きな血溜まりが広がっていく。

 

 私の、いやその場の全員の血の気が、引いていくのが分かった。

 

「嘘だろ、お前、銃って……!」

「あン?」

 

 信じられない。まさかこの小物が、ここまでするとは。

 

 この国に密輸して発砲なんてしたら、どれだけの罪になるか分かっているのか。

 

「ただの手銃(ハンドガン)ダロ、何を驚いてイル」

「……ひぃい!!」

 

 それは、アメリカですら喧嘩の時に使用を躊躇われる武器だ。

 

 日本の入国審査は厳しいハズで、普通ならば持ち込むことすら許されない殺人兵器。

 

「銃だ、コイツ銃を持ってやがるぞ!」

「こ、殺されるぅ!」

 

 ケイリーは何と、小銃を隠し持っていやがったのだ。

 

 それを懐に忍ばしたうえで、私を裏路地に呼び出したのだ。

 

「うっそでしょお前ぇぇぇ! マス子ぉ、たす、助けてくださいぃ!」

「わ、馬鹿お前、私を盾にするな!」

「そんなの計算外ですよぉ!! 死にたくない死にたくない、私を殺るならマス子を殺ってくださいぃぃぃぃ!」

「テメー何しに来たんだよ!」

 

 流石のクズもこの展開は予想外の様子で、パニックになって私の背中にしがみ付き半泣きで絶叫した。

 

 こいつ……。

 

「お、お従僕(トモダチ)の皆さん突撃です! やつのハンドガンは見た感じそんなに装弾数なさそうです、弾切れさせて取り押さえてください!」

「ば、馬鹿野郎! そんなこと言ったって、その一発に当たった奴はお陀仏じゃねぇか!」

「うるさいうるさい、良いから私に従ってください! お前ら逃げたら全世界に秘密を拡散してやりますからね! 死ぬのがマシってくらいに追い込んであげますから!」

「く、くそったれ!」

 

 銃の登場に、不良達も顔を青くしている。

 

 それどころか、銃声を聞いて驚いた不良の一部は、パニックになって逃げ出してしまっていた。

 

 当たり前だ。殺されるかもしれないのに、向かっていくヤツがあるか。

 

『ジャップのチンピラ風情が!』

『ビビるなら喧嘩吹っ掛けてくるな!』

 

 集まってきた不良が、逃げ腰になったのを察したのだろう。

 

 ケイリーの取り巻きどもは突如として周囲の不良へ殴りかかり、その体格差でボコボコにし始めた。

 

「ひぃ! この外人強いぞ!?」

「あ痛ぇ!!! 折れた、腕が折れたぁぁぁ」

「あああぁぁんまりだぁぁぁぁぁ!!」

 

 やはり、日本人と西欧人では体格が違う。タイマンでは、勝負になっていない。

 

 ただでさえ銃を向けられパニックになっているのに、こんな有様じゃ勝てるわけがない────

 

「来いよモンゴメリー! 顔面腫れ上がルまでリンチしてヤル!」

「ちっ! 死ねぇケイリー!!」

 

 このままでは壊滅させられてしまう、と考えて私もケイリーに殴りかかった。これでうまく奴の手にある銃を落とさせれば、勝機はあっただろう。

 

 しかし、ヤツは冷静だった。

 

「HAHAHA! 近づいてくれてThank You!」

「ちっくしょう!」

 

 ケイリーは突っ込んできた私に迷わず銃口を向け、ぶっ放した。咄嗟に横っ飛びして直撃は躱したが、掠った右腕が大きく裂けてしまった。

 

 私にボコられた経験が生きているのか、ケイリーに真正面から戦ってもらえない。

 

「ぐぅううう!」

 

 私の体勢は崩れ、地面に激突する。撃たれた右腕を打ち付けてしまい、痛みで悶絶する。

 

 そして、それが運の尽きだった。

 

 激痛に耐えきれず体を硬直させてしまった私は、

 

I'll kill you(ぶっ殺してやる)!」

 

 受け身もとれないまま踞ってしまい、やがてケイリーが3発目の準備を終えて────

 

 

「危ない! やってやりなさい佐藤丸!」

「俺に命令すんな畜生ぉ!!!」

 

 

 流石に死を覚悟したが、アマネ配下の不良が捨て身でタックルしてきてくれたお陰で、なんとか九死に一生を得た。

 

「よ、よよよーし良いですよ佐藤丸! そのまま時間を稼いでください」

「ぐぅう、この俺が何でこんな女の言いなりに……」

 

 佐藤丸と呼ばれた不良の男はケイリーと取っ組み合い、悔し涙を流していた。

 

 彼も、アマネのせいで苦労しているのだろう。だが、今は申し訳ないけど、本当に助かった。

 

「ジャップども、ドウシテ俺の邪魔をスル! お前の脳天にも風穴をブチまけラレタイカ!」

「ソイツにやる分にはご自由に! そして私は勘弁してください!」

「ぐぅぅ! 妹を人質に取られてさえいなければ、こんな女に従わずに済むのに……」

「エェ……? 俺ヨリあくどい事シテル……」

 

 佐藤丸と呼ばれた男は、マジ泣きしてケイリーと取っ組み合っていた。

 

 ……ごめんなさい。アマネが迷惑かけて本当にごめんなさい。

 

「はっはっは、聞いて驚きなさい。この佐藤丸はなんと去年の空手県大会優勝者なんですよ!」

「ナニ!?」

「彼はこの私の配下────“アマネちゃん下僕会(ファンクラブ)”きっての武闘派で、もう10人以上の不良をアスファルトの上に沈めている猛者。いかにメリケンと言えど、この佐藤丸に勝てるわけがないのです!」

 

 アマネはその佐藤丸さんの戦歴を自分の事のように自慢げに話している。

 

 一方で自慢された側の佐藤丸氏は、かなり苦渋の表情で組み付いている。

 

 まぁ、無理もない。だって……

 

「クケケケケケ! 佐藤丸は強いですよー! 怖いですよー!!」

「フン、馬鹿らしい。所詮はジャップ、コイツ程度でチャンピオンなのか」

「へ?」

 

 アマネは気付いていないらしいが、佐藤丸氏はもう絶体絶命なのだ。

 

 さっきまでケイリーが動かなかったのは、アマネの奇天烈さに呆れていただけ。

 

 その気になれば、ケイリーなら……

 

「Fuck!! You!! Jap!!」

「おっ!! ガァ!! ぐあああああ!!」

 

 佐藤丸の組み付け程度、筋力差で一瞬でカタを付けられるのに。

 

 ケイリーは、アメリカンフットボールの経験者だ。とっ組み合いの状態は、むしろ彼の本領である。

 

 この男を倒すには、距離を取っての肉弾戦がセオリー。ケイリーと組み合った時点で、ほぼ喧嘩は負けなのだ。

 

「え……? 嘘ですよね、佐藤丸……?」

「ふん、他愛もない」

 

 哀れなり、佐藤丸。

 

 彼は妹を人質に取られて銃を持った相手に戦わされた挙句、顔面を膝蹴りされ失神してしまった。

 

「ち、使えませんね。じゃあ次、田中丸に鈴木丸に齋藤丸あたり突っ込みなさ────」

 

 そして、アマネは致命的な事態に気付かない。

 

 佐藤丸と呼ばれた不良が、アマネにとって最後の砦だったという事に。

 

「え、あれ? 他の、皆さんは?」

「HAHAHA、サッキまでの威勢はどうシタ、ジャパニーズガール。誰の肛門をFuckするッテ?」

「あれ……。あれ!? どうして誰も居ないんですか!?」

「逃げタみたいダゼ、とっくにナァ」

「え、嘘? あ、あ、あの薄情者ども~!」

 

 佐藤丸が倒れた今、アマネを守る不良はもう一人もいなくなっていたのだ。

 

 既に集まった面々のほとんどは、ケイリー達に気絶させられたか、銃に怯えて逃げ出してしまっていた。

 

「サテト。じゃあ、お楽しみと行こうジャなイカ」

「ま、待ってくださいケイリー。落ち着きましょう、話し合いをしましょう。そうです、愛です。ラブ・アンド・ピース、でしょう?」

「HAHAHA」

 

 ケイリーは、奴の仲間は、私とアマネが逃げられないようにグルリと四方を囲っている。

 

 どこにも、逃げ場はない。

 

「わ、分かった! 分かりました、金ですね? 任せてください、私はこう見えてもお金を集めるのは得意なんです。配下にカツアゲさせて、貴方に上納しましょう」

「……デ?」

「月、10万……。いえ、違います嘘です、100万円! 毎月100万円、用意して貴方に献上します! 嘘じゃないです、本当です! それで一生、ケイリー様に忠誠も誓います!!」

「……ソレデ?」

「ですから……ですから命だけは勘弁してくださいぃぃぃぃ!!」

「いい加減ダマレ、コノ外道ォ!!」

 

 ケイリーに慈悲を乞おうと泣きながら土下座を始めたアマネを、思いっきり殴りつけるケイリー。

 

「……きゅう」

「ふ、悪は滅ビタ」

 

 そしてアマネは気を失い、ケイリーは勝ち誇ってアマネを見下した。

 

 ここに、アマネとケイリーの勝敗は決した。

 

 ……なんだろう。

 

 ケイリーは、私を呼び出してリンチしようとした悪側で。

 

 アマネは今回、そんな私を救うべく助けに入ってくれた善側なのに。

 

 そのアマネが悪者にしか見えないのは何でなんだろう。

 

 

『さあて、いよいよメインディッシュだ。モンゴメリー、お前の番だぜ』

『……』

 

 

 気を失ったアマネを足蹴にして、ケイリーは私に向き合った。

 

 ……さっきの発砲音が鳴り響いてから、それなりに時間は経っている。

 

 もう少しすれば、警察の人が来てくれるかもしれない。

 

『死ぬまでその顔面、殴り続けてやる』

『おいケイリー、そろそろポリスが来るぜ。早いところ、車に連れ込んじまおう』

『だな。さて、抵抗するなよ』

 

 後ろに2人、右に1人、正面にケイリーとアマネを抱えている男。

 

 思いっきり抵抗すれば、何とか時間を稼げるかもしれない。

 

 誰かが警察を呼んでいてくれれば、もしかしたら助かるかもしれない。

 

『おいモンゴメリー。お前のクズな友達の顔面をフランケンシュタインにされたくなければ、抵抗するんじゃねーぞ』

 

 アマネを抱えている男は、刃物を取り出してその顔面に当てていた。

 

 そして刃が、クズの頬を掠める。

 

 日本人形のような端正な顔立ちの頬に、薄い切れ込みが入った。

 

『ふん、ばかばかしい。アマネみたいなクズが人質になるかって話だ』

『やっぱり? じゃ、力づくでボコしてやるだけだ』

 

 私はふぅ、と小さく一息ついた。

 

 アマネなんぞに、庇い立てする価値はない。この世から消えてくれた方が、多くの人のためになるくらいだ。

 

 ケイリーもその返答を予想していたようで、ニヤニヤと笑いながら銃を構えこちらに向ける。

 

 そして私は意を決し、ゆっくりとケイリーに顔を向けて、

 

 

『……でも、やっぱり友人なんだ。ソイツ』

『ほう?』

『アマネだけは開放してやってくれ。私は抵抗しない、黙ってお前らについてくから』

 

 

 その場で、頭を下げてケイリーに土下座した。

 

『お願いだ、ソイツは置いていってやってくれ。アマネは本当に関係ないんだ』

『……変わらねぇなモンゴメリー。お前は、アメリカでもそうだったな』

 

 これでいい。私は、ここで大暴れしない方がいい。

 

 だって、ここで私が大暴れしたら、きっとアマネは酷い目に逢う。

 

 

 そもそも、もう私に助かる方法なんてないのだ。

 

 運よく警察が間に合って私たちが保護されたとしても、ケイリーは執念深く狡猾だ。

 

 いつか、最悪の方法で私に復讐しにくるだろう。

 

 それこそ私の家族や友人も、巻き込むような最悪の方法で。

 

『お前はいつだってトモダチ想いで』

 

 だから、これが一番良い方法だ。私もとうとう、報いを受ける日が来たのだ。

 

 人を殺し、異国へ逃げ出して、のうのうと楽しい日々を送っていたツケが来たのだ。

 

 私を嬲り、痛めつければ、ケイリーの復讐心も満たされるだろう。そうすればきっと、私の大切な人たちに牙は向けられない。

 

 大好きな両親に、バスケ部のみんなや、ネギネギ。みんなが傷つけられることはない。

 

『友情のためなら人殺しだって厭わない』

 

 ケイリーは皮靴で、私の頭を踏みつけた。

 

 ガツン、と私のデコが路上に打ち付けられる。

 

 脳が揺れて吐き気がするが、私はじっと耐えた。

 

 

『そんなお前が一番嫌がる方法って、こうだよなぁ』

 

 

 しかし、そんな私の態度はケイリーにとって不快だったようで。

 

 ケイリーは額に血管を浮き出したまま、私の首筋を掴み上げ体ごと持ち上げると。

 

 

『その女、こっちに持ってこい』

『はいよ、ボス』

『……っ! やめ────』

 

 ケイリーは意地の悪い笑みを浮かべ、アマネへと銃口を向けた。

 

 

 

 そこからの光景を、私は一生忘れることはできないだろう。

 

 私は脳に血が足りず、ガポリと漏れる唾液の飛沫を垂らして叫ぶ。

 

 やめてくれ、やめてくれと声にならない声を上げる。

 

 連中はそんな私をあざ笑いながら、目を閉じてピクリとも動かないアマネの口腔内に、黒い異物が挿入していく。

 

『HAHAHA! 大事なお友達の顔が破裂する瞬間、見せてやるよ』

 

 私はジタバタと、僅かな余力でケイリーを蹴り飛ばしてみるが、何の抵抗にもならない。

 

 目がかすむ。息が苦しい。全身に力が入らない。

 

『やめ、て、くれ────』

 

 やがて、薄れゆく意識の中。

 

 炸裂するような金属音とともに、ビシャリと温かな液体が飛び散り────

 

 

 

 

「ラーメン定食」

 

 

 

 そして何故か、その飛び散った液体から、香ばしい()()の香りが漂ってきて。

 

 やがて首に加わっていた圧力がなくなり、私はそのまま地面に尻もちをついた。

 

 そして目を開くと、

 

 

「一丁お待ちぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

「what the fuck!!?」

 

 

 ラーメンの丼を頭から被ったケイリーが、顔面を押さえて絶叫している姿があった。

 

 

「アンタら佐藤さん……、な訳ないか。どう見てもも、西欧系の顔立ちだもんな」

「Fuck! Oh、what the fuck!!」

「やっぱおかしいよなぁ。佐藤さんの住所に来たはずなのに、裏路地しかねーし」

「へ……? 何で、え?」

 

 呆然として、事態が何も呑み込めない。

 

 その時の私から搾り出てきた言葉は、疑問符だけだった。

 

「おー。誰かと思えば、こないだウチに食べに来てくれた娘じゃん」

 

 そして聞き覚えのある優しい声が、私の頭上から響いた。

 

 見上げれば、宮司間(ぐうじま)清太(せいた)────アマネの想い人にしてその命をも救った恩人が、私の目の前に中華料理人風の制服で立っていた。

 

「……ふぅん、成る程」

 

 彼は、そのまま路上に尻もちをついた私の顔を見て。

 

 私の血がダクダクと止まらない右腕と、ケイリーが手に持っている銃を見て。

 

 

 

「状況は分かった。後は任せろ」

 

 

 私を守る様に振り返ると。

 

 鷹のように獰猛な鋭い目で、ケイリー達を睨みつけたのだった。

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