―ホロライブ会議室―
「……皆集まってるね、それじゃあ話を始めよう」
前回の終わりにフブキがはあとを会議室に呼び、其処に集まったホロメン全員による緊急会議が始まる。内容は勿論、佐々木玲二に関する事だ。
「長い事白上達はレイくんの貞操を賭けて水面下で戦ってきたワケだけど、この度それが破綻してしまった。そう……メルメルとちょこ先生によって」
フブキがそう言うとホロメン達は一斉にメルとちょこを睨み付ける。二人はそれがどうしたと言わんばかりの余裕な態度を見せ、はあととわためも我関せずといった感じで座っていた。
「……ねぇちょこ先、一体どういうつもりなのさ?兄ちゃんの貞操はいつもスバル達がこっそりやっていた対決法で勝った人がチャンスを貰えるって筈だったのに、それを無視して兄ちゃんを襲ったの?」
「メル先輩もどうして妻であるラミィに黙って夫を襲ったんですか?」
「いや玲二さんはラミィの旦那じゃ……すみません、何でもないです」
スバルはちょこを、ラミィはメルを問い詰めていくがそれでも二人は何も言わない。その間ポルカがラミィに指摘するもまるで鬼の形相のような表情に怯み下がってしまう。
「それだけじゃない、白上達が夏休みで帰省してるのを良い事にはあとちゃんとわためもレイくんに迫ったでしょ?」
「……えぇそうよ。あの日私とわためはダーリンと関係をもったわ」
「……わためも否定はしないよ」
フブキの問い詰めにはあととわためは否定せずにあっさりと認める。それに対し他のホロメン達の苛立ち度が更に上がっていく。
「……それに関しても色々問い詰めたい所だけど、まずはちょこ先生達から話を聞かないとね。ねぇ、何で二人とも白上達に抜け駆けしてレイくんに迫ったの?」
「……簡単な事よ、この争奪戦に何の意味もなさない事が分かったからね」
「?それってどういう……」
「……玲二君の貞操が既に誰かに奪われてたからだよ」
『ッ?!!!』
メルから言われた一言にホロメン一同は驚愕する。自分達が結ばれる前に玲二は既に誰かと関係を持っていた事を信じられずにいた。
「そ、そんな、まさか玲二様が……」
「る、るしあはそんなの信じられない!ちょこ先生、それって玲二さんが見栄張って言っただけじゃ……?!」
「玲二様がそんなつまらない見栄張る人じゃないのは皆知ってるでしょ?あの人はそう言った見栄張るのが嫌いな人なんだから」
るしあは玲二が見栄を張っただけと言うがちょこはこれを真っ向から否定する。玲二は元より自分でも他人でも見え透いた見栄を張るのは嫌っているのはホロメンなら誰でも知っている事だ。
「そ、それじゃあ玲二さんは一体誰に貞操を奪われたんですか?!」
「それは……わからない。玲二君はホロライブに正式雇用された頃に一緒にいた娘と間違ってお酒を飲んでそのまま流れでしちゃったって……」
「そ、そんな、それじゃ一体誰がマスターの貞操を奪ったか分からないって事……?」
自分達も知らなかった事実、玲二の貞操喪失。しかしその相手が一体誰なのかが分からない為、ホロメン達は行き場のない苛立ちを感じていた。しかし……
「……ウチ、一人だけ心当たりがある」
「……あたしも、間違いじゃなければあの人しかいないね」
『?!』
沈黙を破るようにミオとぼたんが口を開いた。どうやら二人は玲二の貞操を奪った娘に心当たりがあるようだ。
「どういう事ミオ!?レイくんの貞操を奪った相手が誰だか分かるの?!」
「うん……その人大学時代のレイさんの後輩でウチの先輩に当たる人だったんだけど、最初はよくレイさんやウチ等とも絡んでたけどいつの間にかウチ等を避けるように離れていったんだよね。タイミング的にもレイさんがホロライブに正式雇用された頃だったし、今思えばウチ等から離れたのもそう言う事だったのかも……」
「そ、それでミオ先輩、ししろん!その人は一体誰で、今何処にいるの!?」
「……多分皆よく知ってる人だよ。ロボ子先輩に至ってはつい最近会ってるし」
「?ボクが最近あった事ある人?」
玲二の貞操を奪った相手は此処にいる全員が知っていて尚且つロボ子が最近会った事がある人物、そうなると答えはかなり限られて来る。
「そ、それってつまり他のアイドルかその関係者って事?!」
「ねぇミオちゃん教えて!その人は一体誰なの?!」
「……レイさんの貞操を奪った相手、それは恐らく……」
―その頃、街角―
「ふわぁ……流石にちょっと寝過ぎたか?」
最近色々有りすぎて気持ちを落ち着かせる為に久しぶりに一人で街に出たは良いが……特にやる事もねぇな。なんだかんだ皆と一緒にいる時間が長過ぎたせいか一人の過ごし方を忘れかけてる。
「……ホント、俺って何やってんだろうな。いっその事あいつ等が俺の事見限ってくれればどれだけ楽か……」
流されたとはいえ俺は四人のアイドルと関係を持ってしまった。それは世間的にも許される行為じゃない。勿論何かあった時は責任を取る覚悟ではいる。だが一番問題なのは俺自身の気持ちが浮わついている事だ。正直俺は今まで誰かを恋愛の意味で好きになった事がないし、もしかしたら人を愛するという心が欠如してんじゃないかって思った事もある。そんな俺があいつ等の想いに応える資格はあるのだろうか……
「……ってダメだ。また負のスパイラルに呑まれかけたな。あいつ等にはとにかくちゃんと謝罪しないとな。許されなくても仕方ないが、それだけは絶対にしないと」
そうだ、やってしまった事には責任を、ケジメを着けなきゃいけない。例え職や信頼関係を失う事になってもそれだけは男としてしないとな。それならその謝罪文を考える為にも落ち着けるカフェにでも行くか。
「あ、玲二!久しぶりだね、こんな所で会えるなんて!」
「え?あ、お前は……」
突然後ろから声をかけられ、振り向くと其処には現在人気のアイドルにして俺の大学時代の後輩だった女の子……
「ハロー、ミライアカリだよ。なーんてね♪」
……『ミライアカリ』がいた。
―戻って会議室―
「アカリちゃん?!アカリちゃんってあのミライアカリちゃんの事?!」
「アカリさんって玲二さんの後輩だったんですか?!」
「うん、恐らくだけどタイミング的にも交流的にもレイさんと関係を持てたのはあの人しかいない筈だから」
「あの人在学中からアイドル活動していたし、レイっちともその時から仕事の事もあって結構絡んでいたんだよね」
玲二の貞操を奪ったと思われる娘がミライアカリ。それを聞いたホロメン達は動揺を隠せなかった。まさか自分達もよく知ってるアイドル、それも現在活躍中のトップアイドルだとは誰も思ってもいなかったのだから仕方ないだろう。
「でも、確かにそれならこの間の収録での言葉も納得できる。『そう言えばそっちのスタッフに佐々木さんっているよね?どう、元気にしてる?』って」
「面識のないスタッフを気にかけるなんて普通は変だけど、面識があるなら話は別……これはアカリちゃんに直接話を聞く必要があるね」
「なら今からアカリちゃんの事務所に行ってアカリちゃんに会えるよう取り繕って貰おう。玲二君にも連絡をとって皆で話を……」
―ガチャッ―
「おぉ、皆此処にいたか。丁度良かった」
そらがこれからの事を決めようとしている中、会議室にYAGOOこと谷郷社長が何やら書類を持って入ってきた。
「?YAGOO、一体どうしたの?白上達は今レイくんの事で話を……」
「実はその佐々木君の事で大事な話があるんだ」
「大事な話、ですか?」
「あぁ、これは事次第では彼がホロライブから……君達の元からから離れてしまうかもしれないんだ」
『?!!!』
玲二が自分達の元からいなくなる。そう聞いたホロメン達は絶望の表情を浮かべるのであった。
―その頃、とあるカフェ―
「……にしても久しぶりだなアカリ、直接会うのは二年ぶりか?」
「そうだねー、もうそんなに経っちゃったかぁ。時の流れは早いねー」
あれから俺達はカフェにやって来て二人でお茶をしていた。俺は普通にコーヒーとホットサンドを、アカリはミルクティーとチーズケーキを頼み、食事をしながら昔話を始めていた。
「……ねぇ玲二。実はアカリね、ずっと玲二に謝りたかったんだよね」
「謝る?お前、俺に何かしたのか?身に覚えがないんだが」
「うん……あの日の事、アカリと玲二が酔った勢いでしちゃった時の事……」
……あの時の事か。確かにあの時アカリがコンビニでジュースと間違えてカクテルを買ったせいで起こってしまったがあれはアカリのせいじゃないだろ。
「アカリ、あの時の事は俺も悪かったんだ。酔った勢いとはいえ俺はお前を……」
「違う!そうじゃない!……そうじゃないの」
そうじゃない?一体どういう事なんだ?
「……実はね、ジュースと間違えたって言うのは嘘なんだ。アカリ、最初から分かっててカクテルを買って玲二に飲ませたんだよね」
「な?!お前、どうして……」
「……怖かったんだ、玲二がいつの間にかアカリの事を忘れるんじゃないかって。玲二の周りには幼馴染みのフブキちゃんに同級生のぼたんちゃん、後輩のミオちゃんにホロメンの皆がいる。そんな中でもしかしたら玲二の中からアカリが消えちゃうんじゃないかって思ったら怖くなって……」
お前、そんな事思ってたのかよ?確かに俺の周りにはいつだってあいつ等がいたけど、だからと言ってお前の事を忘れるなんて……
「……だからあの日アカリは玲二にジュースと間違えたフリをしてカクテルを飲ませたの。玲二がお酒に弱い事は前から知ってたからね。でも……お酒を飲ませて酔った勢いでしちゃって、その後酔いが覚めた玲二から謝られた時に自分のした事が許せなくなって……だからアカリ、今まで玲二の前から姿を見せないようにしたんだ」
……そう言う事だったんだな。確かに冷静に考えたらジュースとカクテルを間違えるワケがないよな。こいつは其処までして俺に自分を求めて欲しかったのか……
「成る程な……だけど何で今になってそれを教えたんだ?」
「……謝りたかったと言うのはホントだけど、それと同時に玲二に伝えたい事があるの」
伝えたい事?一体何を……
「……玲二、アカリだけのモノになって。これからの人生をアカリと一緒に歩んで欲しいの」
「ッ?!……お前、それって俺にホロライブの皆を見捨てろって事か?」
「そうだよ、玲二はアカリが守る。だから玲二の全てをアカリに頂戴」
こいつ、本気で言ってるのか?以前ヒメヒナの二人にも似たような事を言われたがあの時とは違う、こいつは明確的に俺をホロライブから引き離して自分のモノにしようとしている。
「……悪いがそれは出来ない。俺はまだやるべき事が残ってる、それを果たすまでホロライブを辞めるワケにはいかないんだ」
「うん、玲二なら多分そう言うと思ってた。だから、アカリはこれで玲二を勝ち取るつもりだよ」
そう言ってアカリはスマホを取り出し其処に写る画像を俺に見せてきた。『ガンダムビルドライバーズカップ』何だこれ?
「玲二、GVWって知ってる?」
「あ、あぁ、『ガンプラバーチャルウォーズ』略してGVW。アニメのビルドダイバーズのように自分で作り上げたガンプラを使って戦う次世代型バーチャルゲームの事だろ?確か二ヶ月後に正式稼働するみたいだが、それがどうしたんだ?」
「そのGVWの開発チームとホロライブが共同で行う大会、それがこのビルドライバーズカップってワケ。その大会の告知と内容が今朝うちの事務所に送られてきたの、読んでみて」
ホロライブと共同?そんな話聞いてないぞ。とにかく俺はアカリに言われ画面をスライドさせ大会内容を確認する。何々……
ガンダムビルドライバーズカップ
この度GVWの正式稼働実装日が決定した事を記念しホロライブと共同で大会を開催する事に決定致しました。
参加条件は二つ、一つはアイドルである事、二つ目は自身で組み上げたガンプラを所持してる事、この二つのみです。
大会は二回に渡る予選を勝ち抜いた64名によって本戦トーナメントを行います。
優勝された方にはホロライブから優勝トロフィーと賞金1000万円を贈呈、更に副賞として❬ホロライブスタッフリーダー佐々木玲二から可能な範囲で願いを一つ叶えて貰えます。❭
皆様のご参加をお待ちしております。
「ってちょっと待て!?何だこの副賞って?!そんな話聞いてねぇぞ!?」
まず大会やる事自体聞いてねぇし、そもそも何で当事者がいないのに何で勝手に副賞にされてるんだよ?!
「と言うワケだからアカリも当然この大会に参加するよ。優勝したら玲二を手に入れるチャンスだからね」
「ちょっと待てよ!俺はこの副賞を許可したワケじゃ……!」
「まだ分からないの玲二?この告知メールはアカリの事務所に送られてきた。つまりは、他の事務所にもこのメールは届いているんだよ。その中にはアカリやホロメン達のように玲二の事を本気で欲しがってる娘もいる、そんな中でこの副賞はありませんでしたなんて言ってみなよ?直ぐに経営陣は叩かれ責任を取らなきゃいけなくなるんだよ」
ぐっ……?!だ、だけどこんな俺の意思を無視した内容なんて……
「それだけ玲二の存在は周りに影響していたんだよ。だからこそアカリは誰にも負けたくない、全力で玲二を勝ち取ってみせる。今日はそれを言いたかったんだ」
そう言うとアカリは自分の代金を置き席を立つ。
「大会は正式稼働の一ヶ月前、つまりは来月に行われる。その時になったらまた会おうね、玲二」
アカリはそれだけを言い残して店を後にした。本当にどうしてこうなってしまったんだ……
……いや、そんな事よりまずは社長に話をしないと!何でこんな事をしたのか問い詰めなければ!
俺も店員に代金を渡し急いで事務所へと向かうのであった。
―戻って、会議室―
「ちょ、ちょっと待ってよYAGOO!何でレイくんの許可無しにそんな事勝手に決めたの?!」
「そうですよ!こんな事が許されるワケがない!」
ビルドライバーズカップの内容を聞かされ副賞に玲二が賭けられている事にホロメン達は激怒し社長を問い詰めていた。
「……理由は二つある。一つはこれまでに他の事務所から佐々木君の移籍、謂わば引き抜きの話が多数あったためだ。こうしたチャンスを設けなければ向こうも納得はしないだろう」
「だからと言ってこんな玲二さんの意見を無視するような事を「二つ目は佐々木君の為だ」……!玲二さんの、為?」
「そうだ、聞けば君達の中には既に彼と関係を持った者がいるみたいだね。君達からすれば自分を愛して欲しかっただけかもしれない、だが彼からすればそれは只の重圧でしかないんだ」
『!?』
重圧、自分達の想いがそのように言われる等ホロメン達は思ってもいなかった。
「責任感のある彼の事だ、何かあった場合は如何なる事態も受け入れる覚悟はあるだろう。だがそれは度を過ぎれば彼自身がその責任に押し潰され崩壊するだろう。それは私にとっても親友の息子が苦しむ姿を見るのは心苦しい」
「そ、そんな……」
「だからこそ私はこの大会に全てを賭ける事にした。この大会は謂わば佐々木君の横に立つに相応しい相手を見つける為のモノだ。彼を本当に求めるのなら、この大会に勝ち進むしかない」
社長から言い渡された正式な玲二争奪戦。これを勝ち進めなければ玲二はホロライブから、自分達の元からいなくなってしまう。そう思うと皆身体の震えが止まらなくなっていた。
「大会は一ヶ月後、それまでに君達も自分のガンプラを用意したまえ。そして当然だがこの大会迄の期間は彼に頼るのは禁止、もちろん家に行くのもだ。私からは以上だ」
「あ、ちょっとYAGOO……!」
フブキが社長を引き留めようとするが社長はそのまま話を聞かず会議室を後にした。そして会議室は暫く沈黙に包まれてしむう。
「……どうするんですか、これ?」
「レイさんの争奪戦がまさかこんな形で大事になるなんて……」
今までは多少の介入こそあったものの事務所内だけで行われていた玲二争奪戦、それが今や各アイドル達も巻き込み拡大してしまった。
「……余帰る」
「え、あやめ?帰るってどうして……」
「決まってる余、帰って大会用のガンプラを作る。この大会に勝てば玲二様とずっと一緒にいられる、なら参加しない理由はないんだ余」
あやめはそう言うと会議室を出て家に帰ってしまった。そして……
「……そうだね、僕も帰ってガンプラ新しいの作らないと」
「おかゆ!ならこおねも一緒に……」
「何言ってるのころさん?この大会はさっきYAGOOが言った通りレイくんに相応しい相手を決める為のモノ、つまりは個人でやらなきゃいけないんだよ。要は僕もころさんも、皆も今から敵同士って事」
「そ、そんな……?!」
「僕はこの大会で優勝するよ。そしてレイくんとずっと一緒に暮らすんだ」
おかゆも皆に宣戦布告をして会議室を出ていく。そして他のメンバーもそれぞれ大会の準備をするために帰っていき、残ったのはフブキとミオだけとなった。
「……ね、ねぇフブキ、フブキはどうするの?やっぱり参加する…よね?」
「……当たり前だよ。アカリちゃんやちょこ先生にメルメル、それにはあとちゃんにわためにまで先を越されたんだよ。もう絶対に、誰にもレイくんを奪わせたりしないんだから」
「……そうだよね。でも、ウチも負けるつもりはないからね」
二人も互いに譲れない想いをぶつけ、新しいガンプラを作る為に会議室を後にする。
そして……
「ねぇヒナ!この大会に勝てば玲二くんを手に入れられるって!」
「うん!ヒナとヒメがどっちか優勝すれば玲二くんが工務店に来てくれるね!」
それぞれの思惑が入り乱れ……
「フッフッフ、遂に僕の元にご主人様を呼べる最大のチャンスが来た!」
「ご、ご主人様がのりプロに……?!こ、これは……絶対に勝たなくては!」
戦いの火蓋が……
「フフフ、待っててね玲二。シロが玲二を迎えに行ってあげるね♪」
切って落とされた。