死の恐怖と決断
岩陰に隠れてからそっと外を覗く。
そこにはさっき蜘蛛ちゃんが糸で捕まえたけど、トドメを刺し損なった蜂が拘束から逃れようともがいていた。
そして、そこにゆっくりと近づく蛇の姿。
〈エルローバラドラード LV5 ステータスの鑑定に失敗しました〉
上層にもいたけど、かなり強くて狩るのにはかなり苦労した。
ここにはこんなのがポンポン出てくるのか⁉︎
今はさっき魔法を使いまくったせいでMPが少ない。
こっちに気付くな…
蛇はゆっくりと蜂に近づいていく。
けれど、蛇が蜂に何かすることはなかった。
正確にはできなかった。
凄まじい速度で何かが蛇の体を引き裂いた。
((は?))
突然の出来事に固まる。
あの蛇が、まるで紙切れのように、簡単に細切れにされた。
頑健な鱗に守られた、あの蛇が。
私と同等の素早さを持つ蛇が、反応さえ許されずに。
〈地龍アラバ LV.31 ステータスの鑑定に失敗しました〉
それは、悠然とそこにいた。
龍という名前とは裏腹に、そのフォルムは狼なんかに近い。
大地を踏みしめる四肢。
長く伸びた尾。
翼はない。
そこには、威風堂々たる龍の姿があった。
やばい。
魔物としての本能、人としての理性、魂からの叫び、そのどれもが声を揃える。
あれはダメだ。
絶対に勝ち目がない。
そもそも、勝敗とかそんな次元で相手ができない。
あれから見たら私たちは、ただの餌にしか見えない。
獲物ですらない。
視界に入った時点で喰われるのが確定する。
それだけの隔絶した存在だ。
地龍アラバは、バラバラになった蛇を一つずつ咀嚼していく。
私たちは必死で息を潜める。
《熟練度が一定に達しました。スキル『隠密LV1』を取得しました》
うるさい!
お願いだから黙ってて!
あれに気づかれたらどうするんだ!
地龍アラバは、蛇を咀嚼し終えると、蜂には目もくれずに立ち去っていった。
た、助かった。
最後までこっちに気付かなかったのか、それとも気づいてて見逃されたのか、どっちかわからないけど、とにかく助かった。
死にそうな目には何度もあってきたけど、あそこまでヤバいのは初めてだ。
思い出すだけでも怖い。
ダメだ。
あんなのが徘徊してるこのエリアは、何としてでも早急に脱出しないといけない。そうでないと死んでしまう。
(蜘蛛ちゃん…)
(……)
私でも死の恐怖を感じた。私よりもステータスが低い蜘蛛ちゃんは私が感じた恐怖の比にならないくらいの恐怖を感じただろう。
(モコちゃん、アレは無理。絶対に勝てない。この縦穴を登るしかない。)
(うん。私も同意見。でも、アイツはこのエリアを徘徊してる。またここにくる。それまでにあの蜂たちを突破して上に上がれる?縦穴を登るには安全な巣を作りながら登るのが一番。でも、その途中にアイツが来たら?前来た時にはなかった巣があれば壊そうとするはず。そうしたら、今度こそ目をつけられて死んでしまう‼︎)
(じゃあ、あんな化け物がいるエリアを探索するって言うの⁉︎)
そんなのは自殺行為になるのはわかってる。
でも…
(アイツはここにまた来る。それから逃れるには探索して他の道を見つけるしかない)