とあるオタク女の受難(魔法科高校の劣等生編)。   作:SUN'S

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第13話

△月∧日

 

早朝、ようやく帰ってきた娘は開口一番に「ただいま。あとお母さんってすごいね」と言われた。とくに誇れることはしてないと思うけど、娘に褒められてすごく嬉しい。

 

友達となにかあったの?

 

それとなく聞けば「んーっ、今は秘密かな?」なんて曖昧に言葉を残し、自分の部屋に入ってしまった。あっ、そういえば縫いぐるみを放り込んだまま放置してたの忘れてた。

 

たぶん、きっと喜んでくれるはずだ。ちょっとベッドを独占してるけど、あれは意外にも柔らかくて抱き締めるのには適していた。

 

まあ、普通に寝るときは邪魔だな。

 

元輔さんがこっそりと作っていたのは知ってるし、材料を余さず使うのは良いことよ。それでも娘の部屋の二割を独占する縫いぐるみはダメだと思う。

 

しかし、あのクマと戯れる娘を覗き見れるのは楽しく素敵だ。どこか悔しそうにクマのお腹をペチペチと叩きながら「これ、やわらかすぎるうぅ……っ」と言葉を漏らす娘は最高だ。

 

もっと近くで見たいけれど、あの子も年頃の女の子なのだ。こっそり、絶対にバレないように見るだけで我慢するとしよう。

 

△月∨日

 

なにやら実家にある秘伝書を盗み出そうとした不届きものがいるそうだ。まったく拝郷の持っている秘伝なんて、それほど凄いものじゃない。

 

あんなものは単純に文字として書いてるだけ、私達の家に必要なのは「死」その物を見つめ直し、自らを修羅の道へ落とす覚悟だ。

 

もっとも私は当主に必要とされる死生眼は持っていない。あれは何百人と殺し続けて、ようやく手に入る代物だ。

 

私は元輔さんと出会ったおかげで冥府魔道を歩むことなく拝郷の当主を務められているが、実家の奴らは「あの眼は戦いの中で培われ観察眼だ、いずれ必要となる」と言ってくる。

 

いくら観察眼を鍛えようと現代の戦いにおいて必要なのは守る覚悟だ。秘伝書にあるからと言っても死生眼は、ただの観察眼に代わりはない。

 

むしろ心配なのは秘剣の秘伝書だ。

 

あんな誰でも使える剣技を盗んだところで、まともに実戦で使えるヤツはいない。たとえ使えるやつが現れても破る技は口伝で教わる。

 

△月∠日

 

これは、なんとも言えない。

 

私の娘が送られてきた秘伝書を読んでしまい、次の当主にも抜擢された。それだけはダメだ。私は自衛のために人を殺す技は教えるが、あの秘剣は絶対に教えたくなかった。

 

そんなことを後悔しても遅いのは分かっているが、それでも娘にだけは知られたくなかった。我が家の必殺技は騙し討ちじみた技だなんて…。

 

やっぱり、怒ってるかな?

 

そう仕事中の元輔さんに電話して聞くと「まあ、昔の剣術は騙し討ちを取り込むことが多かったのは聞いているよ。いっそのこと信乃に教えて、自分なりに改良を加えさせてみれば良いんじゃないかい?」と言われた。

 

たしかに、そうだな。

 

ちょっと卑怯な技ではあるけれど、あれだって使えば実用性はあるんだ。わりと使える場所は限定されてるけど、ほんの少しは役立つ技ではある。

 

まあ、私のは古式魔法と併用して使えるように改良を重ねて、やっとの思いで編み出した本当の秘剣なのは事実だけれど。

 

よし、私の秘剣を教えよう。

 

あの秘伝書はカモフラージュで、本当の秘伝書は当主が人知れず伝授する。そう娘に納得してもらわないと母親の威厳が損なわれるかもしれない。

 

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