とあるオタク女の受難(魔法科高校の劣等生編)。 作:SUN'S
▽月〓日
早朝、第一高校の近くで呂剛虎と思わしき人物を発見したと報告された。すごいビッグネームが観光に来てるわねと冗談っぽく言おうかと思ったけど、それは場違いなので止めた。
しかし、あの人喰い虎と呼ばれる拳法家と互角に渡り合える人間は限られている。数年前、あいつと戦ったときは痛み分けたが、あのまま力で押されてたら確実に負けていた。
私と彼では拳法家としての純度が違う。どちらかと言えば私は剣法家だ。ただの全力で殴り合えば勝つなんてことはない。
そう思えてしまうほど彼は強い。
その拳は鉄骨をバターのように切り裂き、その蹴りは大地を叩き割る。そんな情報ばかりメールで送られてくる。もっと弱点や苦手な魔法を教えろよ。
彼は誰かに付き従ったりする性格とは思えない。あいつは強い奴と死ぬまで戦うためだけにテロリストになるタイプだ。
まあ、私はわりと平和主義者だ。
あまり面倒さえ起こさなければ出来るだけ優しく対処するつもりだ。あと元輔さんを戦場に引っ張り出そうとするのはやめてもらおうか。
▽月&日
開口一番、彼は人目も気にせず大きな声で「ようやく出会えたな、我が最愛の好敵手よっ!」と叫びながら突進してきた。
あの頃と戦闘スタイルは変わっていないけれど、新しく拳法を学んだようにも見える。もっと強引に防御を抉じ開け、強烈な一撃を見舞うスタイルを止めたのか、今は小さく急所のみを狙っている。
こういう戦い方をする奴と戦ったことは一度もないが、一呼吸の間に十数発は拳は打っている。まともに防げるのは五発か六発だけ、それ以外は後退して避けるしかない。
まったく、嫌な戦い方を覚えやがって…。
こうなるんだったら彼とは早めに決着を付けておくべきだった。そうすれば加速魔法を使わず、単純な身体能力だけで音速に達する拳をまともに受ける必要はなかった。
本来の防御魔法と違って分厚い装甲を纏う鋼気功を突き破る技はあるけれど、呂剛虎を足止めしないと使えない。
それだけ彼に技を仕掛けるのは難しい。
▽月₩日
私は身体中に包帯を巻いたまま娘にお弁当を作り、ちょこっと出掛けるついでに密かに家を監視してくるテロリストを捕まえる。
ほんの少し呂剛虎と戦っただけで、四葉を除いた他の十師族に勧誘される。まったく面倒なことばかり起こして、私はどこにでもいる専業主婦だぞ。
そんな如何にも辛くて面倒臭そうな、とっても危ないことは専業主婦には無理だ。ちょっと強いぐらいで悪い奴らと戦うなんて出来ない。
むしろ面倒なので誰かにパスしたい。
しかし、そう簡単にやめることは出来ない。
あわよくば誰かに手柄を渡して、ひっそりとバレないように仕事したい。もっと欲を言えば娘と添い寝して、ずっと子守唄を歌い続けたい。
まあ、私は娘の子守唄も聞きたいがな。