とあるオタク女の受難(魔法科高校の劣等生編)。 作:SUN'S
どこか落ち着きのない信乃を心配している。
私を含めた第一高校の選手が話しかけると「うちの両親が絶対に来る。そう言ったので変なものが仕掛けられてないか、ちょっと探していたんですが、母は骨格や肉付きを自在に変えるので生徒に紛れてる可能性も…」と申し訳なさそうに教えてくれた。
それは本当に人間なのだろうか。
そう思ったのは私だけではないはずだ。それに身体的特徴を変えることが出来ると、本当に可能だと言っているのですか。
普段は冷静な信乃が危惧するほど卓越した魔法なのか、それとも本当に技術のみで骨格を変動させるのか。なにより穏和そうな信乃の母親がバスの中に潜んでいるとは思えない。
ちらりと視線をお兄様に向けると一校の制服を着た小柄な小柄な少女と話している。お兄様へ激励の言葉を贈っているのは唇の動きで理解できる。
しかし、その女の子は誰ですか!?
私というものがありながら節操なしに女の子を誘惑するなんていけません。うーっ、うーっ、私もバスを出てお兄様のお隣に立ちたいた。
「ねぇ、深雪さんどうしたのかな?」
「たぶん、あれのせい」
「ああ、なるほど、達也さんか」
「二人とも今のは雑念を払っていただけよ」
そう、そうよ。
たとえ見知らぬ女の子と話していたところを目撃してしまったけれど、お兄様は必ず私のところへ帰ってきてくれるはずよ。
でも、もしも、お兄様がその子に興味を持っているのならば、私は自分を抑えられる自信がありません。だから、その子は誰なのか、今すぐ教えてもらえると嬉しいです。
「はぁろぉ~うっ、あなたが深雪かしら?」
その問い掛けに答えるため顔をあげると、お兄様に話し掛けていた女の子がいた。しかし、その顔は、あまりにも私に似ていた。どうして、みんな部外者が乗っているのに騒がない。
「あなたは誰、なのですか?」
「貴女達、兄妹の近くて遠い親類よ。みんなが眠ってるのは気にしないで良いわ、貴女との話を邪魔されたくなかっただけだもの」
「たった、それだけのためにエンジニアの乗車するバスまで覆っているというの?」
そう彼女に聞けば「えぇ、そうよ。それと、おば様の娘なのだから分かると思うけど。私は候補ではなく直系であり、次期を名乗れる立場にいる」と話す彼女は楽しそうに笑っている。
そして、どこか不満そうに「それだけ伝えておきたかっただけよ」と言いたいことだけ言って、悪戯を終えた子供のようにバスを降り、お兄様となにかを話して日陰の中に消えた。
光の屈折現象を利用して姿を隠し、最初から存在しなかったように記憶にすら残らない。それは、まるで鏡に映る花の如く存在しているのに、水に浮かぶ月のように存在しない。
今のは紛れもない
けれど、あれはお母様の御友人が作った魔法だと話してくれた。そして、あの魔法を使えるのは、この世でお母様を含めた三人だけと───。
まさか、おば様がご教授されたの?
お母様は「私の初めて出来た友人がプレゼントしてくれた魔法」だと嬉しそうにネックレス型CADを触りながら話してくれた。
だからこそ私は当たり前のように、おば様もお母様と同じく「あの魔法」を肌身離さず大切にしているのだと思っていた。