東方幻終夢 〜 demise story   作:あさひ

2 / 3
2話

家に帰ってから、私は暫く霊夢のことを考えていた。

 

レミリアのあの言葉...血だらけの、霊夢。

 

いつも余裕な表情で異変を解決してきた霊夢が、血だらけで戦っている...、そう考えただけで、私は異様な恐ろしさを感じた。

 

そして、今私にできることを考えてみた。

 

でも、紫を呼ぶことはできないし、霊夢がどこにいるのかもわからない。誰と戦っているのかも、何をされているのかも、わからない。

 

私にできることは...祈ること、それだけなのだろうか。

 

「祈るなんて......阿呆らしいな」

 

そう、呟いてみた。

 

それはきっと、霊夢のことを信じたくないために出た、強がりの台詞なんだと自分でもわかっていた。

 

 

......

 

 

その日の夜。

 

パチュリーの所から奪ってきた分厚い本達を読みあさっていた。

すると、結界について書かれたページがあり、何か霊夢の事と関係があるかもしれないと思って、真剣に読んでいた。

 

そのページの一つに、「結界の探し方」という項目を見つけた。

 

『結界は、大事なものを無くした時に見つかりやすい』

 

大事なもの。私はすぐにその答えが分かった。

 

「......よし」

 

今の時間からでも遅くはない。だって、自分が今の時間を遅いと思っていないから。

 

 

......

 

 

夏の夜は、じめじめとしていて蒸し暑かった。でも、箒で空を飛んでいると暑さも寒さもあまり感じない。その代わりに風を感じるのだ。

 

当てもないまま、私は湖にやってきた。

 

水面にうつる月は、何だか私のぽっかりとあいた穴を埋めてくれそうな気がした。でも、霊夢がいないとやっぱりこの穴は埋まらないと思う。

 

それだけ私にとって霊夢は大きな存在なのだ。

何気ないあの会話が、あの戦いが、どれほど幸福なものだったのか、今になってようやく気がついた。

 

......

 

 

紫の事をよく知る者なら、紫を呼び出してくれるかもしれない。

 

空を飛びながらいきなりその考えを思いついた私は、急いで箒を上昇させた。

 

*

 

たどりついたのは、冥界だった。

ここには紫とは長い付き合いと言っていた亡霊、西行寺幽々子が住んでいる。

 

こんな夜遅くに人の家に上がるのもどうかとは思ったが、今はそれどころじゃない。

一刻も早く霊夢を助け出したいから。

 

長い階段も飛んでいけば疲れもしない。私はすいすいと飛んでいき、冥界のお屋敷「白玉楼」に着いた。

 

立派な門をくぐり、中に入る。

すると、背後から声がした。

 

「夜遅くに何の用ですか?」

 

振り向くと、白玉楼の庭師、魂魄妖夢がそこに立っていた。

 

「まさか何かを盗みにきたんですか?でしたら問答無用で切りますよ」

 

背中についた二本の刀に手を伸ばす妖夢。

 

「おいおい!?人を勝手に泥棒扱いするなよ!?」

 

「だったらどういう御用で?」

 

「幽々子だ、幽々子に用があるんだよ」

 

「幽々子様?一体どんな......」

 

私は紅魔館であったこと、霊夢とレミリアが一昨日喋っていたことを妖夢に説明した。

 

*

 

「成る程、それで紫さんをよく知る幽々子様に用があるというわけですね」

 

「まあそういうことだ。って、もう寝てるか」

 

「いや、まだ寝てないかと。案内してあげましょうか?」

 

「おう、よろしく頼むぜ」

 

私は親指を立ててニッと笑ってみせた。

 

 

......

 

 

「幽々子様、夜遅くに申し訳ありません」

 

妖夢がそう言うと、扉の向こうから「大丈夫よ〜」という呑気な返事が聞こえた。

 

「失礼します」「お邪魔するぜー」

 

扉を右に動かすと、部屋には幽々子がいた。

 

「あら、魔法使いさんじゃない。こんな時間にどうしたのかしら?」

 

そう聞かれると同時に、妖夢は耳元でこっそりと「私は行きますね」と言い、部屋を出て行った。

 

「あー、えっとな、紫を探しているんだ」

 

「え、紫?ああ、そういえば大事な人が来たから暫く会えないとか言ってたわね」

 

「大事な人?それって紫が結界に閉じ込めたっていう人か?」

 

「え、紫ったら結界に人を閉じ込めたの?」

 

そうか、この話はレミリアに聞いた話だから幽々子は知らないのか。

 

「そうらしい、それも一昨日レミリアが霊夢から聞いた話だそうだ」

 

「霊夢はどうしてるの?」

 

「ああ、今日...ずっといなかったんだ」

 

「え!?ということは、今日その結界に閉じ込められた人を助けに行ったってことよね」

 

「そうかもな。明日......戻ってくるかなぁ」

 

明日、明後日、それからずっと戻ってこなかったら.........いや、そういう事を考えるのはやめよう。

 

「霊夢のことだしすぐ戻ってくるわよ〜」

 

「そうだといいんだけど......なんか嫌な予感がするんだよな...」

 

「まあ、たとえ戻ってくるまで時間がかかっても、無傷で帰ってきそうだし大丈夫よ」

 

無傷...血だらけの霊夢がいたとレミリアが言っていたが......幽々子に話したら長くなりそうだからやめておこう。

 

「そ、それで...紫には暫く会えないんだよな」

 

「そうね。結界に人を閉じ込めたなら、きっと色々あると思うしねぇ」

 

「そうか。ありがとな、あと夜遅くにごめん」

 

「平気よ〜、そんなことよりあなたも早く帰って寝た方がいいんじゃない?」

 

「そうだな。それじゃあな」

 

 

......

 

 

もし、血だらけになっている理由が紫のせいならば...私は紫を恨むだろうなあ。

でも、紫にも紫の事情があるんだと思うし、よくわからない。

 

そんなことを考えながら、空を飛んでいた。

 

真夏の夜中の幻想郷を飛ぶのは、心地よいのかよくないのか、よくわからない気持ちだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。