翌日。
私は、朝から昨日のことをずっと考え続けていた。どうしたら、霊夢に会えるか。紫は何をしているのか。
それさえ分かれば、私のこのおかしな気持ちはおさまるのに...
「......ぶ?」
「っ!?」
「魔理沙、大丈夫?」
見上げると、そこにはアリスの姿があった。よく部屋をみたら、ここはアリスの家のようだ。
「あんた...私の家の前で倒れてるんだもん、体調悪いの?」
ベッドに寝かせてくれたようだ。
「え、いや、そういうわけじゃないんだが...霊夢をあの後も探してたら少し疲れちゃったみたいだ......うん、大丈夫」
「はあ?じゃあどうして私の家の前にいたのよ...?」
「それは私も知らないぜ?いつの間にかアリスの家の前にいたらしいが...」
「わけわからないわ、お酒でものんだの?」
「いやいや、本当だって!信じてくれよ...」
そう言った途端、ちらりと窓を見たアリスが目を丸くし、尻餅をついた。
「っ!!!」
「おい!?どうしたんだアリス!?」
アリスは、震える腕で窓を指さしていた。
「れ...霊夢......が...血だらけ......」
「霊夢!?」
私はすぐに窓の外を見た。その時、もうそこに霊夢はいなかった。
しかし、地面に血の池があったのに気がつき、私は急いでベッドから飛び降りた。
それがあったのは、アリスの家の裏庭だった。触ってみると生暖かく、舐めてみると鉄の味がした。
霊夢は、生きている。
ただし、もしかしたら死ぬ寸前なのかもしれない。
「ねえ魔理沙...!何してるのよ!」
「......霊夢を、探さないと」
「霊夢なら今そこにいたわよ!」
血の池を指さしてアリスは叫んだ。
「今のはきっと幻覚だ...早く、本当の霊夢を探さないと...!」
「あ、あんた正気!?幻覚なんかじゃなくて、本当にいたって...」
「今ここにはいない」
そう呟くと、私は立ち上がり、走ってアリスの家を去った。
「ありがとなー!!」
「えっ、ま、魔理沙!?」
......
博麗神社に着いた。勿論、そこには霊夢の姿はない。
「霊夢ー!霊夢ー!!いるんだったら返事してくれ!!」
今すぐにでも、霊夢を助けないと......命が、危ない。
必死に探していると、後ろからトントンと背中を叩かれた。すぐに振り返ると、そこには、
「霊夢を探してるの?」
「っ...!?」
結界のスキマから体を乗り出す、八雲紫の姿があった。
「霊夢ならねぇ............そろそろ死ぬわよ」
死ぬ。
霊夢が、死ぬ。
そんな言葉、人生で初めて聞いた言葉だった。
「ふ、ふざけんなよ!!お前、霊夢に何をした!?」
すると、紫はにやにやとした表情から、無表情へと変わり、冷たい声で言った。
「私の大事な人を結界の中から出そうとしてるのよ、だから殺そうとした」
「......じゃあお前は仲間を殺そうとしたんだな」
「まあそういうことね、でも悪い事をしたのにかわりはないのよ?」
「と...とにかく、霊夢を渡せ!」
「嫌よ。やっと結界の中へ霊夢を閉じ込めたんだから」
こうなったら.........力ずくで、霊夢を奪い返す。
「...じゃあ!私がお前を倒すから。そうしたら、霊夢を返せよ!」
「んー...まあいいけど...」
紫はあまり乗り気じゃないが、霊夢のためだ。霊夢のために、戦うんだ。
「霊夢待ってろよおおおおおおっ!!!!」
ポケットから取り出したのは、私の相棒ミニ八卦路。
「あまり戦いたくはないんだけど...ねぇ」
紫は奇妙な手の動きをし、弾幕をばら撒かせた。
私はそれを避けようとしたが......思わぬ失態をしたことに気がつく。
「やばっ、箒忘れた…っ!?」
いつも弾幕は箒に乗りながら避けているため、自分の足で走って避けることはほぼ不可な状態だ。
そんな私を見下しながら、紫は弾幕を打ち続けてくる。
「も......避けれねぇよ...!!」
そんな時だった。
「ダークサイドオブザムーンッ!」「パーフェクトフリーズ!!」「イルスタートダイブ!」「ファ...ファイヤフライフェノメノン!!」
大きな叫び声が4つ聞こえてきたのだ。すかさず声の聞こえた方向を見ると、そこにはルーミア、チルノ、ミスティア、リグルの4人がスペルカードを一斉に発動している姿があった。私は急いで端の方へ移動した。
この4人のスペルカードは紫も想定外だったらしい、目を丸くしてその様子を見ていた。
「魔理沙、感謝しなさい!」
チルノがそう言うと、他の3人もうんうんと頷き、スペルカードのレベルをどんどんと上げていった。普段、単体だと弱い奴らだが、4人合わさると流石に密度も濃くなり避けづらくなる。
そして、あの紫が被弾した。
「やったーっ!!」
紫が打っていた弾幕が消え、4人の打っていた弾幕も消え去った。
......
「お前たち...どうしてこんなことしてくれたんだよ?」
私は4人に聞いた。
「え?だって魔理沙が紫と戦っているところを見たからね。手出したくなっちゃってね」
リグルがえへへ、と笑いながらそう言った。
「それってつまり、遊びたかっただけか...?」
「あー、まあそうだね!」
「遊びで紫を被弾させるって...ちょっと見直したけどちょっと怖いぜ」
......
しばらくしていたら、紫が出てきた。
「4人の弾幕に被弾するなんて......少し油断しすぎたかしら?」
「しすぎだと思うぞ」
私は苦笑した。
「あ、それで早く霊夢を返してくれよ!」
「え?貴方が私を倒したんじゃないでしょう?」
......確かにそうだけど...
「でも!!こっち側の仲間が倒したことにかわりはないんだからアリだ!」
「無しよ。まだ、霊夢を返せない」
......
神社からの帰路。
私は俯きながら、ぼそぼそと呟いていた。
「霊夢を一刻でも早く取り戻したいのに...なんで上手くいかないんだよ......!」
足で地面をガッと強く蹴った。そして、地面には私の涙が染み込んでいった。
「早く...霊夢に.........」
「霊夢に会いたいんだよ......!」