Go for broke!〜当たって砕けろ!〜TS転生とアグネスデジタルとタキオントレーナーとetc.   作:曾我

7 / 8
今回短いです。20時に次話投稿します!
そして可能な限りレースをすっ飛ばして行きまぁす!!


悩み、焦り、解決策

「ここまで良くなるとはね……」

 

 トレーニングを終え、皆とともにトレーナー室に戻ってきたフジキセキが呟く。

 

 タキオンの眼に圧倒されるままトレーナー契約を結んではや数ヶ月。

フジキセキの走りは確実に復調していた。

 

 

「信じられないかい?自分でも」

 

「あぁ。月並みな言葉だけれど、まるで夢でも見ているようだよ」

 

「夢でもなんでもないさ。キミはフジキセキ。生粋のエンターテイナー。予想も出来ない事をやってのけるウマ娘、だろう?」

 

「ふふっ。そうだった、そういえば。思い出したかも」

 

 

(私はフジキセキ。いつだって、人を楽しませてきた。この感覚は何時ぶりだろう。懐かしい)

 

 

「12月中盤でこの調子ならば、来年の春には復帰、出来るだろう。今のところ心配は、無い」

 

 

 向こうのソファではレクレスアタックとアグネスデジタルが『今日輝いてたウマ娘ちゃん』について語り合っている。

 

 

(そして、キミたちも。間に合った……なんとか)

 

 

 デジタルもレクレスも大きく成長した。デジタルは後方から他のウマ娘たちを舐め回すように、一気に差す走りで。レクレスは大逃げからの、最終直線での再加速という走りを繰り広げ、見事メイクデビューを勝利。

 デジタルに至っては阪神ジュベナイルフィリーズを制していた。デジタルにとってもタキオントレーナーにとしても初のGI勝利である。

 

 

(デジタル君は元々あまり心配していなかった。気になっていたのはレクレス君の『あの』再加速)

 

 

 模擬レースを含め、レクレスは毎回決まって最終コーナーで失速し始め、最後の直線で追い抜かれそうになると、泡を吹き上げながら再加速。

 その走りは『狂気の2段ロケット』と呼ばれ、外見のみならず走りっぷりでも注目を集めていた。

 

 

(だがねぇ……)

 

 

 レクレスのラストスパートは、見る者に対して興奮とともに恐怖感のようなものを与えていた。

 なにしろ、力尽きたはずのウマ娘が泡をふかせ、涙を流し、白目を剥きながら再び猛ダッシュを始めるのだ。

 体力はついてきたが、やはりラストスパートまで温存出来ていない。なのにレクレスは走りきってしまう。

 

 

(限界を越えている)

 

 

 元々レクレスのラストスパートは、初めて顔を合わせた時に行ったデジタルとの模擬レースで、大逃げするよう指示した事で生まれた偶然の産物であった。

 

 そしてレクレス曰く『最後の直線で諦めかけると、いつの間にか勝手にああいう風になっている』と言う。嘘をついているようには見えなかった。

 

 ならばラストスパートまで体力を温存する走りでペース配分をと思ったが、レクレスはレースになると決まって最初から全力疾走。

 本番になると緊張するのかと思い、耳あてを付けさせたが効果は無かった。

 

 

(どうしたら良いんだ……)

 

 

 次走はホープフルステークスを予定しているが、このまま限界を越えた走りをレクレスが続ければいつか故障してしまうのではないか。もしそんな事になれば、1人のウマ娘の未来を台無しにしてしまう。

 

 

 

「どうしたの、タキオン。そんな顔して」

 

 そんな事を考えていたタキオンに、スッと視界に現れたフジキセキが声をかける。

 

「……フジキセキ」

 

「レクレスの事かい?」

 

 

 ソファの2人に聞こえないように小さく囁く栗東寮の寮長。ウマ娘の観察眼は、デジタルを凌ぐ面がある。

 

 

「気付いていたのかい」

 

「まぁ、ね。あの走り方は、私も見ていて痛々しいものがある……」

 

 

 そういうとフジキセキはスポーツドリンクを飲ませ合っている2人に向かって、パンパンッと手を叩きながら解散を命じる。

 

 

「あまり1人で背負い込まないで。私とかで良ければ、いつでも相談に乗るよ。まぁ私の場合、逃げはあまり得意ではないけれどもね……それじゃ、また明日」

 

 

 逃げ。

 

 何かを思い付いた様子のタキオンは、PCで学園所属の競走ウマ娘のデータを漁り始める。

 そして、1人のウマ娘にたどり着いた。

 

 

(あれほど『何とかしてみせる』と言ってみせたのに。私は口だけなのか。1人では何も出来ないのか。私は、やはりトレーナー失格なのか。いや、だが彼女ならばなんとか出来るかもしれない。そして彼女自身の為にも)

 

 

 タキオンの思考は、夜になってたづなさんに追い出され、家に帰ってからも続いた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

(タキオン、自分を追い込んでないと良いけど……)

 

 

 その日の夜。フジキセキはそんな事を思いながら見回りを行っていた。

 

 

「デジタル氏……」

「レクレス殿……」

 

(……またかぁ)

 

 

 やれやれと思いながら慣れた身のこなしでドアまで身体を近づけ、耳を当ててみる。

 

 

「この走り…この笑顔…この勝負服…デジタル氏はこんなにも尊いんですッ……」

 

「何を仰いますかッ!……私の走りなど、他のウマ娘ちゃんと比べるのも失礼なほどお粗末ッ!!」

 

「デ、デジタル氏ッ…あんまり声が大きいと、また……」

 

「尊いのは私以外の全ウマ娘ちゃんたちッ!そしてレクレス殿ッッ!!貴女の美しさと来たらッッッ!!!」

 

「ちょ……」

 

「今日という今日はッ!!さぁレクレス殿、手を貸してッ!今から貴女の美しさを、身をもって解らせて差し上げますッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 音量オーバー。直ちに掃討作戦が実行された。




そろそろご都合主義やチートがトップギアに入りそうな季節です!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。