ドニwith亡霊が征く! FE覚醒ロスト0チャレンジ!! 作:しやぶ
「──始まったな」
王都の南にある森で天変地異が発生する、数分前。
クロムが『妙な気配』を感じて飛び起きたのとほぼ同時に、ドニもまた、それを察知していた。
「征くべ、ブケファロス」
*
「変だね……静か過ぎるよ。鳥の声も、虫の声も、全然聞こえないもん」
「あぁ、何かおかしい」
野営をしていたクロム一行の内、飛び起きたクロムと釣られて目が覚めたリズは、周囲を見て回っていた。
そしてリズも、異変に気付き始めたその時──天地が揺らいだ。
「ひゃあっ!?」
「なんだ!?」
周囲に地割れが発生し、マグマが噴き出す。空からは隕石が降り注ぎ、森が破壊されていく。
クロムは比較的見晴らしが良く、地割れなどの被害が少ない場所を瞬時に見極め、リズの手を引いて避難した。
──しかし、本当の災害はここからだ。
「お兄ちゃんッ、何アレ!?」
空に目玉のような、門のような──異形の魔法陣が現れ、そこから人型の『ナニカ』が、頭から押し出されるように出現した。それも複数。
ボトリと音を立てて落ちてきた『ナニカ』は、
「リズ、下がっていろ!!」
すかさずクロムはファルシオンを抜き、すれ違いざまに『ナニカ』の胴体を斬り裂くが……
(悲鳴がない?)
違和感を覚えたクロムが振り返ると、首だけを180°回転させている『ナニカ』と目が合った。
「クッ……!」
すぐさまクロムは『ナニカ』を押し倒し、ファルシオンを突き刺した。すると『ナニカ』はようやく動きを止め、
(死体が残らないだと……?)
だが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「きゃあああああ!!!」
「──っ、リズ!!」
すぐ側に居たもう1体に、リズが襲われている。クロムが気付いた時には、もう間に合わない距離だった。『ナニカ』が斧を振りかぶる。
──だが、その時リズが見ていたものは斧でもクロムでもない。
空に再び現れた門のような魔法陣。その奥からこちらに向かってくる──
少年は凄まじい俊足で『ナニカ』に駆け寄り、斧を持った腕を斬り飛ばす。そして返す刃で首を切断し、『ナニカ』を瞬殺した。
「……怪我は?」
「え、あ、大丈夫。ありがとう……」
「よかった」
そう言うと少年は納刀し、走り去った。
「あ、おい! ……名前も聞けなかったな」
「……うん、かっこよかった」
「何だって?」
「な、なんでもない! それよりも、早く2人と合流しないと!」
「……そうだな」
(……しかし、どういうことだ?)
先程の少年──仮面で目元を隠した彼が持っていた剣は、ファルシオンに酷似していた。というより、瓜二つだった。
(だが、ファルシオンはこの世に1本のみ。確かに俺が持っている)
彼以外が持った時、剣が効力を発揮しないことも、それが本物であることを証明している。
(……考えても仕方ないか)
そしてクロムとリズが、ルフレとフレデリクの眠っていた場所に向かって走ろうとした時……
「2人とも、ご無事ですか!?」
「あ、フレデリク! ルフレくんも!」
フレデリクとルフレの方から2人の元にやって来たことで、早期に合流に成功した。
「全員無事のようですね」
「うん、良かった!」
「よし。じゃあ僕とクロム、フレデリクの3人で奴らを掃討しよう。作戦を伝え──」
──しかし、その作戦は無意味だ。
「AAAALaLaLaLaLaie!!!」
全ての戦略を粉砕する、圧倒的『最強』が──到着した。
ペガサスから飛び降りた青年は、『疾風迅雷』の如き勢いで『ナニカ』の群れを蹴散らしていく。
「……え? え?? ナニアレ、どこから突っ込めばいいの?」
何故男性がペガサスに乗れていたのか、何故あの高さから飛び降りて無事なのか、そもそも何故飛び降りたのか……
「……とりあえず、質問1。フレデリク、イーリスはいつの間に男性をペガサスナイトにする方法なんて編み出したの?」
「いや、彼が特殊なだけですよ。なんでも『うんと昔、暗夜と白夜という国には男性の天馬騎士も居たから自分もできると思った』とのことで、実際試したら乗れたと……」
「……うん、ギリギリ理解できる。
じゃあ、質問2。彼、なんで無傷なの?」
「鍛えているからでは?」
「明らかに人間の頑丈さを上回ってるよね?」
「12の頃には弓矢が刺さらない身体になっていたそうです」
「ナニソレ怖い」
「ルフレくん、慣れるしかないよ。ドニのやることに一々驚いてたら心臓がもたないから」
「そうだね……」
そうしてルフレは、『ドニ』という青年について考えるのを辞めた。
なお、その頃には敵が全滅していた。そしてルフレの目が死んだ。せっかく戦略練ったのに。
「──いた! クロム団長! 敵は!?」
「あぁ、ソワレか。見ての通り、ドニが全部片付けた後だ」
「くっ、また負けた! 起きたのはボクの方が早かったのに!」
「……見たところ、アレは『そもそも競わずに済むように立ち回る』ことが最も優雅な部類の相手だと思うのだが、いかがかね?」
「うん、それは僕も同意なんだけど……クロム、こちらの男性は?」
「知らない奴だ。ソワレ、そいつは?」
「いや、ボクも初対面だ」
『え?』
あまりにも自然に現れるものだから誰も警戒していなかったが、まさかの不審者。全員が咄嗟に身構える。
「ちょっ、ちょっと待ってくれたまえ。私は怪しい者ではない」
「ならまずは名乗ったらどうだ?」
「その通りだね。私はさすらいの高貴な弓使い、その名もヴィオール」
「さすらいのって……『ヴィオール』はヴァルム大陸の名君の名前でねえか。こんなところで何やってるだ?」
いつの間にかペガサスに乗って戻って来ていたドニが、彼の出自を口にした。視線がそちらに集中する。
「ドニ、知ってるのか?」
「んだ。かなりの切れ物かつ、弓の名手って話だべ。家紋とか持ってないんだか?」
そう言われるとヴィオールは、優雅な動作でメダルを取り出した。
「本物だべ」
「学にも明るいとは、底が知れない男だね。君は」
「たまたま覚えてただけだどもな。
──で? こんなとこに何しに来たんだべ」
するとヴィオールは、何故か苦い顔をした。
「……神竜に誓って言うが、この国に害意はない。だが、ここで話すような内容ではない」
「だとしても、放ってはおけねぇなぁ。話せるようになるまではついてきてもらうけど、構わないべな?」
「こちらとしても、その方が助かる」
「クロム団長、ヴィオールさんの処遇はこれで大丈夫だべか?」
「構わん。じゃあ、王都に戻って被害状況を──」
「あー、待ってほしいべ。その前に……もう1人知らねぇ子がいるんだども、どちら様だべ?」
ソワレもそれに『あぁ、ボクも気になってた』と同調する。
「あぁ、コイツはルフレ。
「
「ふむ……失礼だけど、若すぎないかい?」
「腕は確かだ。俺が保証する」
「ふぅん……団長が認めているなら、ボクも認めよう。これからよろしく頼むよ、ルフレ」
「よろしくお願いします、ソワレさん!」
そうしてにこやかに握手している2人を、ドニは複雑な表情で見ていた。
「…………」
「どうした? ドニ」
「いや……なんでもないべ。おらもよろしくなぁ、ルフレ」
「うん、よろしくお願いしますねドニさん!」
──そして一行が、王都へと帰還している途中……リズがドニに話しかけた。
「ねぇドニ。戦ってる時、
「──っ!? リズさん、そいつはもしかして……目元を仮面で隠してる奴だべか?」
「うん! わたし、その人に助けられたの。名前とか、聞いてたりする?」
「……いや、聞いてないべ」
「そっかー。残念」
そう言うとリズは、今度はルフレに話しかけていた。
(……どういう、ことだ?
ルキナが来ているということは、ギムレーも来ているということ。ギムレーが来ているということは、ルフレが記憶喪失になっているということの筈だ……でも)
「えっ、ルフレくんペレジア出身なの!? ごめん、ペレジアの人は皆悪鬼みたいな偏見持ってた……」
「まぁ、仕方ないよ。ペレジアがイーリスにやってることを考えるとさ」
(おもっクソ出身地覚えとるやん……記憶喪失なってないやん……コレどういう状態なの? まさか、ルキナだけ来たのか?
……フェリアで聞くしかないな)
──運命は既に、誰にも分からない方向へ進み始めている。
ちなみにドニキの娘は母にペガサスナイトの適性がなくてもペガサスナイトの適性を持っているので、彼にはペガサスナイトの適性があることになります。