ドニwith亡霊が征く! FE覚醒ロスト0チャレンジ!! 作:しやぶ
「し、師匠……?」
初めて目にするドニの『激情』を前に、ルキナは震えが止まらなくなるのを自覚した。
無理もない。世界を終わらせることができる、本物の『神』たるギムレーを前にした時でさえ──彼は
「……あぁ、ごめんなぁルキナ。怖がらせちまったか」
「い、いえ……」
ドニの雰囲気が元に戻り、彼女は深く息を吐いた。そしてカイトもどさくさに紛れて溜め息を吐く。
ドニの死。コレはカイトにとって回避すべき最重要事項だが──同時に
故に、一旦カイトは自責の念を鎮めて……『やるべきこと』を考える。
(『こっちのギムレー』の復活は、簡単に阻止できる。だから問題は、『あっちのギムレー』だ)
そちらも実の所、時間遡行なんてしなくとも『ギムレーの封印』だけなら可能なのである。カイトの奮闘により、各国の戦力が正史に比べ充実しているからだ。
では、何が問題なのかと言うと。
(まさかロビンが、ね……)
ギムレーの器が、ルフレではなくロビンになってしまった。それはカイトにとって、ある意味『ドニの死』以上に最悪の事象だ。
(……確かに覚醒の儀を二重に行えば、ギムレーは殺せる。世界線によっては『神竜に覚醒したチキ』とルキナが
──だからこそ、
(
カイトがルキナに『ギムレーを殺す方法』を教えている。この違和感。
ギムレーになったのがルフレだったなら、カイトは躊躇なく彼を殺すだろう。ルフレは『絆の奇跡』によって、クロムの元に帰ってくることが確定しているのだから。
だが、ロビンにはその保証がない。奇跡は滅多に起こらないから『奇跡』なのだ。
(未来のオレは、何を考えている──?)
*
「──ほぅ? 面白いことになったな『右の我』」
「この気配……
「方角的に、異界の門であるな『左の我』」
「ドニの入れ知恵だな、『正面の我』」
「余裕かましてんなクソが……!」
前後左右から飛んでくる魔法を片腕で捌き続けるカイトは、『ギリリ』と歯噛みした。
ギムレーの背中には無数の傷口。しかしその全てが巨竜にとっては擦り傷未満だ。何せ傷の半数は
(ルナティック+でも本体とリンクした人型形態は一体だけだってのに、何体出るんだよ!?)
既に、両手で数え切れない程度には分身を斬っている。しかしギムレーに
「いや、我も一応『神』である故な。外面を取り繕っているだけだとも。貴様がファルシオンの担い手であれば15回は死んでいる」
「じゃあ今すぐ死んでくれねぇかなぁぁぁ」
「ククク、断る」
「デスヨネ畜生!」
所詮、彼の身体に宿る『神竜の力』は涙の一滴。雨垂れとて石を穿つが、15回ではとても足りない。
「──さて、名残惜しいがここまでだ。我も過去へ飛ぶとしよう」
そしてギムレーは首を傾け、本気のブレスを吐いた。
(……無抵抗、だと?)
あまりの呆気なさにギムレーがポカンとする中、カイトは叫ぶ。
「──山菜のスープを作って、家で待ってるからな!!」
「…………ふん、くだらん」
ギムレーは視線をドニから外し、時間遡行の準備を始める。
──その口元が緩んでいたことに気付いた者は、ただ一人。
「……あー、疲れた。めちゃくちゃ頑張りましたよナーガ様……だから
そして巨竜は、忽然と姿を消した。
──亡霊の計画が、人知れず成就へと歩みを進める。
過去の己にすら明かしていないそれは、けれど誰かに害を与えるためのものではない。
──誰も死なせない。
その願いは今も変わらず、彼の中にあるのだから。