ドニwith亡霊が征く! FE覚醒ロスト0チャレンジ!! 作:しやぶ
──イーリス城、中庭にて。
聖王子クロムは、夜風に当たりながら物思いに耽っていた。
「…………」
「……クロムさん。隣、いいべか?」
「ドニか。あぁ、構わない」
了承を確認したドニはクロムの隣に向かい、土で汚れるのも気にせず腰を下ろした。
「丁度、お前のことを考えていた。どうしたら、お前のようになれるのかと……」
「おらみたいに? クロムさんが?」
「『心底意外』って顔だな。そんなに驚くことか? お前ほどの男に憧れることが」
「んだなぁ」
「ハハッ、即答か。そう謙遜するな。
──マリアベルから聞いたよ。お前がテミス領に、罠を張っていたこと。そのおかげで、多くの民が逃げる時間を稼げたというじゃないか」
「事前にクロムさんが戦力を充実させてくれてたからこそ、できたことだべ。無人で使える罠もあるけんども、やっぱ現場の判断で使える罠が一番だからなぁ」
テミス領は、ペレジアとの国境最寄りにある。ギャンレルが真っ先に落とそうとするのは、クロムも分かっていた。故に彼は、以前から自警団の人員を一定数常駐させていたのだ。
「ふっ。
「……『鍋兜傭兵団』のことか?」
「あぁ」
鍋兜傭兵団──『不殺』の彼が、捕えた賊の就職先として用意した組織だ。
団員は基本的に、襲った場所とは別の村に住み込みで働く。自衛力が足りていないイーリスの村人は、真面目に働くなら勿論歓迎する。戦わない日は、重労働である農作業を手伝って貰えば良い。団員達からしても、衣食住が保証されるだけで賊をやる理由が無くなるのでwinwinなのである。
「お前は、平和を壊す賊達を……味方に引き込んだ。その結果、賊の被害は小さくなった。平和に近付いたんだ。
俺はそんな手段、考えもしなかった。奴らが姉さんの理想を受け入れる筈がないと思い込んで……憎んで、恨んで……殺すために、自警団を作ってしまった」
「何アホなこと言ってるだクロムさん。自警団がただの殺人集団なら、おらは入団しねぇで叩き潰してるべ」
「……そうだな。今の発言は、自警団に入ってくれた全員に対する侮辱だった。忘れてくれ」
「全く……気が滅入ってるみたいだなぁ。どうしたんだべ?」
「それは……」
クロムは苦虫を噛み潰したような顔になると、気分を落ち着かせるために深呼吸を数回行った。
……今回の一件は彼にとって、思うところが多過ぎたのだ。
まずマリアベルを助けると息巻いておいて、実際に彼女を助けたのがリヒトだったこと。事前に彼の参戦を却下していただけに、これは辛い。
そしてその後の戦闘を、ロビンがほぼ一人で片付けたこと。
その上で、クロムがやったことと言えば……敵兵を斬り捨てて戦争の引き金を引くという大惨事。ほぼ不可抗力であったものの、責任感の強いクロムが気にしない訳もなく。
「なぁドニ……王配になる気はないか?」
「にゅおお!? なっ、何を言ってるのか理解してるべかクロムさん!?」
「あぁ。俺は……俺なんかより、お前こそが王族として相応しいと──おぼふっ!?」
真面目な顔でトチ狂ったクロムに対し、ドニは容赦なくチョップの寸止めを繰り出した。拳圧の空気弾がクロムの脳天を襲う。
「頭は冷えたべかクロムさん……?」
「…………おう」
とてもではないが『痛みでむしろ熱くなってる』とは言えない空気だった。
「なぁクロムさん……アンタはファルシオンになりたいと思うか?」
「な、なんだって?」
「ファルシオンに、なりたいか?」
それは何千年も前から折れず、曲がらず、変わらずに存在する。まさに不滅の象徴。
だが、だからと言って、誰が剣そのものになりたいと思うのか。
「い、いや」
「そうだべ? クロムさんが考えるべきはファルシオンになる方法じゃあなく、ファルシオンの振るい方だ」
ここでやっと、クロムはドニが何を言おうとしているのか分かった。
「……お前のような人間になるのではなく、お前の能力を引き出せる人間になれ、と?」
「んだ。入団して最初の時に言った筈だなぁ」
「……あぁ、そうだったな」
──〝おらの力はきっと、クロムさんの道を切り開くためにある〟
「……どうしてお前は、そんなに俺を信頼してくれるんだ?」
「んー、ちゃんとした理由はあるんだども……今は秘密だべ。それよりも──」
ドニは
すると『ドゴッ』という鈍い音がして、赤い液体が飛び散った。
「……え?」
「暗殺者だべ。クロムさんを狙ってた」
「いや、そうじゃなくて!
今まで頑なに、誰の命も奪わなかったのに。どうして急に彼が、そんな行動を取ったのか……それは
「アンタのお父様への
「何……?」
「前回の戦争は確かに、非人道的で唾棄すべき行いだったけんども……彼の汚名を
だが、前回の戦争に意味があったのなら。クロムが父を許すことは一生ないだろうが、それでも……家族として、知らなければならないだろう。
「今の暗殺者はなぁ、ギムレー教団所属なんだべ。
教団の目的はギムレーの復活。世界を壊すことしか考えていない、非生産的な奴らだ。それを根絶やしにしようと考えたアンタの父ちゃんは……そこだけは、間違っちゃあいねがったと思うべ。
だからこそ、不殺の信念を曲げることで……彼への手向けとしたんだ」
「……お前でも、理解し合うことを諦めることがあるんだな」
「失望したべか?」
「……いや。だが、もう一人も殺すな。
──殺すかどうかは、捕らえた後に俺が決める」
「なら、任せるべ。そういう責任感の強さも、考えることを止めない向上心も、クロムさんの魅力だからなぁ」
「……ありがとう」
──城に爆音が響き、二人は現場へ急行した。