ロードランに剣聖あり   作:ポン酢おじや

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剣聖、召喚失敗する

古い時代

世界はまだ分かたれず、霧に覆われ 灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜ばかりがあった。

 

だが、いつかはじめての火がおこり 火と共に差異がもたらされた。

 

熱と冷たさと、生と死と、そして光と闇と。

そして、闇より生まれた幾匹かが火に惹かれ、王のソウルを見出した。

 

最初の死者、ニト

イザリスの魔女と混沌の娘たち

太陽の光の王グウィンと、彼の騎士たち

そして、誰も知らぬ小人

 

それらは王の力を得、古竜に戦いを挑んだ

 

グウィンの雷が、岩のウロコを貫き

魔女の炎は嵐となり

死の瘴気がニトによって解き放たれた

そして、ウロコのない白竜、シースの裏切りにより、遂に古竜は敗れた

 

火の時代のはじまりだ

 

だが、やがて火は消え、暗闇だけが残る

今や、火はまさに消えかけ

 

人の世には届かず、夜ばかりが続き

人の中に、呪われたダークリングが現れはじめていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戦国末期

場所は日の本の奥地にある葦名の国

そこではある二人の男が燃え上がる城を背景に、野原で一騎討ちをしていた。

 

「がはっ...!」

 

大弓を抱え黒い両刃の刀を持つ男は目の前にいる左手が義手の忍び『狼』に負けていた。

彼は燃える城から火の粉が舞う暗闇の空を見て絶望を抱く。

 

「俺は、結局、何もできなかった.....」

 

しかし右手に持っている黒い両刃の刀を見て、強く握り直す。

 

「だが...竜胤が、この国を生かす」

 

刀を自らの首の横に構えると、男は安心したような表情で呟いた。

 

「これで葦名の夜は、明ける」

 

男は刀で自らの首を斬り裂き、そこで意識が途絶えた。

狼は自害した目の前の男の首から、何やら怪しげな赤い血のようなものが溢れ出ているのに気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし結局いくら時が経っても何も出ず、自害した男はそのまま倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは北の不死院

この国では呪われた不死者の証『ダークリング』を持つものは全員ここに送られ、世界の終わりまで閉じ込められる。

 

そしてその建物の奥にある牢屋には、この辺りの国の生まれではない男がいた。

その男はいきなり牢屋の中に現れ、しかも不死人であった為そのまま収監された。

 

不死人を閉じ込める事が目的の建物なので、いきなりやって来た男でも不死ならば出す気は無し。

 

 

そんな状況に陥った男は、今日も牢屋で座禅し脱出の方法を考えている。

 

「...この場所に来て早数日か...」

 

この男の名は葦名一心。

日本の奥地にある葦名という場所に生まれ、そこを支配している葦名家の前当主であり、剣聖と恐れられた刀の達人である。

 

一心は最早何度見たかわからないこの牢屋の檻を見る。

鍵は解錠出来ず、檻は堅いため素手では壊せない。

 

彼は牢屋を見るのをやめて、自分の腕を見る。

 

「...しかしこの体には驚いてばかりよ...腹も減らず、眠くも疲れもない...不死とは何と便利なものか」

 

一心は葦名の国にて孫の弦一郎の命と引き換えに、全盛の体と不老不死を望んではいなかったが手に入れた。

かつて病魔に犯されていた老人の体の面影は全くない。

 

 

しかし全盛の体に戻れたとは言え錠前はどうにもならない。

彼はため息を吐き、どうしたものかと手で顎を触る。

 

 

 

するといきなり天井から他の牢屋に閉じ込められた囚人と同じような痩せた男が落ちてきた。

 

「む?」

 

一心は落ちてきたその囚人に近づくと、腰元に鍵を持っていることに気づく。

 

一心は鍵を奪うと、天井を見た。

 

そこには日本では見慣れぬ鎧を着た男が一心を見ており、しばらくすると何処かへと行ってしまった。

 

「あやつは...いや、今はまたとない好機...ありがたく貰おう」

 

一心は日本では見たことのない形状の鍵に少し戸惑ったが、何とか檻を解錠し出ることに成功する。

 

「さて、ようやくか!早く葦名に戻らねば...!」

 

一心は牢屋からずっと見えていた通路を歩いていく。

近くにはずっと座っていたり、何もせず立っている痩せた囚人がいたが何もしてこない。

 

というより脱獄した一心を見ても気にしないあたり、精神が正常なのかどうかも怪しい。

 

 

通路を越えた先には梯子があり、一心は登っていく。

そして広間に出ると、真ん中には真っ白な人の骨と灰で出来た小さな砂山に剣が突き刺さっている奇妙なオブジェのようなものがあった。

 

「何じゃあれは...」

 

一心はそのオブジェに近づくと、それが妙に気になってしまう。

 

そして剣に触れようとした瞬間、砂山から炎が吹き出し小さな篝火のような物になった。

 

「ほう...いきなり火がでよった。それにしても...見ていると妙に落ち着くな...」

 

一心はしばらくその篝火の前に立っていたが、ハッとして直ぐに辺りを見渡す。

 

「いや、こんな事をしている場合ではない...ここから出なければ」

 

一心はまず篝火の近くにある巨大な扉に注目する。

 

彼は重い大扉を力を込めて開ける。

その先には壺が大量にある広間があった。

 

 

 

 

一心はゆっくりと前に歩くと、目の前に巨大なこん棒を持った怪物が現れる。

人の中では高身長の一心すら小さく感じる程の身体に、巨体に似合わぬ細く小さな羽、そして鬼すら顔負けする何本もの角が生えていた。

 

そして何より驚くべきなのは、怪物の皮膚が石で出来ている事だ。

 

一心もその巨大さに驚き、顔を上げて怪物の顔を見る。

 

「ほぉ......何というでかさか!」

 

怪物は唸り声を上げながらこん棒を一心目掛けて振り下ろす。

 

一心は素早く移動し怪物の攻撃を避けると、素手で思いきり怪物の腹を突く。

 

「むん!」

 

しかし石の皮膚には対して効果はなく、逆に一心の拳からは血が流れていた。

 

「カッカッカッ...なんと摩訶不思議な生き物よ...石の皮膚を持つ怪物か!」

 

 

怪物は空中へ飛び上がると、一心目掛けて全体重で押し潰すため落下する。

 

しかし彼は余裕で避け、怪物と距離を取る。

 

「ふぅむ...このままでは決着がつかぬか...む?」

 

すると広間の奥にある檻がまるで一心を誘うように開き始める。

 

彼はこのままでは倒せないと判断し、その檻を潜り抜けて怪物から逃げ出した。

 

 

一心が潜り抜けると檻はしまり、怪物から彼を遠ざけた。

 

「これで一安心か...さて」

 

 

 

 

 

 

一心は奥へと進むと、再び牢屋がいくつもある通路へとたどり着く。

そして近くに死体が転がっており、その死体には武器が突き刺さっていた。

 

一心はその武器を引き抜くと、それはボロボロだが刀だと気づく。

 

「ほぉ、こんな所に刀か...しかし刃はあまり手入れされてはおらぬな」

 

一心は刃を見ていると、遠くから矢が飛んでいることに気づく。

彼はボロ刀で矢を弾き、弓を持つ敵を見る。

 

「...ここの囚人か。しかし儂に矢を放つとは...どうやら余程命知らずと見える」

 

一心は死体の近くにあるボロボロの鞘も拾い、刀を鞘にしまう。

 

囚人は次の矢を準備し、彼の喉元に狙いを定める。

 

 

しかし次の瞬間囚人は一心の居合いの餌食となり、その首は通路の奥へと転がっていった。

 

「遅い。第一の矢が弾かれたのならば、素早く第二の矢を放たねばならんぞ」

 

一心は刀を片手にゆっくりと歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一心は歩いていると、近くにある階段から丸い石が転がってくる。

 

しかし彼はボロ刀で粘土のように石を一刀両断し、別れた二つの石が壁に激突した。

 

「む...」

 

一心は石が激突した壁の向こうに気配を感じ、ボロ刀で壁を破壊してから行ってみると、奥に見慣れぬ鎧を着た男が倒れていた。

彼は鎧を見た瞬間直ぐに先程鍵をくれた男だと気づき、近寄って話しかける。

 

「お主、先程の...如何した」

「.....おお、君は亡者じゃないんだな...」

「亡者...?」

「...よかった...私はもうダメだ...」

 

一心は鎧を着た男の言葉を聞いて、彼の体を見る。

すると鎧に穴が空いて腹が貫かれており、そこから血が大量に溢れ出て地面の水溜まりに流れていた。

 

この出血の量では最早救えないと一心も気づいた。

 

「...弱気な事を言うでない」

「いや...私はもうすぐ死ぬ。死ねばもう...正気を保ってはいられない...だから君に願いがある」

「.....」

 一心は目の前の男から死という単語を聞いて、彼の話を聞くことにした。

 

「同じ不死の身だ...観念して聞いてくれよ」

「不死...?お主も..いや、よかろう。話してみよ」

「よかった...恥ずかしい話だが、願いは私の使命だ」

「使命...とな」

「それを見ず知らずの君に託したい...」

「.....」

「私の家に伝わっているんだ...『不死とは、使命の印である。その印あらわれし者は、不死院から古い王達の地にいたり、目覚ましの鐘を鳴らし、不死の使命を知れ』」

「.....」

「よく、聞いてくれた...これで希望を持って死ねるよ...」

 

一心は彼の言葉を遺言として聞いていた。

すると鎧を着た彼は懐から何かを取り出す。

 

「ああ...それと、これも君に託しておこう」

 

鎧を着た男が取り出したのは、黄色く光る液体が入った瓶であった。

一心はそれを受けとると、その中身をジッと見つめる。

 

「これは...何とも奇妙な物だ」

「それは不死者の宝...エスト瓶だ」

「えすと...びんとな」

「それと、これも...」

 

鎧を着た男はもうひとつ一心にある物を手渡した。

それは牢屋とは別の鍵であった。

 

「鍵か」

「ここのデーモンが守っている外へと繋がる扉の鍵だ...」

「...でーもん?あの怪物か...言われてみればあやつの後ろに扉があったか...」

 

一心は聞き慣れない単語を聞いたが、とりあえずエスト瓶と鍵を懐にしまう。

 

「じゃあ、もうさよならだ」

「.....」

「死んだ後、君を襲いたくない...いってくれ」

 

一心は立ち上がると、彼に背を向けて歩き始める。

そして鎧の男は最後に小声で一心に言葉を伝える。

「ありがとうな」

 

一心は一瞬彼の言葉で止まるも、破壊した壁から再び外に出る。

そして鎧の男の小さな呻き声がした。

 

一心は彼がどうなったか簡単に予測できていた。

 

 

「...牢屋での恩、忘れぬぞ」

 

 

一心は階段を下り、再びあの怪物の元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一心は先程の大扉を通ると、再び上からデーモンと呼ばれていたあの怪物が現れる。

 

「...さて、前の儂だとは思うな...刀を得た儂は鬼に金棒じゃ」

 

一心は刀を構えると、不死院のデーモンはこん棒を勢いよく振り下ろした。

しかしその瞬間大きな金属音が響き渡り、デーモンはこん棒から伝わるその衝撃に驚く。

なんとデーモンの攻撃を一心は弾いたのだ。

 

「ふむ...何とか耐えたれたか。さて、面白き技を見せよう」

 

すると一心はボロ刀を鞘にしまうと、力を溜め始める。

デーモンは高く飛び上がり、一心を自らのその巨体で踏み潰そうとする。

 

「でやぁぁぁぁっ!!」

 

一心は大声と共に刀を抜いて神速の速さで斬り下ろす。

すると刃から目に留まらぬ速さで真空波を生み出し、デーモンの石の皮膚に当たる。

 

「.....」

 

デーモンは何が起こったか理解もできなかった。 何故ならばいきなり視界が二つに割れたのだ。

 

そして自分の体が地面に落ちてようやく状況が理解できた。

 

 

自分の体は真っ二つに斬られたのだと。

 

 

 

「カカカッ...石の皮膚とて儂に斬れぬものはないわ」

 

 

 

一心はボロ刀を鞘にしまい、デーモンが守っていた大扉の錠前を貰った鍵を使い外す。

 

そして扉を開けると、ようやく外に出れた事に彼は安堵した。

 

「...ようやく出れたか...」

 

一心は進んでいくと、途中で道が途切れていることに気づく。

 

「!これでは...さて」

 

一心はどうするべきかと辺りを見渡し考えていると、遠くの空から黒い何かが飛んでくるのを発見する。

 

「...」

 

一心は刀を抜こうとするも、その何かは急降下して見えなくなってしまった。

 

一心は刀をしまうと、その何かはいきなり彼の前に現れた。

 

その何かの正体は巨大なカラスであり、一心に近づくと彼を軽々と持ち上げそのまま空へと飛び始める。

 

「ぐぉぉぉっ!?何をするか!!離せぇい!」

 

カラスが一心の言葉を理解できる筈もなく、持ったまま何処かへ飛んでいった。

 

 




よろしくお願いします。

一心にレベルをつけるなら、一週目がヌルゲーになるくらいのレベルだと考えてます。
ステ振りは技術特化です。
体力とかは無限ではないですけどかなり多いです。隻狼だと三ゲージあるからね。

ボロ刀も本編では出ません。一心の力を押さえるためのオリジナル武器です。折れた直剣よりはまぁマシ程度の武器と考えて頂ければと。

アンケート機能を使うのは初めてなので、おかしいところがあったらすみません。質問はDLCのエリアに行くか、行かないかです。

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  • 行かないべき
  • 任せる

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